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やっとの会話成立で話が前に進み始める、が

「敵にしたくない、もうさっきの騒ぎと今の目の前の出来事で充分に理解したわ。・・・もしかしなくても、貴方は誰の力を借りずとも村長の所に行けるのでは?」


「まあそりゃそうなんだけどね。そういうのはもうこれまでに幾らでもやって来たからさ。ここは一つそう言った事を抑えて手順を守るのは大事かなってね。忘れちゃいかんよなぁ。俺は蛮族じゃ無いんだからねぇ。」


「・・・ワレルのやった事はこの場で代わりに私が謝罪させて貰うわ。ソレとミニャルの事も。御免なさい。決して根は悪い者たちでは無いのだけれど。いえ、そんなのはこちらの勝手な言い訳ね。」


「まあそうだね。それじゃあ立ち話も何なので座って頂いて。さて、俺の方の自己紹介がまだだったな。遠藤と言う。よろしく。」


「改めて、メールトと言うわ。宜しく。それじゃあ、何から話しましょうか。」


「うーん、そうだなぁ。聞きたい事が多過ぎて何から尋ねたら良いモノか。うん、それじゃあ村の成り立ちとかを聞かせて貰えるかな先ずは。」


「成り立ち・・・言い伝えによればここは、この島は元々が一つの巨大な大地だったと言うモノですね。この大地に住んでいた者たちは神の怒りに触れる行為を実行し、滅せられたと。その生き残りが我らと言う話ですね。神の怒りは大地を海に沈めてソレまでにあった人の作りし物を全て処分し、それらが存在しなかったこの自然の部分だけを残したと。そこに集まった生き残りたちが細々と暮らして今も神の力を恐れ隠れ住んでいるのです。」


「なんか全然信じて無いって感じの説明だね。まあうん、分かった。えー、あー、後は・・・別に良いか。村長に会わせるのか会わせないかを聞けばいいや。」


「・・・今の所はまだ何とも言え無いですね。貴方の性格が全く読めませんから。でも、最低でも悪人では無いとは感じますが。」


 苦笑いでメールトは俺を見つめる。この場には俺とメールト、ソレとミニャルとアフロが居る。他の者たちは全員が解散して持ち場に戻ったらしい。


 俺とメールトの会話にミニャルもアフロも介入はしてこない。


 しかしアフロはいかにも「納得が行かない」と言った感情を隠そうともしない顔でコチラを睨んできている。


 だがミニャルの方はと言うと、すました顔で何を一体考えているのか分からない。


「では、こちらからも質問をしても宜しいでしょうか?貴方は何者で、何の目的があり、ここに?」


「俺は何者でも無い個人だよ。目的は、言うなれば観光、散歩だな。ミニャルといきなり遭遇してここまで連れて来られて、ソレで突然に村長と会わせるとか意味不明な展開になったなぁ。」


「ふざけるなよ!何が散歩だ!馬鹿にしているのか!」


 アフロが我慢でき無かったのか、そう叫んで来るけれども。


 俺は別にコレにどうと言った事も感じない。寧ろその怒りは順当だろうなと思うだけだ。


 アフロは言うなれば「井の中の蛙」と言った所か。この島、自分の生活圏以外を全く以って知らない、知る気は無い。世間が、世界がこの島の中だけ、了見が狭いのだ。


 それらを揺るがす案件が迫れば、これまでの安定を最優先に取ってその他の事になど気にも留めない。


 異物が侵入して来たとなれば心穏やかではいられ無くなる。


 自分の生活を脅かす存在が現れれば当然ソレを排除しようとする。


 そこに感情が乗るのだとすれば、怒りと言ったモノも含まれるだろう。


 アフロはその比率が「怒」に偏っているだけで。


 とは言え、ここまで偏っていると石頭になってしまって思考の柔軟性を失い融通が利かなくなる。


 物事への対処に冷静な判断が取れずに相応しくない答えを出してしまう事になる。


「黙っていてワレル。もうアナタ程度が解決できる域を超えているのよ。それが分からない?口を閉じて居られないのならば只の邪魔だわ。話に入って来ないで。会話が聞こえない距離まで離れて居なさい。」


