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楽法の右隣には陽菜よりもさらに年若い十六歳のくのいち、青葉。
美しい髪を団子にまとめている。
陽菜に勝るとも劣らぬかわいらしさと、こちらは独壇場と言えるあどけなさを漂わせる。
青葉も黒の忍び装束であった。
霞組屋敷に着いた陽菜は事情を報告し、すぐに疾風と共に鱗三の居た場所に戻った。
しかし、そこで二人を待っていたのは。
雷組の忍び二人の死体と、絞殺され両眼をかっと見開いたままの物言わぬ鱗三の亡骸。
二人は仲間の遺体を屋敷へと運び、皆でねんごろに弔った後の、この集まりであった。
「鱗三が倒されるとはな」
道順が乾いた声で言った。
「無念です」と疾風。
その双眸は悲しみにくすんでいる。
年齢は離れていたが、鱗三とは実の兄弟のように仲が良かった。
疾風の沈痛な様子に、陽菜はいたたまれなくなったのか眼を伏せた。
鱗三を救えなかったという自責の念か?
「私も残るべきでした」
陽菜が小さな声で言った。
「いや」
楽法が首を横に振る。
「鱗三の指図はあながち間違いとも言えません。問題はあれほどの手練れの鱗三が逃げる間もなく倒された事実」
「確かに」
疾風が頷く。
「雷組の新手は相当の強さということに」
「このまま守勢に?」
楽法が道順に問うた。
道順のしわ深い瞼が半分ほど下りる。
「我ら霞組は」
道順が口を開く。
「すでに大事なお役目を担っておる。それをおろそかには出来ぬ」
「では?」と楽法。
「今のところ奴らの狙いは我らだけ。かかる火の粉を払うのに城の守りの二組の手を借りたとなっては、我らが忍び組筆頭の実力にあらずと殿に申し上げるに等しい」
道順の言葉に他の全員が青ざめた。
確かにそんなことになろうものなら霞組の面子は立たず、威光は地に落ちる。
「よって常の務めは果たしつつ、奴らを返り討ちにせねばならぬ。我らの誇りにかけて」
道順が四人を順番に見やる。