2
現在の高度は二万メルト。眼下、というには少し遠い位置に、六つの頂点を持つ、綺麗な星型陣地が見える。今日は、あそこの真北の頂点へと攻撃を仕掛けるのだ。
『ドラコリーダーより各員、データは届いてる?』
『ドラコツー、届いてます』
『ドラコスリー、万全です』
『ドラコフォー、鮮明に』
『ドラコファイブ、届いてます』
『ハウンド小隊各員、届いてます』
『よろしい』
マスクのグラス部分に拡大されて見える偵察データを、各員の愛騎の視覚データで補正した画像を確認しながら、作戦通りにするか最終確認をする。
『ドラコ小隊は作戦通り行きたい。ハウンド小隊は?』
『ハウンドファイブの攻撃対象を、こちらの塹壕に対地燃焼攻撃砲で行う方が、敵に被害を与えられるかと』
『ナイスアイデア。それで行こう』
さっとグラスをタッチして攻撃対象のマーキングを変更し、各員に告げる。
『じゃあ、それで行くよ! 各員、対地ステルス解除! 複合竜鱗障壁展開!』
『ドラコツー展開!』
『ドラコスリー展開完了!』
『ドラコフォー展開!』
『ドラコファイブ展開しました!』
『ハウンド小隊各員展開完了!』
『攻撃開始!』
私達は、愛騎の上下を反転させて背面飛行。翼のほとんどを閉じさせて落下する。僅かに加速していることもあり、高度一万八千メルトになる頃には、音の壁を越えた。鍛え上げた私の部下達は、苦悶の声ひとつ上げない。それを誇らしく思いつつ、落下。
高度一万五千。一万二千。地面が迫る。一万。八千。
途端、敵の陣地が光ったと思うと、ガガガガ、と障壁が何かを弾く。対空砲火だ。
(悔しいなあ)
高度五千。
残念ながら、我が軍の対空砲火は、ここまで濃密に出来ない。内心敵を賞賛しつつ、私のターゲットの掩体壕へ対地貫通攻撃砲を構える。身体強化術式により強化された身体は全くぶれることなく、高度三千メルト。
『各員、攻撃!』
ターン、と軽快な音を立てて、城を粉砕する砲火が敵陣へと放たれる。同時に愛騎の進路を上向きに変更し。
『くっ!』
急激に変更されたベクトルによる負荷が私達の身体を襲う。私はそれに耐え、後ろを向いて黒煙の中でアタフタする敵の、私達の攻撃対象に無かった戦車へと砲撃。ターン、という音からは想像も出来ない豪快な破壊で、敵戦車は陣地ごと粉砕された。
高度が一万八千メルトまで戻ると、私は各員へ念話を送る。
『ドラコリーダーより各員、点呼!』
『ドラコツー』
『ドラコスリー』
『ドラコフォー』
『ドラコファイブ』
『ハウンド小隊点呼完了!』
『よろしい!』
全員無事だったことに安心する間もなく、各員に指示を出す。
『ドラコリーダーより各員。障壁解除! 対地ステルス術式展開!』
障壁が解除され、身体にぶつかる風が心持ち強くなる。
『戦果報告は帰ってからするよ! では、帰還!』
『『了解!』』
こうして、私達は無事に帰還した。
ちなみに、全員攻撃対象を撃破していた。流石私の部下。