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次第に重家の動きは鈍くなり。
両眼から徐々に光が消え、両腕がだらりと下がった。
そして完全に動かなくなる。
「ぎゃはははは!!」
月影が笑う。
天井から畳へと跳び、重家が死んでいるかを確かめ、鎖を回収した。
襖を開け、外に出る。
そこには警護の侍たちと城の守り手である忍びたちの死体が数人、転がっていた。
明朝には城のあちこちで他の忍びたちの死体も見つかるであろう。
あらかじめ城の守りの忍び組の配置を知りうる月影なればこそ、彼らを殺すのは造作もないことであった。
死体を跨ぎ越し、月影の姿はやがて闇の中へと消えていった。
闇夜の荒れ地を走る五つの影。
先を走る四つの影を後から追うひとつの影。
追われる者、追う者、全員が忍び装束であった。
前の四人は布で顔を隠し、追う一人は胸元まである黒髪をなびかせ、顔を晒している。
小柄な女であった。
前の四人が足を止め振り返った。
振り切れぬと見て戦う覚悟を決めたか。
四人、一斉に刀を抜き構える。
追う女も足を止めた。
右手には小刀。
そして、その顔は。
四人の忍びたちは皆、息を飲んだ。
女の憎悪に満ち満ちた双眸の、あまりのすさまじさにである。
四人の背筋がぞくりと震えた。
「何故、我らを狙う!?」
四人組の一人が女に問うた。
「理由を知りたいか?」
女が口を開いた。
しわがれた低い声。
声までが憎しみにあふれている。
「お前たちが忍びだからよ」
女の言葉に四人が顔をしかめる。
「きさま…まさか噂の…」
忍びの一人が上ずった声で言った。
女が頷く。
「我は『忍び殺し』」
女の口角が、ぐぐっと吊り上がる。
「月影」
そして。
月影の口から、おぞましくもけたたましい笑い声が鳴り響いた。
「ぎゃはははははっ!!」
おわり
最後まで読んでいただき、ありがとうございます(T0T)
大感謝でございますm(_ _)m
タイトルの「モノクロ」は白黒写真や「ひとつの色」という意味からつけました(*^O^*)
陽菜と月影に当てはまります(*‘ω‘ *)
「紅伝」が「ポップ&ロック(?)」だったので、その反動から今作は「オーソドックス&ダーク」な感じになっておりまする(´・ω・)(笑)