10
「良いか。殺るか殺られるかぞ。出来るだけ単独行動は避け、雷組を皆殺しの憂き目に遭わせてやるのだ」
疾風、楽法、陽菜、青葉が頭目の言葉に頷いた。
この朝の集まりは、これで終わりとなった。
鱗三の死より十日後の深夜。
腰の辺りほどまでの高さの草原を走る一人のくのいち。
青葉である。
その後ろから迫る二つの影。
雷組の忍び。
こちらの二人も女であった。
皆が黒の忍び装束で、青葉は素顔を晒し雷組の二人は忍び頭巾を被っている。
追手に追いつかれてはならじと青葉が後方へ振り向き様、手裏剣を放つ。
雷組の女の一人が小刀で、それを弾き返した。
青葉の動きを観察する二人のくのいちは、敵を与し易しと踏んだ。
相手はさしたる技量ではない。
二人でかかれば万が一にも負けはない。
そう確信した。
このところずっと霞組を見張っていた雷組の面々はなかなか襲撃の機会を得られず、焦れに焦れていた。
霞組が雷組の攻撃を想定し、常に単独行動を避けたためである。
しかし、ついに。
今宵、隣国へと一人向かう道中の青葉を見つけた。
そして、ここまで追い込んでいる。
雷組はすでに二人の忍びを失った。
格下の相手とはいえ油断せず確実に、この敵は始末せねばならない。
二人のくのいちは口をくっと真一文字に引き結んだ。
一方の青葉。
若くあどけない顔を占めるのは窮地による怯えではなく、うっすらとした笑い。
(雷組、このあたいを簡単に殺せると思ってるね。ふふふ。ああ、可笑しい。あたいが何故、こっちに走ってるのか気づきもしない)
笑いを噛み殺し走る青葉。
その足が不意に止まった。
腰の忍び刀を抜き、追手の方へと振り返る。
「「お」」
くのいち二人の足も止まった。
一丈(約3m)ほどのところで青葉とにらみ合う。




