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商売・商売・商売

 魔力薬の売り方に際しては最初に買う客へと注意事項を説明する事を第一にして、その他はいつも通りとした。

 時間はかかるが、客へと一人一人しっかりと「味無し」を説明するのだ。今まで売っていた「甘くて美味しい」モノではなく、急遽「魔力回復」用に生産されたものだと。

 そして回復量はこれまで売って来たものと変わらない、というのもしっかりと説明する事も入れる。

 これならちゃんと「冒険者」として買う事を目的とした者ならばソレを受け入れるだろうと。


「転売がされかける事態をこの間に防いだのですがね、どうやらこれを研究して自分の所でも作り出そうとしている動きもチラホラ小耳に挟んでいます。それは別段構わないとエンドウ様と事前に話し合いはしましたが、どうにも私としては引っ掛かってしまいますね。」


 改良版魔力薬が世の中に大きく広まればクスイの店は「元祖」として銘打って売り出せば一定のブランドとして安定はするだろうとの話もしてある。

 しかし商売人としては転売などと言ったそうした行為は受け入れがたいと言うのも理解はできる。


「まあ、しょうがない。最初の内は珍しさから高額でも買ってみたいなんて言った奴らも出てくるさ。需要に供給が追い付き始めればそう言うのも治まるよ。長い目で見よう。」


 俺はそう言ってクスイを宥める。苦笑いで返してきたクスイも「仕方がありませんな」と口に出す。


「じゃあ、ここで違う話に変えていいか?ちょっとさ、魔物の方、処理をしたいんだけど。確かクスイはそっちの方は、やってないんだっけ?」


「そうですな。申し訳ありませんが、私はそちらの方には手を出してはおりません。」


「ここで手を出してみるって言うのは・・・やめとこうか。今は手一杯だもんな。魔物の素材売買で信用が置けて、それでいて俺たちの名前とかを一切出さないでいてくれる商人とか、紹介してくれない?そっちに頼らせてもらいたいんだ。」


 ここで苦い顔になり悩むクスイ。どうやらそちらの方の伝手が思いつかずにいる様だ。

 確かに自分が「関わっていない」商売をしている商人との縁はなかなか積極的には繋がろうとは思わなかったのだろう。

 だがここでクスイはちょっと「ピンときた」と言った顔になって一人の名前を出す。


「サンネル殿に頼ってみてはいかがでしょうか?彼はしっかりと「約束」は守ってくれる商人です。」


「えー・・・あ!そうか、確かビッグブスのあの。へー、そうか。何か早くもこうして縁が繋がったなぁ。」


 前に代金の受け取りの時に「自分とも一緒に仕事しましょうよ」と粉を掛けられていた事を思い出す。

 クスイがこう言うのだから信頼はできる商人なのだろう。ならば後で訪ねてみるのが良いだろう。


「じゃあ、そこら辺は解決だな。んじゃ、「つむじ風」の事で何か動きとかは無かったかな?ギルドで何か一悶着起きたとか、国から徴兵の使者が来たとか?」


 俺は全部ここで一通り聞いておきたい事を全部聞いてしまおうと話す。


「うむ、そう言えばギルドに国の、何処の部署かは知らんが、何やら来ていたのを見かけたぞ?ギルドの前をたまたま通っただけだったのでな。それがどういった要件、内容かは分からんが。」


 師匠は有力な情報をすぐに出してくれた。


「コリャヤバいかな?師匠、その後とかは知りません?」


「以降は見かけなくなったがな。急用、っと言った感じで慌てていた様にも見えたが、どうだろうな。」


 これはギルド長に直接聞いた方が早いと判断する。しかし街の様子も知っておきたい。


「クスイ、街中はどんな感じだ?その使者様とやらがウロついていたりとかの話は?」


「私の所にも多少その話は入ってきましたが、別段妙な動きと言ったものは報告されていませんな。」


「じゃあ直接ギルドに行ってみるしか無いか。分かったありがとう。バッツ国から明日出発して「普通」に戻って来る。戻ってきて早々厄介な事に巻き込まれないか?ってな。いや、そもそも俺たちがやらかしてるのが、まあ後ろめたいんだけども。でも悪い事してる訳じゃ・・・いや、悪い事してるか。」


