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探すの大変

 この後の事を何も考えていない状態だ。やらねばならぬ事は分かっているのだが。


「ワークマンはまだ一段落していないだろうからお邪魔しに行くのもな。そんな気遣いするのは今更か?あー、先にドラゴンをここに呼ぶ方法を考えた方が良いか?俺がドラゴンを探しに行くのと、向こうがこっちに来る様に仕向けるのと、どっちが手っ取り早いかね?」


 悩むより生むが易し、今まさに俺はその状態になっている。

 そんな俺に対してここでレストが口にした一言で行動方針が決まった。


「その「どらごん」という者は一体どういった人物なんだ?エンドウがどうやら頼りにするほどの存在であると言うのは何となく分かるのだが。君以上に強力な存在なのか?」


「あー、そうだよなぁ。そう思うよなぁ。うーん?なんて言えば良いのかね?同格?いや、向こうの方がこの世界の「理」を知っているんだよ。だから頼りになる。頼らざるを得ない。俺は力ばっかりでっかくなっちゃって、その「理」ってのがイマイチでね。そうか、ここにドラゴンを呼ぶか。そうしよう。」


 俺はレストにドラゴンを紹介するつもりになった。さてこうなるとその呼び出し方法が問題だ。

 アイツにここの存在を知らせる方法があれば良いのだが。今どこをほっつき歩いて、いや、あいつは空を飛べるので何処をどう飛び回っているか分からない。

 そんな奴に対して「ここだ」と興味を引かせて誘き寄せるという方法を取るならどの様な事をすれば良いのかサッパリだ。


「もういっそのことでっかい魔力を空に打ち上げてあっちがそれを感知するのを期待するか?・・・うーん?この方法は何だか問題が大きいような気がするなぁ?」


 レストにもちょっとだけどうしたら良いかと相談したのだが「私にできる事など無さそうだ」と早々にお手上げと言われた。曰く。


「私はエンドウ程に魔力の扱いを出来ないし、そもそも保有魔力も君程、信じられないくらいに膨大では無いからな。エンドウ、自分の魔力がどれ程のものとなっているのか、自覚は無いのか?」


 そんな事を言われる始末だ。その俺の持つ魔力と言う話をこれからドラゴンに聞きたいのであって、俺自身が自分の事をちゃんとわかっていたら今こうしてドラゴンを呼ぼうなどと言う事に頭を悩ませてはいない。


「しょうがないか。魔力ソナーを出来るだけ広げてドラゴンを探してみるか?何処まで広げられるかは分からんけど。・・・あ、あいつが空飛んでたら平面水平で広げても捉えられ無くないか?上方面へ展開していたとしても、どれくらい高度を上げて飛んでいるかで捕捉できるかできないか決まるな?うわー、面倒だコリャ。」


 レーダー感知できる範囲をこれだと馬鹿みたいに大きく取って莫大に広げて行かないといけなくなる。


「アイツ何処までも面倒を押し付けて来るな・・・しょうがねぇ、本当に、しょうがねぇ・・・」


 俺が大きく溜息を吐くのをレストは苦笑いしながら眺めてくる。

 コレをやるにしてもどうも今直ぐにヤル気にならない俺は一旦休憩を挿む事にした。

 何せ何処まで広げられるモノなのか、俺もそこら辺を全く把握していない。

 それにどれだけの魔力量が必要になるのかもさっぱりだ。今の自分の異変をまだ何も理解できていないのにそんな事をしても良いモノかどうか。


(いや、今更だなこれも。やる事為す事いつもいつも大体は今更な事ばっかりだ)


 気合を入れ直す時間はちょっと長めに取った。コレができないと結局は話が先へと進められないのだ。

 ワークマンに相談を先に持ち込むと言う手もあるのだが、結局ドラゴンをここに呼び出して協力を求めると言った事は必ずやらねばならない事である。

 良い加減もう自分の事をちゃんと解っていい頃合いだ。良いはずなのだ。

 でもドラゴンが前回にちゃんと言ってくれずに「はぐらかした」ので今回はちゃんと意地でもそこら辺を聞いておかねばならないだろう。


(不安になるじゃねーか。とは言え、俺の命に関わる事だったらきっとドラゴンはもっと真剣に話をしてくれてるはずだろうからそこまで問題じゃないのかもしれないが)


