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7

 武器を失った鱗三が慌てて懐中の小刀を取り出そうと手を伸ばす。


 それが果たせぬうちに月影が鎖を敵の首へと巻きつけた。


 鎖を捻り、力任せに絞め上げる。


 呼吸を絶たれ、意識が遠のき始める鱗三の眼前に爛々と輝く憎悪に満ちた血走る双眸。


(お…おのれ…雷組…)


「ぎゃはははは!!」


 鱗三が息絶えた後もしばらく、その恐ろしい笑い声は雑木林中に響き渡っていた。




 坂巻家が治める城下町からは、やや外れた場所にある川辺の水車小屋。


 壊れた水車は内部にある挽き臼への動力を何ら伝えてはいない。


 小屋の持ち主はとうに亡くなり、その後、引き取り手もなく打ち捨てられたものであるから、それも当然であった。


 十畳ほどの広さに十人の影が座っていた。


 横に並んだ九人の影は一人の影へと顔を向けている。


 全員が黒の忍び装束、忍び頭巾姿であった。


 徐々に昇り始めた朝陽が小屋の窓や壁板の隙間から差し込んでくる。


「本来ならば」


 皆に見つめられる一人が口を開いた。


 女の低い声。


 頭巾の間から見える双眸は血走り、憎悪に満ちている。


「先の殿に重用されし、我ら雷組が代替わりされた重家様に最も近い場所にて仕えるのが筋のはず」


 女の言葉に九人の忍び頭巾が頷く。


「それをいくら重家様付であったとはいえ、霞組を昇格させるなどと…」


 女の両眼が、さらにどす黒い炎を燃やす。


「しかも直属は洩れたとしても他の二組に任された坂巻城の警護の役目にすら我らをつかせず、あげくは『父に仕えた雷組はもはや要らぬ』などと仰られ…」


 九人が頷き、拳を握りしめ、女と同じ怒りの色を瞳に浮かべた。


「あのまま城内に留まっていては他の三組によって我らは始末されていたに相違ない。逐電したのは、まことに正解であった」


 そう言って女は仲間たちの顔を見回した。


 

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