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 歳相応の娘らしい笑顔を見せた陽菜に楽法も、さらに心を開いたようだった。


「少し教えてあげましょう」


 楽法が琵琶を陽菜に差し出した。


「良いのですか?」


 陽菜が嬉しそうに言った。


 楽法は頷き、陽菜が琵琶を受け取った。


 月明かりの下で、しばしの間、二人は琵琶の師と弟子となった。


「思ったより難しいですね」


 陽菜が苦笑いし、琵琶を楽法に返した。


「最初はそんなものです。務めに支障が無い時なら、また教えてあげますよ」と楽法。


「ありがとうございます、楽法様」


 二人は笑顔を交わし合った。


 仲間を亡くし悲しみに沈んだ気持ちが、いくぶんは和らいだか。




 陽菜と楽法が心を通い合わせた次の日の夕暮れ時。


 かつて霞組が村人全員を皆殺しにした村の跡近くの池のほとり。


 黄昏の陽を浴び、一人佇む楽法を六人の忍びたちが囲んでいた。


「ご苦労なことです」


 楽法が朗らかに笑った。


「雷組の皆様」


 楽法の馬鹿にした口調に六人の忍びの双眸が怒りに沸き立つ。


「霞組は一人残らず殺す!!」


 雷組の一人が吐き捨てた。


 全員が忍び頭巾をしているが、今喋った者が男であるのは声で分かった。


「多勢で私を殺すつもりですか?」と楽法。


「そうそうあなた方の思惑通りにはなりませんよ」


 楽法の言葉に六人が眉間にしわを寄せると。


 楽法の右側を囲む三人の背後に一人、左側を囲む三人の背後に一人、新たな気配が出現した。


「ぬ」と雷組たちが驚く。


 右に立つのは疾風、左に立つのは陽菜。


 青葉のように単独で行動していると思わせて、雷組を誘き寄せる罠であった。


「見事に引っかかりましたね」


 楽法の笑い声。


 雷組の指示役が残りの五人に目配せした。


 瞬間、六人が散開する。


 疾風に三人、楽法に二人、陽菜に一人が襲いかかった。


 あらかじめ霞組について知り得た事柄より、雷組が最も強敵と判断したのは疾風ということか。

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