 椅子に座ってお茶をウンウン唸りながら飲みつつ苦い顔の俺。コレをレストは何も言わずに黙っている。


「さて!やるか!今日中に終わらせちまおう!・・・あ、いや、もし俺たちの居る所から滅茶苦茶離れた所にドラゴンがいたりすれば一日じゃ終わらん可能性があるな・・・と言うか、今日中に見つけられない可能性も大いにあるじゃないか・・・」


 気合を入れて立ち上がったのに変な所に気が付いた俺は気力が抜ける。

 けれどもやると言ったからにはもうここから行動を起こさねばもっと時間が無駄になるだろう。

 無理矢理に俺は脚へと力を入れて立ち上がると外に繋がるワープゲートを出す。


「じゃあちょっとやってくる。」


 俺はそう言ってヌシの間から地上に出た。

 さてこのままいつも通りに魔力ソナーを広域に拡大するだけ。しかし今回は規模が違う。

 この大陸?をくまなく探すつもりで広げないとならないのだ。しかも上空にまで。


「ドーム型?はちょっと無駄が多くなりそうだが。うーん?最初は地上をくまなく調べて、そこからジリジリと上空に押し上げて行った方が良いか?」


 幾つか広げる形の候補を上げて悩む。


「良し。じゃあ先ずは一回いつも通りな感じで広げて行ってみるか。」


 俺はやっと魔力ソナーを広げていく。どんどんと。どんどんと。だけど途中で俺の中に入ってくる情報が過多になって来て処理が大変になってくる。


「あー、余計な情報をシャットダウンしないと駄目だ・・・頭痛くなっちゃうなコレは。」


 俺はどうしようかと一端広げるのを停止する。それでももう俺の魔力ソナーはここから王国まで届く距離の範囲まで広がっていた。。

 ちんたらと広げていると時間ばかり浪費するので一気に拡大速度を上げていた。

 でもそのせいでいっぺんに脳内に魔力ソナーに引っ掛かったあらゆる情報がそのままの塊でぶち込まれたのでその処理が追い付かない。


「ドラゴンの魔力を感知するだけで良いんだから・・・あいつはこの範囲内にはいない、か。じゃあもっと広げるか。」


 俺は円状に魔力ソナーを広げて行ってはいるのだが、一向に魔力が減らない。俺の中の。


「やっぱどっかおかしいな俺の身体。これだけの広範囲に魔力を出してるのに。幾ら薄く引き伸ばして放出してるからって言ってもな?相当に広い範囲まで延びてるから相当な量が使われてるはずなんだよ。」


