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 顔を琵琶に寄せ、弦の一本を間近で確かめる。


「む」


 弦は切れかけていた。


 最初に弾き始めたときの楽法の慌てぶりは、この弦の違和感によるものであった。


 そうそう切れるものではないはずだが。


 戦いの途中で切れなかったのは幸運と言える。


 替えの弦も持ってはいるが、今は陽菜か疾風、どちらかに加勢するのが先か。


 琵琶は使えずとも撥と楽法の体術があれば、雷組にもおいそれと遅れは取らない自負があった。




 思った以上の敵の強さに窮していた陽菜であったが。


 その左手がすっと上へ伸びた。


 人差し指と中指は立て、他の指を折り曲げる。


「忍法、花嵐!!」


 陽菜のかわいらしい声が響く。


 無数の花びらが陽菜の身体より舞い上がり、雷組の忍びに渦巻きながら飛んだ。


「おお!?」


 視界を遮られた忍びが一瞬、怯む。


 陽菜はその隙を見逃さない。


 跳び込む陽菜の小刀が、すれ違い様に雷組の首を見事に掻き斬った。




 疾風は三人の雷組と堂々と渡り合っていた。


 三人の中には指示役の男も居る。


 皆、かなりの手練れであった。


 その三人と互角に戦い続ける疾風の腕前も、また非凡であると言えた。


 疾風の強さを聞き及んでいた指示役も、だからこそ最大の人数をこちらに充てたのだ。


 しかし、それでも手こずっている。


 雷組三人の顔に焦りの色が浮かんだ。


 だが、これは疾風も同様であった。


 常日頃より妹のようにかわいがり…否、これは実のところ、すでに亡き鱗三が陽菜を歳の離れた妹の如く思っていたのとは明らかに違う。


 疾風のそれはもっと強いもの…ありていに言うならば、どろどろとした生々しい想い。


 男女のそれであった。


 道順が陽菜を霞組へと連れてきた日に初めて出逢い、修行生活を共にするうち、いつの間にか特別な感情を抱くようになっていた。


 このところのそれは、さらに激しく燃え盛り、疾風の心の大半を占める始末だった。



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