 やった事はこの都市の平和を維持する活動だ。冒険者としての。

 でもそれをやった事を「隠す」のはどう考えても良い事じゃない。

 自分たちの人生を左右する事であるからして、後悔は無いんだけども。

 それでも「隠蔽」をギルド長に頼んだのは俺たちだし、それを受けてくれたのはギルド長判断でもある。

 なかなかに悩ましい事ではあるが、国にこき使われたくない、あるいは利用されるような立場にいたくないと言ったところが大きい。

 師匠から冒険者の徴兵に関する裏話は聞いているので、そこら辺を加味すると国に「逆らっている」と見なされてもおかしくない「隠し事」ではあるが、これに「悪い意識」と言ったモノは余り混じらない。


 一番大きく締める割合と言えば「シガラミは鬱陶しい」ので国に所属したくないのだ。

 あと国が「やらかしている」と言うのを師匠から話を聞いて俺は知ってしまったので、そこら辺も大きな理由だ。


「権力に絡まれるといつまでもずっとしつこいだろうからなぁ。捉まらないのが一番良いのだけれど。じゃあちょっとギルド長と話をしに行ってみる。」


 こうして俺は一人でギルドへと向かう事にした。


 まあ道は大体覚えていたのですぐに到着する。でも何だか入り口が人だかりであった。

 ソレはどうやら一人の官吏らしき人物が蹲って蹴られているのだった。


「貴様!どう言う事だ!今「つむじ風」はバッツ国だと!情報が遅い!諜報のお前が怠けているからだろうが!」


 その官吏を蹴って怒鳴るのはおそらくはその上司だろう。


「ああ、駄目そうだな。拠点の都市を移動しなきゃいけないッポイ。どうするかなぁ?もしかしてギルド長、書類の件、バレた?」


 そう易々と露見はしないと言っていたはずだ。なのにこうして国の徴兵らしき団体様がギルドの前にいるのであればコレはおそらく完全にバレていなくとも疑われてはいるかもしれない。