 頭はドラゴンの魔力を感知する事のみに集中はさせているが、それでも思考の端っこでは自分の身体の心配をしていた。


 そんな思考をしている間にも何処までも伸びる魔力ソナーは俺がまだ行った事の無い場所にまでもうとっくに到達している。

 しかしドラゴンを感知する事だけに脳味噌を使ってその他の情報はカットしている今はそうした土地土地の情報は脳内に残らない。入って来ない。


 そしてとうとう捉えた。どうやらどこぞの海岸線に居るらしいのだが。


『おーい!ドラゴン!ちょっと来てくれないか?聞きたい事があるのと、協力して貰いたい事がある』


 俺の魔力をドラゴンに繋げる。その一瞬だけで短く用件を伝え魔力ソナーを消した。


「コレで多分アイツは来てくれるだろ。恐らくは俺の居る場所もちゃんと把握できてるだろうし。」


 後は時間だ。ドラゴンがどれくらいでこちらに来るかは分からない。

 さて、何故メッセージだけ伝えて魔力ソナーを直ぐに切ってしまったのかと言うと。


「疲れた・・・これかなり頭の負担がデカいな。途中でドラゴン以外をシャットダウンして無けりゃもっと頭ガンガンして頭痛が酷かっただろうな。」


 コレである。魔力を使って脳の情報処理力を上げられる事は上げられるのだが。それらの解析した情報を受け入れられる精神力、器が俺には無い。

 余計な事に構っている余裕が無かったしそれらの膨大な情報に気を取られて肝心のドラゴンを捕捉でき無ければアホらしい。

 幾らドラゴンへと情報を絞っていたとは言え、それでも広げる範囲が広過ぎて結構精神的負担が大きかった。

 何せどんなにソナーを拡大して行っても肝心のドラゴンが結構な時間見つけられなかったのだから。


 俺はリクライニングチェアを出して座り全身の力を抜く。

 ドラゴンが後どれくらいでここに到着するかは分からないが、恐らくは今日中にでも来てくれるだろうと予想している。

 まあ、待つ以外に今の俺にできる事が無いのでゆっくりと疲れを抜く時間を確保しているだけだ。

 俺は一度大きく背伸びをしてから深呼吸を一つして何も考えずに目を瞑った。


 そのまま待っていたのだが、ようやくと言って良い時間、夕方になってドラゴンはやって来た。


「急にどうしたというのだエンドウよ?珍しいでは無いかお前から私にあの様に連絡をしてくるとはな。」


「おう、久しぶり。まあ座ってくれよ。じゃあ早速聞かせて貰いたいんだけどさ。俺の身体、魔力って今どうなってんの?お前は分かってるんだろ?俺は全く理屈も理由も分からんから、どんな変化が出てるのか自覚ができないんだよ。はぐらかさずに教えてくれ。」


 俺が出した椅子に座るドラゴンは溜息を一つ吐いた。そして俺を睨む。


「お前は何処まで鈍いのだ?いや、何故北の町であれ程の事をしておいて自分の事が何も分からんのだ?考える事自体をしていないなまさか?良く自分の中を観察すればおのずと分かるだろうに。」


「だから教えろって。回りくどいのは要らないんだよ。ハッキリと言ってくれ。」


「・・・エンドウ、お前は魔力を何だと思っている?」


「はぁ?今更何を言ってるんだ?そりゃお前・・・あら?色々と何だか説があってどれもコレもって感じで・・・おや?」


 確か俺が教わったのは生命力の神秘だとか、神様の力の一端だとか、この世界に満遍なく広がる未知の力だとか?

 説が幾つかあって、しかしまだハッキリとそれらにケリがついていないと言う事だったか。


「まあ私も難しい事は言えんがな。感覚と言うか、本能で理解している事だから言語化をするのは無理な部分がある。だが、一つ言えるのは、エンドウ、お前の持つ魔力が既に「世界」と繋がってしまったと言う事だ。全く、私もまだその域にまで達してはいないというのに。何処までお前は行くつもりだ?」


「・・・何言ってんだお前?は?世界が、何だって?繋がる?俺が?全く言ってる意味が分からんのだが?」


「そうだろうな。その様子だとそんな感じだと思ったよ。魔力とは何か?と言った部分を決めつけていないお前は無意識に世界と自分を繋げているのだな。いや、寧ろ今もお前は自身の中の魔力を高め続けているな?どうやらソレを自身の内に秘めて外に出ない様にしてあるようだが。それが余計に世界とお前を繋がるのを早めたのか。エンドウの「中」に世界と繋がる「門」が既に形成されている。その門から今も世界へと魔力が溢れて行っているぞ?駄々洩れだな?」


「全く言ってる意味が分からん!ソレは俺の健康を害したり、放置してるとめちゃクソ悪い事に繋がるとか言った事は無いのか?そこだけちゃんと聞かせてくれ。」


「お前は何も分かって無いのか。私が辿り着こうとしている場所にお前は先に立っているのに・・・」


 溜息をつくドラゴンに俺はもう一度ハッキリ言えと迫るとドラゴンは。


「大丈夫だ、問題無い。コレで良いか?別に嘘では無いぞ?エンドウの健康に影響は無い。・・・私はまだ「我」が強いのだな。お前くらいに能天気になれれば私もそこに直ぐに辿り着けるようになるのかね?」