 辛辣な言葉でバッサリとアフロを斬り捨てるメールト。


 しかしここでアフロは叫ぶ。


「そんな事は知った事か!」


 そして俺に斬り掛かって来た。椅子に座っているから避けられる事は無いとでも思ったんだろう。


 以前にアフロに襲われた時には俺がその攻撃を避け続けていたので、その時の印象をきっと引きずっているのだと思われる。


 座っている状態なら避けられ辛い。チャンスだ。そう考えての行動だったのだろうけれども。


「馬鹿じゃ無いのかなぁ。いや、バカなんだろうなあ。」


 アフロを魔力固めで動けなくさせた俺はそちらに視線の一つも向けずにメールトを見る。


「で、感想は?こいつはこんな事を言ってるけど?」


 メールトはここで左右に軽くゆっくりと首を振った。


「私は特段貴方の言った事を疑う気も無ければ、否定も拒絶もする気は無いの。だって、貴方がその気になればワレルだけ何て言わずに、この島ごと全てを消せるのでは無くて?そんな相手が口にする言葉、どうしたって受け入れるしかないわ。嘘を吐かれる謂れも理由も無い。そんなの信じるしか道は無いもの。」


 少し深めに溜息を吐いたメールトはその後にアフロの方を一瞥して再び溜息を吐き出す。


 そして俺に向かい直りこう述べた。


「村長に会って貰っても?」


「ああ、まあ、それで良いよ。最初からメールトと交渉できてればこんなに疲れなくても良かったのになあ。」


 そんなボヤキを溢して俺は椅子から重たい腰を持ちあげて立ち上がった。


 その後はアフロを置いてけ堀にしてメールトの案内に付いて行く。


 ミニャルもコレに同行していた。仲間外れはアフロだけ。


 魔力固めを解除してまた襲って来られても困るのだ。本当にこいつだけはもうこのまま二、三日放置で良いと思っている。


(そうやってもまだ俺の事を恨み続けそうだけどな)


 このアフロは俺との力量差を解からせられても、それでも俺へと憎悪を積み上げてきそうだ。


 直接にこうして敵わないのならば、裏でコソコソと汚い策でも巡らしてきそうだなと感じる。


 とは言え、今は村長との面会に集中していた方が良いだろう。


 どんな相手なのか全く俺は知らないのだ。誠実な人物であったならばこちらがストレスを感じなくて済むのだが。


 もしも相当に曲者な性格をしていたら、ソレは思い切り負担がデカい。特に俺の精神的な疲労の面で。


「・・・何だろうなぁ?村までやって来たけど、どれもこれもチグハグで頭の中がちかちかする錯覚が。」


 何ともまあおかしな光景だ。家が。


 まるで三匹の子豚でも見ているのかと思える光景だ。いやそれ以上だ。


 藁ぶきの家、木製の家、レンガの家、コンクリート?の家、タープ?と言われる様な見た目の家と。


「何でここまで・・・ウッドデッキがある家まであるんだけど・・・」


 木製と言っても掘っ建て小屋みたいなモノから、土台がしっかりと作りこまれたものまである。


「おかし過ぎない?住む家までチグハグ・・・と言うよりも、コレはバラバラって言った方が良いな。」


 謎が謎を呼ぶと言っても良い。これには驚きが隠せない。


 一体全体これはどうなっているのかと、流石の俺でもコレには困惑するしかなかった。


 これから会う村長に話を聞ければそれらを解消できるのかと思って素直にそのまま案内に付いて行くけれども。


 到着した目の前には、ソレは言うなれば日本家屋、と言ったイメージに近い建築物。


「なんでやねん!」


 これには思わずそう叫ぶ俺がいる。


「もうこうなると何もかもがおかしいだろ・・・ドラゴンがきっとゲラゲラ笑うパターンだぞ?頭が痛い・・・」


「ここからは貴方一人で入ってくれ。村長に会わせるなどと言ったのだが、ここからは私たちは中に入る許可を貰えていないんだ。」


「えぇ・・・?どう言う事だよ・・・」


 もう何もかもが訳が分からない。どういうこっちゃ?としか言い様が無い。


「説明をしたい所なのだが、会って貰えれば色々と分かると思う。」


「会っても解からんのじゃね?としか思えないねぇ。」


 そうは言ってもこの先へと事を進ませるにはもう俺が覚悟を決めるしかない訳で。


 そうして俺は玄関を開けて「お邪魔しまーす」と中へと入ってみる。


「どなたかいませんかー?村長に会いに来たんだけどー。・・・静か過ぎる、不気味過ぎる、どうなってんだよ・・・」


 人の気配が感じられない。今俺は魔力ソナーは使っていない。


 なのでこうして声を掛けてみたけれども。


「一応はマナーって言うか?モラルって言うか?そういうのを思い出していきなり内部を魔力ソナーで探ったりはしなかったんだが。返事も無し、誰もやって来る様子も無いとか怖いんだけど?ホラー?」