 詳しい話はギルド長に聞いてみるしかないが、どうやらこのマルマルでの冒険者活動はもう諦めなくてはいけないようだ。


「で、入り口から堂々とは入れないなこれじゃ。どうするかな?一旦話を戻って皆にするのが良いかもしれないな。そうと決まれば一度戻るとしようか。」


 完全にこの国の使者だろう者たちは冒険者パーティー「つむじ風」を狙っている。

 なにせこの怒鳴っている官吏がその口でソレを大声で言っているのだ。もう疑う余地が皆無だろう。

 ならばマルマルに戻ると言った選択肢は中止だ。でもバッツ国のギルドのお誘いもまだ受けられるようなタイミングでは無い。

 ならば次は全く違う土地に出発するのが良いかもしれない。


「これだと何だか逃げ回ってるように見えちゃうなぁ。でもこのシーカク国に付き纏われるのは嫌だし、しょうがないな。」


 俺はそのままクスイの家の裏に行こうとしたが、その前に魔物を売ってしまう為にサンネルの所に向かう事にした。

 とは言え、俺の知っているのはあの倉庫だけだ。他に店舗や事務所などがあればサンネル本人はそちらに居る事だろう。

 倉庫に行っても会えない可能性の方が高い。むしろ、こう言った事は突然訪問せずにアポを取るのが礼儀と言うモノだ。

 なので俺はまずその点の話ができる人がいるかどうかも含めて一旦倉庫に向かった。

 俺は一度サンネルの顔を見ているので、そもそもその本人の現在位置を脳内レーダーで出して把握する事も俺は出来ちゃったりする。

 しかしそれは緊急用にしている。あまり勝手やたらと人の行動を監視するようなマネは趣味じゃ無い。

 俺は魔法と言うモノを便利とは思っていても、やたらメッタらとソレに頼るつもりは無い。

 この世界ではそもそも「身の危険」に関しては魔法に頼る事が多いとも思っているが、それ以外では急ぎでも無いのにそこまで魔法を過剰に使おうとは思わないのだ。


「でも、相当もうやらかしてはいるとも自覚はしているけどさぁ。」


 自分が今までこの世界に来て魔法でやらかしてきた事を思い出しつつぼやいて歩く。

 一番大きいのはワープゲートでは無いだろうか?こんな代物は地球にも存在しちゃいない。

 こちらの世界でだってそうだ。それを俺は実現してしまっている。


「なんて魔法はおそろしいのだろう・・・」


 もう何度目かの震撼。思いを馳せれば馳せる程に「魔力とは?魔法とは?」と深みに嵌りそうになる。

 しかしそれも歩き続けていつの間にか到着していたサンネルの倉庫を目の前にして思考は止まる。


「おや?これはこれは、エンドウ様、でしたな?お久しぶりで御座いますね。して、何か御用時ですかな?」


 そこにはサンネルが居たのだ。もちろん忙しなく従業員にアレコレと指示を飛ばしていたので忙しそうではあったが。

 それでも俺を見るなりピタっと指示を止めてこちらに向き直りそう挨拶をしてきた。

 そしてあっちこち歩き回り、荷を運んでいる従業員たちに「暫く休憩だ」と言って俺を案内し始めた。


「どうぞどうぞ。あちらの小屋でお茶でも。ゆっくりとお話を伺いましょう。」


 どうやら突然来た俺に「金の匂い」を嗅ぎ取ったらしいサンネル。商人とはこういった機微に対して敏感で貪欲なモノなのだろう。

 俺を案内したのはどうやらしっかりとした客間であり、勧められるがままにソファに座ると、そこにサッと女性秘書だろうか?が来てお茶を出し、しかもそこにしっかりと茶菓子も付いている。


「あー、暫くは誰もここに入ってこない様に。宜しくね。」


 サンネルはそうお茶を出しに来た秘書に注意をして俺の対面のソファへと座った。


「まどろっこしい事は無しにしませんか?サンネルさんはお忙しそうですし、お時間を取らせるのもいかがかと思いますので。」


 俺はそう単刀直入に話をしようじゃ無いかとサンネルに問う。


「確かに、回りくどい言い回しやら、言葉の裏を読み取ろうとする腹の探り合いはエンドウ様と私の間に必要などありません。私に求められている事は何でしょうか?」


 サンネルは俺の問いにそう即座に返してきた。コレがおそらく相手がクスイならばもっと複雑な「雑談」をしつつ話を少しづつし始めようとしたのだろう。

 でも、サンネルはどうやら俺との「縁」を繋ぐことに対して積極的だ。それはこうしてジッと俺を見つめてきている事で感じられる。


「魔物を買い取って欲しい。俺の事を秘密にして欲しい。ただこれだけだ。買い取ったソレの出所を一切漏らさない約束をしてくれるだけで良い。買取金額はそちらに全て任せる。」


 こんな事を言ってしまうと普通の商人なら「出直してこい」と言われてもおかしくない。


 まず魔物を誰から仕入れたか?は、そもそも冒険者としての名を売るためなら大々的に宣伝すべきだ。

 そしてそう言った名が有名になれば「この魔物は有名な冒険者が持ち込んだモノ」という話を商人の方は使う事ができる。

 商人はそこに信用、ブランド、保証などと言ったモノを付随するのだ。

 その名を世間に轟かす、そんな凄い冒険者が狩った魔物、話題性も充分で店の宣伝、信頼にも繋がる。

 それを公表しないで欲しいと言うのは得られるそう言った「利」は無しだと言っているようなものだ。


 そして買取金額。これは商人の目利きを試していると思われて当たり前だ。

 このサンネルの持つ倉庫は巨大だ。この大きさはそのままサンネルの商売人としての「力」をあらわしていると言って良いものだ。

 その力がはっきりと分かるモノを目の前にしているのにもかかわらず、俺はこのサンネルを「試す」などと言っているのと同じなのだ。

 商売をする者にとってそう言った事は挑発されている、侮辱されている、そんな風に受け止められてしまうだろう。

 だからサンネルから「ふざけるな」と機嫌を損ねてしまい怒鳴られる覚悟もしたのだが、あっさりと受け入れられてしまった。


「よろしいでしょう。そのお約束守りましょう。ただし、その買い取る魔物を見せて頂いてからですね。その約束を守るに値しないしょぼい魔物などを見せられたなら、ここでエンドウ様を大いに嘲笑しますよ?」


