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 最後は亡骸をいくつかの家屋に集め、村に火を放った。


 何もかもが燃え朽ちるまで、霞組の面々は踊るように揺れる激しい炎を眺め続けた。


 燃え盛る火で、夜だというのに昼間の如く明るい中、下手をすれば肌をちりちりと焼きかねぬ熱さが全身から汗を噴き出させ。


 そこで目が覚めた。


 陽菜は霞組屋敷の己の部屋で布団に横たわっていた。


 かけた布団を除け、上半身を起こす。


 寝間着(ねまき)は汗で、ぐっしょりと濡れている。


 夢を見ていたのだ。


 恐ろしく現実味のある夢を。


 あのときの感覚と想いをそっくりそのまま思い出す悪夢を。


 村を全滅させた直後は毎晩のように見ていた夢も、いつしか収まっていたのだが。


 ここ最近、再び見るようになった。


 主命とはいえ、あの夜の自らの非情さ、残酷さがまざまざと甦るのだ。


 思い出せば今でも胸をえぐられる想いがする。


 道順が予言した通り、このときの働きを忘れなかった重家によって、景家が重用していた雷組は筆頭の任を解かれ、代わって霞組が昇格することとなった。


 ついに忍び組たちの頂点へと登り詰めたのだ。


 が、そのため雷組は今や霞組を害そうと襲ってきている。


 陽菜は今朝、草原で死んでいるのが見つかった青葉を思い出し心が塞いだ。


 青葉とは気が合い、妹のようにかわいがっていたのだが。


 陽菜の双眸が潤み、涙が頬を伝い落ちた。


 陽菜は汗で濡れた寝間着を脱ぎ、身体を手拭いで拭き取ると新たな物へと着替えた。


 そっと寝所を出て、屋敷の庭に降りる。


 月明かりに照らされた庭園には先客が居た。


 楽法である。


 女楽士は楽な浴衣姿で庭の中央に架かる石造りの橋の欄干に浅く腰かけていた。


 片手に琵琶を持っている。


「おや?」


 陽菜に気づいた楽法が笑顔で言った。


「眠れませんか?」


 陽菜は無言で楽法のそばに進み、足を止めた。



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