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入学式、春


 4月7日、入学式。私は、お母さんの病室にいた。


「あら、あなた今日から高校生でしょ?なんでこんなところにいるの?」


「ん~~、、なんだか行く勇気がなくて途中で戻ってきちゃった。」


「あらまぁ、困った子ねぇ。ふふふふっ。」


「お母さんとこうして話してる方が楽しいんだもの!今日はちょっと勇気が出なかっただけ!明日は行く予定だから大丈夫!私、頑張るからね!」


「・・・うん!お母さん応援してるね!」



 と、高校初日から、仮病で学校を休んでしまった。ま、なんとかなるかと次の日の準備をし、早々に眠りについた。


「わ!やっばーい!寝坊した!昨日は仮病で、今日は遅刻なんて私は不良か!」

 と、自分にツッコミを入れて、走って学校へ向かった。


 8時半からのホームルームに一分遅れで到着した。


「(ガラガラ)おっはよーございまーす!セーーーーフ!」


 私は遅刻したにも関わらず、とんでもなく恥ずかしい登場で、クラスの皆と顔を合わせた。なんでこんな登場をしてしまったのか自分でもわからない。けど勇気がない私には、こうやって思い切るしか教室の中へ入る度胸がなかったのだと思う。


「おいお前浜辺か?お前何してた!遅刻だぞー!早く席に着きなさい!」


「はーい、って私の席どこだっけ?」


「がっはっははははっ」


 クラスの全員が笑っていた。私は今すぐこの場所から逃げ出したい。そんな想いでいっぱいで心地良い気候なのに、冷汗でびしょびしょだった。そんな中、ある男が口走った。


「おいみんな笑うなよ!今日から俺たちの仲間だろ?歓迎する!俺はまさる、よろしく!」


「あ、、ありがと。よろしくお願いします。」



 こうして、なんとか高校生活一日目が始まった。


「ねぇ、あなた転校生?」

 隣の子が声をかけてきた。


「え?違うよ!あ~昨日はたまたま体調が悪くて休んじゃっただけ!でももう大丈夫!」


「昨日はって、今日はもう5月8日よ?一カ月も休んでたってこと?」


「・・・ん?え?5月8日?」


「そうよ、ほらカレンダー見て?」


「ちょ、ちょ、ちょっと待って!え?私は昨日休んだだけなのよ?」


 なんなのよこれはーーー。たった一日が一カ月先になってる。


 おかしい。絶対におかしい。


 私は訳も分からず職員室へ駆け込んだ。


「せ、先生!今日って何日ですか?何曜日ですか?学校が始まってから、どのくらい時間が経っていますか?」


 マシンガンのように質問した。


「今日は、5月8日、火曜日だ!君は丸々一カ月何の連絡もなく授業をボイコットした。何があったか知らないが、ちゃんと学校には来るんだぞ!」


「・・はい。ありがとうございました。」



 時間が飛んでる。


 明らかに、時間が一カ月先まで飛んでいた。


 しかも、今日の朝私を助けてくれた、あの男どっかで、、、、、


「あ!優、遠藤 優!あいつだ!も~~何がどうなってるのよ。」


 とりあえず今日は何にも考えず、寝てみよう。そしたら、明日は2カ月後なのかな?

 なんて考えながら、眠りについた。


 次の日、何とか遅刻しないように、8時29分に間に合った。


「よっしゃー!セーフ!!(キーンコーンカーンコーン)」


 連日恥ずかしい登場をしてしまった。これは笑われても仕方がない。そう思ったが、クラスの皆は何ひとつ反応をしてくれなかった。


 私は席つき、先生の言葉に驚いた。



「えーー、今日から君たちの担任の、若林わかばやしだ!1年間よろしく頼むぞ!それじゃあ、8時45分から式が始まるので、それまでに体育館へ集まること!以上!」


 え?式?私は隣の子に話しかけてみた。


「ねぇ、今日って何日?」


「え?4月7日だけど、これから入学式でしょ?私は片桐かたぎり 那奈なな、よろしくね。」


「へ?よ、よろしく。わ、わわわたしは、浜辺はまべ 鳴海なるみ。」



 時間が戻ってる。


 なによこれ。一カ月先へ行ったり、入学式の日まで戻ったり。


 高校とは時間がバラバラなのか、、?いやそんな訳がない。


 この不思議な現象は何日も続いた。


 私はこの現象を探るべく、寝る時間を変えてみたり、朝一番に学校へ行ってみたり、、

 いろんなことを試してわかったことが一つだけあった。


 この現象はどうやら、一カ月先まで行くことが限界のようだ。


 これはある意味、特殊能力じゃないか、と変なことを企んでいた。


 そう、この能力を使って、偶然にも同じクラスの遠藤 優の情報を探ること。


 きっとこれは私に課せられた任務なんだとさえ思った。


「よーし!明日から遠藤 優の悪戯あくぎあばいてやるぞ!この作戦の名を

『トカゲのしっぽ作戦』とする!おーー!」


 一人で張り切っていた。


 それはきっと、神様が、いや、お父さんが与えてくれた奇跡なんだと、彼女はその時まだ気づかないまま、トカゲのしっぽ作戦に次の日から早速挑むのであった。


 今日のところは、今日という日をのんびり過ごそう。

 気づけば校庭には桜の木々が生い茂り、ピンク色の花を咲かせていた。

 それはまるで、青春とはこの景色のために出来た言葉ではないかと言わんばかりにキレイだった。

 こんな景色を見ていたら、何もかもどーでも良くなるような、そんな気がした。


 私が時間を変えている間、この桜の花は咲き続けるのだろうか、そんなことを考えて、外をただ、見ていた。









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