 こうしてサンネルの同意を貰った俺はこの場所じゃ狭いと提案する。


「ならば空いている倉庫はありませんか?そこへ移動しましょう。ここではなんなので。あ、それと人払いをお願いしますね。同行者はサンネルさんだけと言う事で。」


 今後ともサンネルに魔物の素材を買ってもらうのなら俺のインベントリを見せておくのもいいかと思ったのだ。

 こうして丁度、荷を運び出して空になった倉庫が一つあると言われ、サンネルの案内でそこへと向かった。


 中に入りドアを閉めて貰う。この倉庫はどうやら天井に魔力で明かりが点く仕掛けがあるようで、パッと倉庫の中がすぐに明るくなった。

 そこで俺はこの倉庫に俺たち以外の人物が隠れたりしていないかを魔力ソナーを出して調べる。倉庫の外、その周囲もだ。

 人が居ない事を確認してから俺はサンネルに始める事を伝える。


「では、以前、ビッグブスをどうやって運んだのか、お聞きになられましたよね?ソレを見せたいと思います。これも誰にも言わない約束をしてください。」


「見せて頂いて良いのですかな?その辺は秘密にしておいていただいても構いませんぞ?ここで問題なのは出される「魔物」の方ですからな。」


「いえ、これから先もサンネルさんには魔物の素材を買い取って頂きたいんですよ。だから、そこら辺の信頼をこうしてお見せしておこうかと。では、三体程あるのですが、いや、四体かな?まあ最初はどれにしましょうか?」


「どれ程のモノをお持ちかは知りませんが、全て出していただいても構いませんよ?」


 どうやらサンネルは何が出てきても「金は払えるぞ」と自信満々だ。そこで俺はまずは一体をインベントリから取り出す。

 コレに何も無い空間から巨大な「一本」が出て来た事でサンネルは固まってしまった。

 でもすぐに出て来たものがトレントだと認識すると「まさか」と言った表情に変化した。

 そこで俺は残りを出すのを止めておく。


「まさかこの様に!傷は!?どの様に戦えばこれほどに美しく狩り取れるのですか!?」


 どうやら納得をしてくれたらしい。そこへ俺はインベントリから袋を取り出す。

 この時サンネルは何処からともなく俺がそうして何も無い空間から物を取り出す事も重要だと考えたのか、今度は俺の手をジッと観察してくる。


「これはトレントを狩る時に出た「木屑」なんだけど、何かに使えるかな?これもできれば買い取って欲しいんだよね。どうかな?」


「こちらの一見何の変哲も無い木屑が、このトレントの?良いでしょう。買います。商談成立です。これほどの驚きは久しぶりです。いえ、初めて、ですな。」


 サンネルは至って冷静だ。表面上は。でも俺のレーダーにはかなりの緊張をしていると言う反応がサンネルに出ている。

 俺の頭の中のレーダーは高性能過ぎてちょっとコワイ位だが、これも自分の脳に魔法をかけている結果なのでこれ以上何も言えないのだが。


「今回も、金貨をご用意いたしましょうか?それとも冒険者カードの方へと金額をお入れしましょうか?」


 そう言えばカードが確かそう言った金額を入れて置ける「銀行カード」みたいな役割があった事を思い出す。


「じゃあ今回はカードの方に入れて貰っていいですかね?現金を用意してもらうのも手間と時間と労力がかかるでしょうし。」


 今回は様子見だ。今の所は皆が緊急でお金の必要が無いので、ここで俺のカードに入れて与っておく感じで良いだろう。


「他のはどうしましょうか?出しちゃいますか?」


 追加でその他を出す事を聞いてみたが、どうやらサンネルはコレに待ったを掛ける。


「先ほどは偉そうな態度で、全て出してもいい、などと言ってしまいましたが、残りはまた次にして頂いて構わないでしょうか?まさかこれ程のモノが出てくるとは露とも思わず。いやはや、私もまだまだ目利きが甘いようで。精進しなくては。」


 どうやら「人を見る目」と言った意味でサンネルは自分がまだまだ甘ちゃんだと言いたいようだ。

 しかし、サンネルは次になかなか鋭い質問をぶつけに来た。


「つい最近ではあるのですが、バッドモンキーが市場に出回りましてね。あれはもしかしてエンドウ様が?」


「まあ、言っちゃっていいか。そう、それ多分だけど俺だな。で、それが何かありましたか?その後にどんな流通をしたかとかは確認していないし、その後どうなったかを聞いてみたいですね。」


「では、契約書を作るために部屋へと戻りましょう。その契約書を作るまでの間にそこら辺のお話をお聞かせします。」


 こうして倉庫の外へと出て再びあの客間へと戻る。

 そして待つ間にギルドに買取をしてもらったあのバッドモンキーの皮がどうなったかの話を聞いた。

 一つはどうやらお貴族様に買われたそうだ。何故そんな事を知っているのかと聞いたら有名な話らしい。

 どうやらその貴族は魔物の「はく製」のコレクションが趣味らしく、どうやら今回のは大分「いいもの」で、その出来たはく製を屋敷の庭に大々的に見せびらかすのに一時飾ったそうだ。