「おい!何だか俺の事馬鹿にしたか今?まあ、良いや。健康第一!元気が一番!何がどうなってるのか正直分からんが。死なないのであれば問題無し。じゃあ次な。」


「まだあるのか。そう言えば協力してくれと言っていたのだったな?で、なんだ?」


 会話を続けていたらもう辺りが暗くなってきてしまった。なので続きはダンジョンの中でと言う事で俺はワープゲートを出す。


「相変わらず妙な事に毎度の事絡まれておるのか。いつもいつも面白いなエンドウは。」


「やっぱりお前、俺の事馬鹿にしてるな?いや、まあ、この世界の事を知らないって意味ではお前に散々馬鹿にされても言い返せないが。」


 そんなやり取りをしながら俺とドラゴンはヌシの間に移動した。

 レストは椅子に座って力を抜いてリラックスしていたのだが、ドラゴンを見るなり目を見開いた。


「え、エンドウ?その、なんだ?ドラゴンと言うのは、その・・・」


 どうにもレストに脅えが見える。コレにどうにも不思議に思って俺はレストに尋ねる。


「おい、どうした?いかにもこいつがドラゴンだけど。そんなにビビらなくても良いぞ?見た目が綺麗過ぎるのは、まあ、慣れろ。見た目とは違ってこいつの中身はスットボケ野郎だ。別に尻込みする必要無いぞ?」


「エンドウ、君は何という相手を連れて来ているんだ・・・」


 レストの様子がまだおかしい。何を感じてこの様に怯えているのか?


「ハッキリ言えよレスト。何がそんなに怖いんだ?おい、ドラゴン、レストに何かやったんじゃ無いだろうなお前?」


「心外だな?私は何もやっておらんぞ?心当たりが無い。どうして私を見てここまで怯えるのだ?初対面だろうに?今は魔力を抑え込んでいるからこうも引かれるのはどう考えてもそれが理由とは違うな?」


 ドラゴンは首を傾げる。何もしていないのに怯えられる理由が分からないと。

 このドラゴンの様子を見てここでやっとレストは理由を口にした。


「私がまだ駆け出しの頃だ。この気配は感じた事がある。よく覚えているんだ。姿形までは見なかったが、死を感じさせる力の波動を感じて大慌てでその場から逃げ出した記憶だ。」


「おいドラゴン、お前昔なんかやったのか?」


「いや、いつの時の話か全く分からん。記憶に無い。どうやら見た感じ思い違いや勘違いと言った様子は見られんな?なら私だったんだろう、その力の波動とは。だが、何かそれらしい事をした覚えが私には無いからなぁ?いつまでも怯えられたままではこちらがモヤモヤしてしまうな。」


 俺はここで夕食を摂って一息入れようと言って飯を作り始める。レストのビビり具合は時間が解決するだろう。

 何せドラゴンは別にいきなり暴れたりする奴じゃない。話せば分かる奴だし。

 そうとなれば腹ごしらえをして一端落ち着けばレストの怯えも止まるだろう。

 俺はレストに準備の手伝いをしてくれと頼んで意識をドラゴンから離すように仕向ける。


 ドラゴンはドラゴンでこのヌシの間を歩き回って「ほうほう?」などと言いながら見物をしていた。

 そんな様子を料理しつつもレストは視界に入れて段々と肩の力を抜いていった。


「じゃあ出来上がった事だし、夕食を摂りながら紹介をしちまおうか。改めて、こいつがドラゴンだ。こっちはレスト。んで、あー、何と説明したら良いかね?いや、別にこの場で無理に説明しないでもいいか?」


 俺は食事をしながら改めてドラゴンをレストへと紹介した。

 だがドラゴンは別に何らソレを気にする事無く食事をし続けてレストの事など無視だった。

 モグモグパクパクと食事を続けるドラゴンに拍子抜けでもしたのかレストの身体に残っていた僅かな緊張はそれで無くなった。


「初めましてドラゴン殿。私はレスト。このダンジョンのヌシになってしまった者だ。」


 この言い方にドラゴンがピクリと一瞬だけ止まった。そしてその口が食べる事を止めて言葉を紡ぐ。


「珍しい事だ。偶然にも取り込まれてしまったのか。それにしてもどうにも精神の崩壊が見られんとは。増々珍しい。と言うか奇跡に近いか。非常に貴重だ。あり得んと言っても良いくらいにな。」