 靴を脱いで勝手に中へ上がると言った事もせずに玄関内部でずっと立ち続けるにも限界がある。主に俺の精神衛生上的に。


 しかし我慢でき無かったと言ってもだ。許可も無く家の中へと上がってそこら中を歩き回るのは幾ら何でもダメだろう。


 そんな気持ちをこの家の外観を見て思い出していた。この世界にやって来て久しく忘れていた事である。


(これからはもっとそう言った部分をちゃんと思い出して傍若無人にならない様に気を付けないとイカンよなぁ)


 そんな事を思った時にその声が俺の耳に入って来た。


「はいはーい、お待たせしたみたいで申し訳ありませんねー。・・・え?嘘?マジ?日本人?レッツサラリーマン?」


「・・・はい?」


 その人物は上下ジャージ、そこへ研究者が着ている様な白衣を羽織って眼鏡で、ぼさぼさ髪。


 女性と一瞬で判る胸部の膨らみで一掃に俺の頭は混乱する。


「・・・何?何なのこれ?会えば分かる的な事をメールトから言われたのに、余計に分からんのだけども?」


「いやいや、こっちも訳が分からないよ?でも、何というか、あぁ・・・日本を感じるねぇ。懐かしいなぁ。」


 俺も向こうも会話が噛み合っていない。絶妙に。


 だけどもここで相手の方が先に気持ちを切り替えた。


「お茶を出すからゆっくりと話をしないかい?私に用があったんだろ?いやー、客とは珍しい、とか言う表現よりも、コレって奇跡だよねぇ。」


 しみじみとそんな事を言い始めるその「村長」はどうぞどうぞと俺を家の中に上がる様に言ってくる。


「・・・受け止めきれない。この世界に来て一番、頭の中がぐちゃぐちゃだ・・・」


 仕方が無いだろう。相手は俺の見る限りでは「日本人」の女性であり、そして「日本語」を喋っているのだ。


 そう、同郷。


 この世界にはどうにも自分以外にも日本人が存在していたらしい痕跡は幾つもあった。


 だが、こうしてソレを目の前にすると頭の中が真っ白になる。


 遭遇する事になるなど思っても見なかったし、それこそここで?と言った感想で一杯である。言葉が出ないとはこの事なのだろう。


 しかしこのままボーっとしている訳にもいかずに俺は靴を脱いで村長から招かれるままに家に上がる。


 そのまま畳敷きの客間に通されて、座布団まで用意されて、お茶まで出されて、しかも湯呑。


「うーん、この。まさかの緑茶・・・」


 ちゃぶ台に乗ったソレを見て俺は驚愕する。


 急須に御盆も。ソレとやかんまで。


「お茶の御代わりは幾らでも言ってくれ。落ち着けるまではかなり時間が掛かるだろうからね、その様子だと。まあ、私も人の事を言えた立場じゃ無いんだなぁ、これが。本当に心底驚いているよ。もう二度と故郷を同じにする者と会えるとは思ってもいなかったからねぇ。」


 しみじみそんな事を言いながら「村長」はお茶を啜って小さく息を吐いた。


 俺もソレを見て少しだけ落ち着きを取り戻す事が出来た。


 ここで出されたお茶を一口飲んでより一層に冷静になる。


「あー、えー、それじゃあ自己紹介からで、良いのかな?俺は遠藤と言う。宜しく、村長さん?」


「ははは。村長ねぇ・・・そんな大層なモノでは無いのだけれど私は。まあ、良いかそこは。では、私は川村って言うんだ。宜しくね?・・・ぷふっ、アハハハハ!なんかこう言うのってホント、日本人って感じだよね。」