 ソレがかなり有名になって、よその地域や地方からソレを見に見物客が来るほどの物だったそうだ。


 そして残りの皮は各部位が切り離されてギルド主催のオークションに出され、それぞれがかなり高値で売買が為されたとの事。

 で、ちゃんとサンネルもその一部を競り落としているそうな。


「これからはエンドウ様には驚かされっぱなしになるのでしょうな。いやはや、商人としてこれほどの喜びは無いでしょうな。」


 そうして笑うサンネル。するとどうやら契約書ができたようでドアをノックした後に秘書が部屋へと入って来た。

 差し出された売買契約書に俺はサインを入れる。でまたしてもコレにサンネルが言葉をこぼす。


「何も見ず、読まずで署名ですか・・・いやはや。何とも。いや、これは信用されていると言う証なのでしょうか?」


 俺は別にサンネルと言う人物をこれっぽっちも疑ってはいない。

 というよりも、これらの魔物の素材を捌くのに彼しか頼れる人物がいないからこそ、こうして素直にサインをするのだ。

 そして別にそう言った理由に対して「足元を見られても構わない」と考えていた。

 何時までもインベントリに「箪笥の肥し」にし続けているのもあまりいい気分ではない。

 忘れてすっかりその存在を忘れてしまうよりかはさっさとお金に早めにキッチリ変えてしまった方が良いと思っているだけだ。

 別にそんな俺の心情をサンネルに話す必要も無いだろう。彼はビッグブスの時の金額の時でさえ「不正」をしたりはしていない。

 なのでここでも買取金額を誤魔化したり、あるいはあり得ない位に低くしたりはしていないだろう。そこら辺を俺は疑っていたりしない。


 こうして話は纏まり、俺のカードに入金するのだろうカードの読み取り機みたいな道具が出て来た。


「ではこちらにソレを差し込んでください。はい、結構です。では、今後とも御贔屓に。」


 そう言って深く頭を下げてくるサンネル。どうやらコレでもうお金はカードに入ったようだ。

 ここでの用は今回はもう無いのでコレで俺はお暇する事にした。随分とあっさりしたものだが、サンネルの内心がソワソワしているのを俺は知る。もちろん脳内レーダーの解析結果だ。

 ドンドンとレーダーの高性能化が進んでいて、今では相手の心理状態まで手に取るように分かってしまっている。俺は何処に向かっているのだろうか?

 トレント、それもエルダーの名の付く素材にサンネルもどうやって大きな利を得ようかと思考がそっちへと思いっ切り片寄っているのだ。


 こうして俺は客間を後にする。商人の商売魂に火が点いたのだ。そこへこれ以上長居をするのは無粋だろう。


「さてさて、ギルドの方は・・・騒ぎは収まったのかな?ちゃんとそこら辺の話は確認しないといけないよな。はやまっちゃいけない。詳しく話を聞いてから判断しないとな。」


 俺はまたギルド前に戻った。するともう既に役人どもは消えていていつものギルドに戻っていたようだ。

 そんなギルドに顔を出す、のは少々危険だと思ったので俺は一旦建物の陰に隠れた。

 俺の顔を知っている奴がこの都市には多い。というか、もう既に俺がこの都市に戻って来た事を知った者たちが多く居る事だろう。

 顔など隠さずに歩いていたからしょうがないと言えばしょうがない。しかし油断し過ぎと指摘されるとぐうの音も出ない。

 俺はギルドでの決闘でやらかしをしているのだ。その事など俺自身が何も気にしていなかったので、すっかりと忘れていたのだ。

 顔をここまで堂々と晒して歩いていたのでもうバレバレである。ならばギルドに入ればもっと一層騒ぎは大きくなる事だろう。

 ならばここは一つ静かにギルド長の前へと行かねばならない。


「さて、光学迷彩・・・なんてな?そう言った技術も可能になるとは聞いた事が有るが、まだまだそれでも実現不可能に近い代物って話だったし。・・・でも、もしかしたら?」


 化学、科学。それらをどうやれば透明にでもなれるのか?いや、透明になるのではなく、周囲の景色と同化する?

 自分の身体に3Dプロジェクションマッピングでも投影して周囲の人間から違和感を与えないように、齟齬が無いような景色を常時映して溶け込む?


