2、私の死因
ちょっとごちゃっとしちゃったので、この辺あとで修正するかもです。雰囲気が伝われば・・()
・・・受け取った数日後、ものの見事にはまり、一か月程度で全てのシナリオ・スチル・イベントを回収してしまうくらいにのめりこんだ。
なるほど、後輩の言った通り面白かった。特にゲーム性がいい。
主な乙女ゲームとしての醍醐味と呼べる恋愛シミュレーションという意味合いでは、では主人公の立場は略奪愛を行ったが故に少し不安定で、ライバルキャラクターの邪魔を受けたり、自分が略奪される側になったりなど、味わえるシチュエーションは多岐に渡ると言っていい。
そして先程言った、ゲーム性。これはキャラクター育成というある種ゲームとしては一般的な要素を当然盛り込んだうえでの、乙女ゲームとしては異例と言える「ターン制バトル」のすばらしさ。尚キャラ育成については今回割愛する。
プレイヤーはある程度攻略対象キャラクターに接し親愛度というポイントを貯める、その親愛度が一定以上になると「ガーディアンの証」というアイテムを渡すことが出来る。証を渡すと自身のアイテム内に渡した相手の絵が描かれたカードが具現化されて、ゲーム内にときおり発生する戦闘イベントのときにそのカードが使えるようになるのだ。
さて、ターン制。
アクションを犠牲にしたことで爽快感などは薄れるものの、代わりに得たものは高い戦略性が求められるゲームシステムのこと。
・・・とは謳うものの、実際はゲームによって呼称は異なるが、「素早さ」を上げることこそが勝率を上げるゲーム。つまり、敵のターンが回ってくるより早く自身の行動ターンが回ってくれば先制攻撃が出来るということ。敵のターンが1回回ってくる前に、自身が行動ターンが2回3回と回ってくれば有利になるのは言うまでもないだろう。
ここまで聞くと、攻撃が最大の防御ならぬ素早さが最大の防御になってしまって面白味がなさそうではあるが、しかし戦略性が求められるのは事実だ。
例えば、敵の行動が1回回ってくるまでに、自身の行動が2回回ってくるとしよう。
この場合、確かに有利だ。有利だけれど、もし敵の防御力より自身の攻撃力が劣っていたら、ターンが2回回ってこようとダメージは与えられないのだ。逆もまた然りで、火力はあったとしても、防御力が無ければ敵が2体以上だったときに一撃で殺されてしまいゲームオーバー。
そして重要なのは、パーティの編成。
たまにキャラ4体で出撃するクエストを、1体で行ってクリアしてしまう猛者――所謂縛りプレイを嗜む人たちもいるが、大多数は推奨人数に従ってゲーム内キャラを編成するだろう。
その際に、火力が出るキャラクター4体で行けばいいというわけではない。先程言った、敵のターンが回ってきた瞬間に範囲攻撃で全滅や、敵の中にはデバフと呼ばれる自分のキャラクターたちの性能を落とす行動をしてくることへの対策や回復を行えるキャラが必要になってくる場合もある。
何より奥が深いのは、これらのことを決められたパターンでしか行わないAI相手ではなく、ゲームによってはプレイヤー同士が操作する対人戦がある。相手の編成・キャラ特性・相手の戦術や思考などを考えなければならず、一歩間違えれば敗北する。
もう一回言う、奥が深い。
ここまで語ったことからお察し頂けるとは思うが、このゲームにのめりこんだという生易しいレベルではなく、もはや縛りプレイを始めるレベルでやりこんだ。廃人である。
もとからターン制を採用するゲームなどはジャンル問わず結構好きではあったが、とはいえそれが理由ではない。しいて言えば、縛りプレイが必要だったのだ。
制作会社としては、このゲームの売りは略奪愛というテーマである。その要素が作品を盛り上げるための要とするために、ゲームクリアに「略奪愛」がほぼ確実に絡むようなシステムに仕上げられた――先に言った「ガーディアンの証」によって。
ガーディアンの証は、好感度が一定量ある相手に渡すことで渡した相手が自陣の操作キャラクターとして育成や編成などが解禁されるアイテムであり、複数キャラクターに渡せるようになっている。最大数は4、つまり最大4キャラ操作して各戦闘イベントをこなしていく。