 ドラゴンはゆっくりとそう言って再び食事を続け始めた。


「と言うか、お前食い過ぎなんだよ!もうおかわりは無しな!俺たちの食う分までお前に食われちゃ堪らねえよ!?」


 少しだけ多めに食事を作っておいた事が功を奏して俺とレストの分は残ったが。ほぼドラゴンが平らげてしまった。


「何だ、ケチ臭い。と言ってもまあ充分に腹は満ちた。で、エンドウ、協力して欲しい事とはいったい何だ?」


「お前が勝手に話を先に進めるなよ。俺たちはまだ飯食ってる途中だっての。もうちょっと待て。せっかちめ。」


 そうやって先に食べ終えたドラゴンがいきなり本題をブチ込もうとしてくるのを俺は止める。

 そうこうして食事を終えた俺は水を一口飲んで溜息を一つ吐いてからドラゴンへと質問をした。


「ドラゴン、このダンジョンを他の場所へと移したいんだが、可能か?可能なら協力してくれ。」


「ん?そんな事か?ならば一度このダンジョンを外に出してしまわねばならんな。異空間の中に在るままでは移動はできん。私の見立てではどうにもここは元々何かの建物が取り込まれてソレが元になって形作られているだろう?ならば外に出してしまえ。そうすれば簡単にエンドウなら魔力で丸ごと包んで別の地に移動できるだろう。それで?何処に移すかは決まっているのか?」


 どうやらこのまま放っておいてダンジョンを外に出現させてしまえば後は簡単だという。

 だがここで俺は全くまたもや何も考えていなかった。移動先だ。


「あー、そうかー。まだ何処に移そうかは考えていなかったな。と言うか、下見もしないと駄目だな。どう言った所がいいんだろうなぁ?ドラゴン、どっか良い場所ありそうか?世界中を見て回ったんだろ?」


 俺の言葉にドラゴンは呆れたと言った顔をする。


「そんな事まで私に頼るとは。そもそもだ。ここのヌシはレストなのだろう?ならば決めるのはお前では無いだろうに。」


「いや、許可は取ってるんだよ。俺が移動させられるならってのは了承済み。どっか気候が落ち着いていて静かで余計なアホがやって来ない場所に移したいんだが。どっかないのか?」


 余計なアホと言う部分にドラゴンはどうにも引っ掛かりを覚えるようで。


「面倒事か?エンドウは何かと面白い事をするが、厄介事も一緒に抱えるのが好きなのか?」


「冗談も程々に言ってくれ。落ち込んできちゃうだろうに、そんな言い方は。好きでそんなモノを抱え込もうとする奴はいないだろうが。」


 ここでレストが俺とドラゴンのやり取りに笑う。


「ぷっ!はははは!ドラゴン殿、私からもお願いする。何処か良い場所は無いだろうか?人が来ない場所という条件だけでも構わないのだ。どうにもこのままこのダンジョンをここに残しておくと色々と問題が多くて。それをどうしても、とは言わないのだが、回避しておきたいのだ。この通り。」


 レストは頭を下げてドラゴンに願い乞う。コレにドラゴンがやっとうんうんと候補を上げる為に悩み始めた。


「おい、何で俺が言ってもそう素直になってくれないのにレストだとすぐそうなるんだよ?お前、俺の事嫌いだな実は?」


「多少は嫉妬しているな。ちょっとくらいは意地の悪い事をしてやりたいと思うくらいにはな。」


 どうやらドラゴンは自分がまだ至っていないと言う極致に俺が到達している事に納得したく無いらしい。

 俺はそんな妙な状態になっている事に対して自覚も理解も無いのだが。それが余計にドラゴンはイラっとするらしく。


「次に何か私に助けを求めた時にはちゃんと代金は戴くぞ?」


 そう言った後にドラゴンは一つ良い所を思い付いたのか「おっ?」と漏らしてその場所の説明をし始めた。

 その話を聞いて悪くないと思った俺はレストに視線を向ける。するとレストも一つ頷いてコレを受け入れた。


「ならそこにしようか。で、どっちの方角なんだここからは?」


「ハテ?どっちだったかな?偶々見つけた場所であったからな。どの方向になるか分からん。」


 ドラゴンはあっけらかんとそんな事を口に出す。それに俺はツッコミを入れる。


「おい、ドラゴン、また俺に対して嫌がらせか?分かってて言ってるなら容赦しねえぞ?」


「この様なつまらん事で嘘は言わん。本当に偶然視界に入っただけで本当にどこらへんか迄は覚えておらんわ。」


 ここで今日の所は話を終わりにする。結局本当にドラゴンはその場所を気にも留めていなかったと言った感じで記憶の隅にあった物を思い出しただけであり、それ以上の情報は無し。