「あー、まー、言いたい事は分かる。」


 この何とも言えない空気感はやはり日本人でしか出せない。


 これが海外の人だったりするともっとフレンドリーに、そして大胆な物になるんだろうと言ったイメージがある。


「遠藤さん、お時間はお急ぎで?」


「いえ、幾らでも時間はありますので。・・・お互いに話したい事を纏めてから状況と情報の擦り合わせと行きませんか?」


「なら茶菓子があった方がより良いかな?糖分を摂取して頭の回転を良くしましょう。」


「あ、いえ、御構い無く。俺は遠慮しておきます。」


「そうかい?じゃあ私だけでも失礼して頂かせて貰おうかな。御客人が来ているのにはしたないかな?」


「えー、こう言っては何なんだけども、ここは別に日本じゃ無いから別に良いんじゃないかと。」


「ああー、そうなんだよねぇ。うん、ちょっとソコ、興奮していて忘れかけていたよ。それじゃあ菓子を持ってくるんで少し席を外させて貰うよ。」


 そう述べてから川村さんは立ち上がると部屋を出て行った。


「はぁ~、何をどう説明したら良いんだこりゃ?言いたい事も聞きたい事も頭の中でごちゃごちゃになり過ぎて纏まらないぞ・・・」


 こうして会ってみれば、ミニャルがずっと俺を村長と会わせようとしていた理由が分かった。


 あのアフロが俺の事を排除、或いは消そうとして来た事にもある程度の納得が行った。


 しかし、その二つがどうにか腑に落ちた所でそれ以外がどうしたって消化できない。


 これは川村さんの話を聞ければ、全部解消できるのだろうか?不安がある。


 そんな風に俺の頭の中が全然纏まらないままにその手に持つお盆に落雁を大量に乗せた川村さんが戻って来る。


「あぁ~・・・うん、私もまだまだ混乱が収まらなくってね。遠藤さんの方もその顔だと同じの様で。」


「・・・そうですね。話がこのままだと一向に進まなさそうです。どうしましょうか?日を改めた方が良さそうかな?」


「このままでも良いんじゃないかな?この家はお気に召さなかっただろうか?落ち着かないかな?」


「いやー、寧ろ懐かし過ぎると言うか、落ち着き過ぎると言うか。じゃ無くて、ツッコミ所が多過ぎてもう何が何やら・・・」


「まあ、そうだよねぇ。私はもう慣れてしまったから大丈夫だけど。ははは・・・」


 微妙で奇妙な時間だけが過ぎて行く。俺も川村さんもその後は一言もしゃべらずに黙々と、そしてウンウンと唸り合う。


 時折お茶を啜る音が響いて何とも言えない雰囲気だけが部屋の中に満ちる。


(気まずい訳じゃ無いけど。無為に時間を浪費しているって感じでも無いけど。そろそろ互いの身の上話を語り合う方が良いだろうなぁ)


 こうして先に覚悟が決まったのは俺の方だった。


「じゃあ取り合えず、俺の方から色々と説明をしたいと思います。互いに隠す様な事も無いでしょうし、気負わずに、愚痴を溢すって感じで軽く行きましょう。」


「ああー、お互いに日本人なんですもんね。こっちも隠す事なんて一つも無いですし、敵対する意味もありませんからねー。互いに持っている情報を共有した方が有意義でしょうし。はい、じゃあ聞きましょうか。」


 こうして先ずは俺の方の事情説明から話し合いは始まった。


 そこで俺はこの世界に来る前の自分の事を語った。つまらない人間だったと。


 そして突然にこの世界に来てしまった事も。魔法陣の事も語る。


「遠藤さん、定年退職?え?どう見ても変でしょ。だって若いですよね?」


「コレは俺も理由は分からんのですけども、魔力を扱える様になれればこの世界の人でも「若返り」できますよ?・・・いや、話が脱線しそうなので元に戻しましょう。今度は川村さんがこちらの世界に来てしまった経緯をお願いできますか?」


