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4

 陽菜は隣国、小諸信竜(こもろのぶたつ)の領地を探る任務から帰ってきたばかり。


 そこを雷組に襲われた。


 陽菜は霞組屋敷に報告すべき、雷組の襲撃と小諸家の領内で探り得た事柄を頭の中で思い返す。


 小諸家では城主信竜の嫡男、竜丸(たつまる)が今は亡き将軍家、鳳忠久(おおとりただひさ)の娘、夜叉(やしゃ)姫と婚礼を上げ正式に夫婦となった。


 二人は小諸城にて暮らすようだ。


 そして都近くの将軍家の城、鳳城では主を失った家臣たちが大騒ぎとなっている模様。


 小諸竜丸が次期将軍家の襲名を固辞したことで、鳳家臣たちが「我こそが将軍家の意志を継ぐ者なり!」と口々に主張し内部分裂が激しさを増しているとか。


 それらの報せを霞組頭である道順に伝えねばならない。




 雷組の忍び二人の死体を見張り、木陰で鱗三は息を潜めていた。


 陽菜を交えた二対二の戦いから、しばしの時が経っている。


 まだ雷組は現れていない。


 どうやら成果はないかと鱗三がその場を立ち去ろうと考えた、そのとき。


 背後から何者かの気配を感じた。


 さっと振り向く。


 雑木林の木々の合間に松明(たいまつ)の灯りが浮いている。


 最初は離れていたそれが、あれよあれよという間に接近し、鱗三の前へと姿を現した。


 黒の忍び装束の女である。


「うぬ…」


 思わず鱗三がうめいた。


 右手に持った松明の明かりに映し出される、くっきりと陰影のついた女の顔が恐ろしく歪み、見開かれ血走った双眸が、これ以上はないほどの憎悪を浮かべ鱗三をにらみつけていたからだ。


 先ほどまで雷組の忍びと、まさに命を懸けて斬り合っていた鱗三である。


 己に向けられる殺意などは慣れっこで、いちいちそんなものには怯まない。


 はずであったが。


 今、目の前に現れた謎の女忍びの眼光たるや、かつて相対したことのない、まるで猛毒の瘴気(しょうき)のような殺気を投げかけてくるのだった。


 それゆえに、さすがの鱗三も一気に全身に冷や汗を噴出する事態となった。




 

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