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「ぬおっ!?」
男が驚愕した。
花びらが男を囲み、その視界を奪う。
刹那。
陽菜の左手より棒手裏剣が飛んだ。
「がっ!!」
眉間に手裏剣を受けた敵がうめき、ばったりと倒れる。
仲間が倒されるのを見た、もう一人の忍び頭巾に動揺が走った。
その隙を見逃さず、今度は鱗三が。
「忍法、百鱗蛾!!」
叫ぶと小さな笛を取り出し、口に当て吹き鳴らした。
突如。
どこからともなく大量の蛾が姿を現す。
蛾たちは鱗三と相対する忍びに向かって飛び、一斉に群がった。
「な!?」
忍びが刀を振り回し、蛾を斬る。
何匹かは両断したが、その間に他の蛾たちに全身を覆われる。
「おのれーっ!!」
大声を上げ闇雲に刀を振り回すが、もはや蛾によって視界は閉ざされ、空しく宙を斬るのみであった。
鱗三は敵の背後にさっと回り込むと一刀のもとに切り捨てた。
斬られた何匹かの蛾たちが地に落ち、その上に致命傷を受けた男が倒れる。
ほんの少し身体をよじると、男は絶命したのか動かなくなった。
全身を覆っていた蛾たちが群がったときと同様、一斉に飛び立ち、いずこかへ消えていく。
「雷組め」
鱗三が苦々しげに言うと足元の死体につばを吐いた。
「我らを恨むとは筋違いも良いところだ」
自分のそばに歩を進める陽菜を見やる。
「なあ、陽菜。お前もそう思うだろう?」
「はい」
陽菜が頷く。
何とも、かわいらしい声である。
「それにしても」
鱗三が微笑む。
「強くなったな、陽菜」