「魔法なら可能なのか?ソレを終始発動させて俺自身を景色の中に隠す?難しいけどやってみる価値はあるのか?」


 でも想像が上手く働かない。とは言え、光の屈折率や反射角度など、そう言った事がそもそも俺のスーパーな脳内で処理ができない訳じゃ無く、そこまでする必要性が今この場にそこまで深刻にあるのか?と言った部分で止まってしまっていた。

 おそらくは命の危険が差し迫っていたらきっとソレを魔力で、魔法で実現していたと思う。

 しかしこの場で、ただギルド長と会うだけでそこまでの事をするのはどうかと思ったのだ。

 俺は別に悪事を働いた下手人では無い。ならばこそこそと隠れる事に抵抗を感じる。

 寧ろ「ギルドよ、私は帰って来た!」と言わんばかりに堂々と面会を求めた方が良いのではなかろうか?


「しょうがない。ここは一つ知らん顔で真正面から受付嬢に申し出てみるか。」


 こうして俺は覚悟を決めて何事も無かったかのようにギルドへと入る。

 すると一瞬だけ受付嬢が驚愕の目をして俺を見たのが視界に入った。

 しかしそんな事は気付きませんでしたよ、と言った感じで俺はその目をカッ開いた受付嬢に近づいた。


「ギルド長との面会をお願いしたいのですが、今大丈夫でしょうか?」


 ただそれだけを伝える。コレで話は通ると確信していたから。

 なにせこの受付嬢、俺を見た途端に驚いたのだから事情も知っているし、俺がその「つむじ風」のメンバーだとも知っているはずだ。

 そうでなければそんなリアクションは取らないはずである。反応が無かったら無いで、それは本当に知らないか、あるいはポーカーフェイスなだけだ。

 そのどちらかすら俺の脳内レーダーは判断できていしまう程に超高性能である。どうやった所でそこら辺の所は俺の判断が間違える要素やら隙が無い。


 と言う訳で受付嬢はすぐに俺のこの言葉に「例の件」の話だと言う事をすぐに察して「お待ちください」と言ってカウンター奥へと消えた。

 そしてすぐに帰って来て「こちらへ」と俺をすぐさまに案内し始めた。

 コレにギルド内に居た少数の冒険者たちがざわめく。どうやら彼らは国からのお役人が来た事も、そいつらが「つむじ風」をターゲットとしている事も、そして俺がそのつむじ風のメンバーだとも知っていたようだ。


「アレが今回徴兵される奴らの一人か。変な格好だな?」

「またかよ。こうして優秀な冒険者がこのギルドからどんどん連れてかれちまうのはなぁ。」

「ギルド長も何やってんだか?こんな事が繰り返されたらここはやってけねーだろうがよ?」

「噂に聞いたんだがな?どうやら今回は副ギルド長が裏で役人と繋がってるって噂を耳にしたぜ?」

「あーあの、フクレとかいうふざけた野郎か。じゃあ今回はギルド長は苦々しく思ってるのか?」

「そりゃそうだろ?だってここの古株だぞ、つむじ風は。でも、いきなり新人を入れたって聞いて直ぐにこの展開は何かがあるのか?」

「おいおい、俺たちゃ精々国に目を付けられない様に静かにこの先も仕事を熟すだけだろ?国に召し上げられちゃ自由ってもんが無くなっちまうしな。」


 ザワザワと冒険者たちの会話を耳を澄ませて俺はよく聞いた。

 そしてどうやらおそらくだが、ギルド長がポカをやらかした訳では無いと察する。


(うーん?もしかしてこれって、そもそも俺がピンで最初から目を付けられてた・・・のか?)


 俺はこのギルドではバッドモンキーの一枚皮でやらかしていると言ってもいい。あとメルフェの実だ。その他の魔物の素材をここの買取所で買い取って貰っている。

 あの時は別にここまでの事になるとは思っていなかったし、副ギルド長のフクレの事も知らなかった。


「これは皆に謝らないといけないっぽいな。あーあ。でも、まあこうなっちゃったら仕方が無いか。できるだけこの都市で冒険者をやっていけれるように立ち回って、それでも駄目になったら出て行けばいいや。」


 俺にはワープゲートがある。なのでこの都市での活動を制限されようとも出ていく事は簡単にできたりする。

 なので俺はそこら辺を気楽に考えながらギルド長室へと入った。

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