操作キャラが多ければ有利なのは当たり前の話なので、プレイヤーはゲームクリアのために当然攻略対象それぞれの好感度を上げ証を複数渡すことをほぼ強いられる形になるが、実はこの証、複数渡した時点で「嫉妬」というステータスも解禁されてしまう。
その、「嫉妬」というステータスこそ略奪愛という本作品の目玉要素を成り立たせるシステムだ。
一般的にこの手の恋愛シミュレーションゲームのプレイヤーは、俗に言う「推し」という見た目やパッケージの説明でよさそうなキャラクターを選んでメインに攻略していくことが一般的である。そして攻略していくためには、行動を共にしたりプレゼントをしたり、各種イベントのパートナーに指定したりして好感度を上げていく。
しかし、証を渡した相手が複数いると、その都度好感度が上昇したキャラクター以外のすべての証所持者に嫉妬という数値が一度に最低0.5、最高1加算されていき、ある一定値を超えると各種略奪イベントが起こったり、攻略対象から外れる離別イベントが起こったりする。
証を渡すことのできる好感度は5、これはその攻略対象キャラが主人公を好きになる条件に直結する。つまり証を複数渡せる状態のキャラクターがいるということは、主人公を好きなキャラクターが複数いるということであり、当然嫉妬もする。嫉妬も最初は見ないふりをして我慢できるけれど、積もっていくと、具体的に言えばこれも5まで貯まると態度に出てしまい関係がぎくしゃくして・・という少しリアル寄りな設定。
そして何より、この嫉妬。一度上がってしまうと下げることができない。
ゲームによっては、こういったプレイヤーにとってマイナスとなるステータスは、アイテムやイベントによって下げることが出来るものであるが、このゲームでは一切できない。故に一度上がってしまうと下げることは出来ないが、代わりに一定値まで、厳密に言えば1刻みでないと略奪示唆イベントは起こらない。そして5貯まってしまうと強制略奪イベントという回避不能のフラグがたち、ここで一部のルートは突入不可となる。
そのため主人公は適度に浮気をし、嫉妬が9まで貯まらないように立ち回りながら推しキャラの好感度を常に一番高く維持することで、推しキャラとのエンディングを迎えられるのだ。これを真エンディングという。
そう、浮気。これをしないと好感度が2番目に高いキャラと強制でエンディングを迎えさせられる。通常エンディングと呼ばれ、自分は一番ではないと分かっていながら手に入れた主人公とのその後のエピローグストーリーは勿論甘いものではない。
もしくは、証を渡したキャラクターの好感度を満遍なくあげ迎える逆ハーレムエンディング。普通にやるならこの3つのどれかを迎えることになる。
それらが私にとってはどうしても無理で、だから証を1つしか渡さないという縛りプレイをせざるを得なかった理由。その縛りプレイを実現するために、すべてのキャラクターを攻略し全てのエンディングを見て、すべてのイベントを把握した。たとえそれが自分の嫌いな展開になろうとも、最終的な推しキャラとのエンディングという目的のためだけに頑張った。
ゲームを借りた二週間後。遂に私は推しキャラクター・・第一王子ラメストと迎える裏エンディング――証を1体にのみ渡して迎えるエンディング、を迎えていた。
これに、私はショックを受けた。
そう、想定されていたのだ。
略奪愛がテーマのゲームが。
一途な愛を実現するルートを、想定して、用意していたのだ。
ならばきっと、攻略可能キャラ分全て用意されているに違いない・・そう確信して、攻略に時間を割くために、睡眠時間を1日2・3時間程度とし、食事は1日1回ゲームのできない会社で摂る昼だけ・・というように仕事以外の全ての時間を極限まで省き周回を始めた二週間後。
つまり冒頭で言った通りである約一か月後のその日、最後の一人の裏エンディングを見て。
私は死んだ。
死因は完全にこのゲームだった。
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早速辻文頭と文末で辻褄があってないので修正しました・・・0515