 結論俺がソレを魔力ソナーで探すか、或いはドラゴンがその場所を見つけてくるかのどちらかと言う事に。

 ドラゴンは今日の所はダンジョンで寝ると言う事で出しっぱなしにしてあった布団に潜り込んで即座に寝てしまう。


「いつもこいつはマイペースで勝手に・・・まあ、良いか。今日は一応は肝心な情報は分かったしな。」


 俺もさっさと寝る事にした。どうせ今日はもうこれ以上のヤル気が出ない。

 ドラゴンを見つけ出すのに結構な労力を費やしたので頭の疲労が激しい。

 コレで例の場所を探せと言われても断固拒否をする。急いで見つけないとならない事では無いので無理をする理由は無い。


 こうして翌朝。俺は充分な睡眠が取れたようで頭の疲れも今は無く快調だ。


「・・・でもなぁ?肝心の俺の状態の件が全く俺自身で理解できて無いってのはどうなんだろうか?」


 昨日は自分の健康や命に別状は無いとドラゴンに言われたから半ば無理矢理に納得はしたのだが。


「今日は例の場所を見つけるのに俺がまた魔力ソナーを広げないといけないかもしれないんだから余計な事は考えない方が良いか。」


 俺はさっさと起き上がって朝食の準備を始める。ドラゴンにその場所を見つけさせるためにはどうやって言いくるめれば良いかを考えながら。

 正直言って昨日の様に魔力ソナーを拡大していく方法はやりたくない。頭が疲れる。本当に疲れる。

 なのでドラゴンにその場所を見つけた時の事を思い出させる事が俺にとって一番良い展開だ。


「ドラゴンの頭の中を魔力を通じて覗くか?脳内シアターをアイツに繋げられると良いんだけど?」


 以前に俺はドラゴンから「同格」と言われている。なのでもしかしたら魔力をドラゴンへと繋げる際に必要な魔力がより一層膨大になるという事も有り得るかもしれない。

 俺からして見れば同格という相手に対して魔法を使うと言う点で抵抗感とか、必要量とか言った事はどの位になるのかと言うのが全く分かっていない。分からない。


「この世界で出会った存在はドラゴン以外は全部俺以下って感じだったもんなぁ。俺よりも格上とか出てきたらどう対処すれば良いか分からん。それこそ神様か?」


 傲慢と言ってしまえばそれまでだ。だが事実である。驕っているつもりは無いのだが、現実が俺にこの様な言葉を言わせる。


「何をぶつぶつと言っているのだ?ふむ、今日はどうするのだ?先ずはこのダンジョンが外に出なければ話が進まんだろうに?」


 ドラゴンが起きて来た。そして一言目にはダンジョンの件を口にする。


「ん?いや、ここはもう自然とあと一日か、一日半くらいで外に出るぞ?それまでは待てば良い。今日はドラゴンの言った場所を先に見つけておいた方が良いな。」


「何だと?このダンジョンが外界へと出る正確な所までエンドウは分かってしまうのか?私には後もう少し、と言った程度にしか判別が付かんのだが?昨日はこの部屋を通して全体を観察しては見たが、一日程度で外へと溢れてしまうと言った感じは受けなかったのだが?」


 どうにもドラゴンですらダンジョンの様子は正確に把握していないと言う。


「ドラゴンはこのダンジョンに魔力を広げて中を見ていないのか?・・・ん?やってみようと思ったけど抵抗感が高くて難儀して途中で止めた?ソレって何かしらの理由とかあるのか?ん?やけに妙な魔力を感じた?ソレが原因?なんだよ?その妙な魔力って?・・・あ、俺の?」


 どうやら俺が一度ここのダンジョンを「魔力固め」で抑え込んだのがどうやら原因らしい。

 コレがどうにも妙な作用をしてドラゴンの魔力がダンジョンへと浸透して行かなかった様だ。


「エンドウはやはりおかしいな。私の知る魔力の扱い方ではこの様な事が起きると言うのは考えずらいのだが?しかもお前が「世界」と繋がっていると言う点も交えて言えば余計に「あり得ん」と言いたい。」


「おい、俺をおかしいとか言うな。俺は・・・普通とは言えないのかもいれないけど、おかしいと言われる程でも無いはずだ?・・・自分で言ってて何だか虚しくなってきた・・・」


 結局の所、俺はそもそも最初からこの世界に居た存在では無かった。

 その観点から言えば最初から「おかしい」存在だ。その事に思考が帰結して俺は落ち込んでしまった。

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