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 逆に陽菜は与し易いと見られている。


 これはあながち見当違いというわけではない。


 実際、陽菜は襲い来る男の刀を小刀で受け止めたものの、ぐいぐいと押し込まれ後方の林へと退がっていく。


「陽菜!!」


 これには疾風が慌てた。


 顔色を変え、陽菜を助けようと踏み出すが。


 三人の雷組が次々と斬りつけ、それを邪魔した。


 敵を罠に()め心理的に有利であったはずが、予想外の陽菜の苦戦で疾風はむしろ浮き足立っている。


 矢継ぎ早に攻撃され、疾風は陽菜とは逆側へと追いやられた。


 さすがはかつて忍び組筆頭であった雷組と言わざるを得ない。


 陽菜と雷組の一人が林に消え、疾風も反対側の木々の中へと雷組の三人と走り去った。


「おやおや」


 雷組二人とその場に残された楽法が言った。


 敵の猛攻をかわしながらも、どこか余裕のある口調。


「結局、こちらが分断されてしまいましたね」


 軽い身のこなしで雷組二人の刀を避けつつ琵琶を構え、撥で弦を弾き始める。


「!?」


 それまで涼しい表情だった楽法の顔が、にわかに曇った。


「そんな…こんなときに…」


 そう呟いた。


 楽法の琵琶からゆったりとした旋律が流れる。


 守勢に回るだけで戦う素振りを見せぬ楽法を敵二人は(いぶか)しんだ。


 しかし、攻撃を緩めはしない。


 しばらくの間、かわし続けた楽法の動きが突如、ぱたりと止まった。


 琵琶を弾きつつ、棒立ちとなったのだ。


 このままでは次の瞬間、楽法は雷組の刃に斬られる。


 が。


「動くな!!」


 楽法の叫び。


 その声を聞いた雷組の二人が、ぴたりと動きを止める。


 これこそは先ほどから密かに楽法の身体より辺りに流れ出したる香の匂い、琵琶の音、楽法の視線等々、複数の要素によって敵を自在に操る術なのであった。


 術の効き目は短いものの無抵抗の相手を殺すのに何の苦労があろうや。


 楽法の右手の撥が二度翻れば、二人の雷組の喉笛から真っ赤な鮮血が(ほとばし)る。


 二人はどうっと地に倒れた。


「ふう」


 楽法の顔には、うっすらと汗が吹き出ていた。



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