「え?魔力?そんな物が在るんですか?・・・ええ、ソレはまた後で詳しく聞きたいです。それじゃあ私の事、ですね?はい、良いですよ。それじゃあ、何から説明したら良いですかねぇ・・・うん、ある意味、貴方と同じと言えば、同じですね。私は頭上が光ったと思ったら、この森の中に居ました。歳は三十になった時ですね。独身彼氏無し。誕生日にホールケーキを購入して一人、家で自棄食いしてる時です。いや、もう言葉では言い尽くせない、良い表せない感情って物凄いですよね。頭の中が何をどうしていいのか全く纏まらない時間が凄く長く続いた事を覚えてますよ。その後はふらふらと森を彷徨っていたらここの村の人に救助されました。今考えれば運が良かった。下手すればこの島の生物に襲われて簡単に死んでたでしょうからね。」


「・・・ツッコミ所満載ですね。何とお悔やみ申し上げたらいいのか・・・」


「いえ、そっちも大概だと思いますよ?ドッコイドッコイでしょう?」


「いや、こちらに突然に移転してしまったってのは似て居ても、その後の展開は俺の方がまだマシと言えますよ。」


 俺はクスイと出会った事やその後の経緯を語る。まだこの世界に来て日も浅いと言った事も。


 コレには川村さんも「ああー・・・」と自らの方が酷いスタートだった事を知る。


 そして溜息を吐いた後は自身のその後を語り始めた。


「私の方はそうやって助けられてからもう二十年も経ちましたよ。村の人々に助けて貰ってこの島の調査もして「この島から出る事は無理だな」と。うん、そもそもそれなら、どうやって遠藤さんはこの島に来たって言うんですか?良く良く考えたらヤバいですよね・・・方法が思いつかないですけど。遭難?」


 どうやってこの島までやって来たのかと質問を受けるが、俺はその前に気になった事を逆に質問し返す。


「・・・いえ、ちょっと待ってください?二十年経った?女性に年齢を聞くのは失礼ですけども、今、お幾つ・・・と言うか、普通に五十ですよね?俺の事を若いって言いましたけど、川村さんって、歳を取っていないのでは?」


「ええ、その疑いがあるんですよ。見た目も体力も衰えない。異様なんです。でも、まあ、若さを保てるって言うのは良い事なのかもしれないんですけど。あ、でも、そのせいでここの村長なんて物を託されたのは三年前って言うね?もう滅茶苦茶でしょ?」


「無茶苦茶も何も・・・ああ、うん、お互いに余計に何もかもがツッコミ所が多過ぎて・・・時間が幾らあっても足りないですね、コレ・・・」


 結局はその後に頭の中の整理をする時間をまた設けてお茶を啜って互いに心を落ち着ける時間を取った。


 何がどうなってこの様な事態になっているのか?お互いに分からない事だらけだし、ソレを一々細かい部分まで理解し合う必要も無いのだけれども。


 それでも取捨選択して知っておかねばならない事、知っておいた方が良い事くらいは整理しておきたい訳で。


 だけども大事な部分は先に互いに知らせておくべきで。伝えておきたい訳で。


 なのでまだ頭の中は整理はしきれていないが先に俺の方から口を開いた。


「えー・・・一番大事な所を先ず決めておきませんか?こちらから先に言わせて貰いますけど、この村に対して俺は何らの敵意も害意も無いです。コレだけは確実なので俺に敵対して来ようとする奴等の事はそちらに抑えて貰いたいですね。この島には散歩でやって来ていただけでその他の意図は一切無いんですよねぇ。どうやらアフロ頭の奴にはそこら辺の所を全く理解されませんでしたけど。それこそこの村への過度な干渉もする気はありません。ここに長期に留まり続けると言った事も無いですね。自宅があるんで、そっちに帰りますし。余計なトラブルをこれ以上増やさない様にする為にも交流とか交渉は川村さんとこれからはして行った方が良いですよね。」


「ああ、ワレルがやらかしましたか。あの子は本当に昔から思い込むと酷く面倒でして。とは言っても散歩ですかぁ・・・いや、本当に何で?どうやってこの島に?いえ、それよりも先に言っておくべき事は、私も遠藤さんに対してのアレコレと言った不穏な感情や企みなどは立てていませんので安心してください。私から他の者たちへと遠藤さんにはちょっかいを出すなと言っておきましょう。好きな様にこの村を見て回って頂いて結構ですよ。色々とツッコミ所が多いのは御承知でしょうけど。・・・と言うか、自宅?自宅?そこからここに散歩に?移動手段・・・は?」


 向こうはやっぱり俺がどうやってここにやって来ているのかが気になるらしい。自宅と耳にして再び混乱している。


 コッチもこっちで気になる点はある。この村の住宅事情だ。それはバラバラ、様々な家が建っているのが何でなのか知りたい所ではある。


 けれども深い部分まで首を突っ込むのは思い止まっておく。ここで根掘り葉掘り聞いていたら時間が幾ら有っても足り無いだろうから。


 向こうも向こうで事細かい所までは追及をする気は無いと見えた。既に川村さんの方も今は冷静さを取り戻している。


 とは言っても流石に俺の自宅の件やら、この島に来た方法などはここで説明してしまっても良さそうではあったのでそこら辺をこれから実践して見せる事にした。


「えっと、百聞は一見に如かずって感じで、はい、コレ。」


「・・・まさか、これ、魔法です?CG・・・とかじゃ無いですよね、当たり前ですけど。もしかしてこれを潜ると・・・?」


「まあこの島までは最初に空を飛んで来たんですけど。」


「空飛べるんですか・・・うわぁ、チートですか。ズルいなぁ。私も魔法が使える様になったら同じ事できますかね?」


「ソレは分からないですね。そもそも、これまでにそう言った発想は無かったんですか?」


「・・・あー、ありました、ありましたけど、色々と試してみても全く使えた事は無いです・・・」


「じゃあ逆にですけど、村の家々はどの様に出来上がったんです?そんな魔法も無しで?」


「そりゃもう、そう言うモノを再現するだけの時間と人員と労力を掛けてですね。だって二十年もここに居ましたし、色々と試しましたし。ソレを建てる為の道具なども作りましたし。」


「刃物関係も?」


「そうですね。」


「・・・バランス悪いとか思ってこなかったんですか?だって、服がアレで・・・洗練された刃物持ってるとか。」


「えー、まー、そう言われましても。家づくりの方が楽しくなっちゃってる時期が大半を占めていまして。刃物関連の方は木材を整える為の道具としか思って無くて。それでいて本格的にこの家の裏にソレ関連の刃物製作の作業場まで作ったりとかしてコレにもかなり時間を掛けてましたから・・・」


「そう言った知識と技術はどうやって?そもそも持っていたんですか?」


「・・・それがちょっと怖いと言いますか。そう言った諸々って、私のモノじゃ無いんです。頭の中に突然に浮かんで来たモノで。超常現象と言うか、コレ、神様とか言った存在の仕業ですよね?」


「・・・そう、としか言い様が無いですね・・・」


 俺も俺で魔法なんて物が使えるし、魔力など自由自在な訳で。


(考えてみれば俺も同じか。形が違う、現れた場所が違うってだけで)


 川村さんは俺とは違うが、俺と同じなのだ。


 妙な事に巻き込まれた者同士と言うヤツである。


 俺たちをこの世界に招いた存在が居ると仮定して、さて、そいつは何をさせたくてこの様な事をしてきたのか?


 世界の変革でも求めたのか、はたまた何も考えてはいないのか。


 川村さんと出会った事で俺は今更にそんな事を考える。


 そんな答えの出ない思考に沈みそうになったが、ここで頭を振って無理やりそれを中断する。


「この島ってガラパゴスですよね?ヤベー生物ばっかり生息していて良く今まで無事でしたよねここの村って。あれですよね、水晶なのか、ダイアモンドだか分からないあの塊があるから村が守られてるって事で合ってます?」


「ああ、村の言い伝えによれば、アレは古代人が残した物らしいです。原理も理屈も仕掛けも私にはさっぱりで。だけどアレが存在してるおかげで村の周辺には凶暴な生物が近寄って来ないから、存続できていると言う事らしいです。」


「俺の姿が見えている事もソレのおかげって言う事なんですかね?」


「はい?」


「今俺は自分に魔法を掛けているんですけども、見えてますよね?光学迷彩を魔法で掛けていて本来なら俺の姿を認識できないはずなんですけどね。」


「・・・へ?」


(どうにも訳の分からない物凄い効果を出しているらしいなぁこの分であれば。俺の魔法が無効化されるとか言うなら、何で魔力固めは使えるのかが分らん)


 川村さんのこの反応で、この世界にはやはり意味不明、理解不能、摩訶不思議な事がまだまだ大量に有る事を俺は再認識させられた。

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