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聖女さまは魔王を守りたい  作者: 朝霧あゆみ
聖女さまとラザン帝国
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聖女さまと妖精王と魔王

さて、気絶した妖精王に気付け薬を飲ませ、様子を見る。


「はっ!?なんかすごい怖い夢を見た。」

「怖い夢って何じゃ?」

「いや、魔王が出てきて。」

「ワシ、そんな怖くないよ?」

「……ひぎゃぁぁぁぁ!」

「こら、気絶すんな。」


なるべく魔力を抑えつつ話しかけた父様だが、やはり妖精王には刺激が強いらしく、がくがくと震えている。


「ふむ。お主も昔の力があれば、魔王(ワシ)ほどとは言わないまでも、魔力に当てられて気絶するなどということは無いだろうにの。」

「し、仕方なかろう、国と家族を守るために必死だったんだ。そのために力を失うことなど、些細な事よ。」

「ふむ。ワシもその考えには同意じゃ。」


穏やかな笑みを浮かべる父様。

偉そうで、なんか変な奴だけど、家族を思う気持ちは妖精でも同じなのだと思うと、少し嬉しい。

こうなると、なるべく奥さんや娘さんには会わせてあげたいところだけれど。


「しかしの。ティーナも言ったと思うが、妖精の王国は伝記上7000年前に当時の大聖女の手によって滅ぼされておる。悪に染まった妖精たちは聖女の慈悲で石となり海底に沈んだ、と。」

「何が聖女の慈悲だ!奴は、我らを皆殺しにしようとした!宝石のために!」


震えるこぶしを握り締め、涙声で叫ぶ妖精王。

そりゃまぁ、自分が知らない間に、自分たちが悪人に仕立て上げられていたら、悔しいわよね。


「ふーむ。確かに妖精族は質の良い宝石を作るからの。元々人間に捕まることも多々あったろう。」

「だから、妖精の国から長期間外に出た妖精は、依り代がなければ石になる。依り代に憑いた妖精は、妖精の粉を作ることも、宝石を生み出すことも無い。」

「なるほど、そうやって国を守っていたのか。」

「だがそれは、妖精王の加護があってこそだ。国が滅びているなら、もうどうなっているのか……。」


涙の溜まった目で、遠くを見る。

家族の無事もわからないまま、自分だけが時を超えて生きている。どれほどの恐怖だろうか。


「しかし、今でもたまに妖精は見かけるぞ?」

「うーむ。石化の魔法は一度発動すると、普通は解けない。我が国の妖精の生き残りが居たとすれば、何らかの理由で、たまたま国外にいて石化しなかった者達だろう。その者達も妖精王の加護がないと、石化するか消えてしまうはずだからなぁ。依り代に宿ると、妖精ではなくなるし。陸の妖精王が封じられずに無事に居るか、海の妖精王の加護を得たかどちらかだろう。我らは陸に属する妖精だが、元は陸も海も一つだからな。運が良ければ海の妖精王(あのババア)に拾われているかもしれん。」

「海の妖精っていうと、セイレーンとか?」

「そうだ。我々は森を守護し、彼女たちは海を守護する。」

「ちなみに、石化した妖精たちは戻せるの?」

「たとえ石が割れていても、魂が離れていない限り、ほとんど戻せる。たまに運悪く、魂石が砕けてしまっていると、戻せないこともあるが……。」


ということは、まだ娘さんは生きている可能性があるし、国の人たちも海に沈んだなら戻せる可能性はあるのか。


「海に沈んだという伝記があるならば、海の妖精王が、我が国を守るために沈めてくれたのだろう。まだ希望はある。」


少し元気になったらしい元妖精王。

自分の国を取り戻すために、動くようだ。


「とりあえず、海の妖精王に会えば何とかなるかの?それなら、セイレーンの海まで連れて行ってやるが。」

「ああ。しかしその前に、我は罪滅ぼしをせねばならぬ。」


父様の提案に、妖精王は困ったように首をかしげた。


「罪滅ぼし?」

「我の宝石を使った呪術で、たくさんの人間が死んだようだ。我の意思ではないとはいえ、この世にあのような宝石たちを生み出してしまったのは、我の力不足が招いたこと。せめてその宝石を回収せねば。」

「……ああ!どおりで人間にしては高等な呪術だと思った!」


言葉に反応して死んでしまうあの呪術は、元妖精王が生み出した呪いの宝石を媒介にしているらしかった。なるほど、だからこそ、この教団はこれほど力を持っていたのか。


「大丈夫よ。呪詛は見つけ次第私が解呪するから。どっちにしろ、いくつあるのか、どこにあるのかわからない宝石を探して回るのも不可能だし、いくらあなたが生み出したとはいえ、あなたには解呪できないじゃない。」


まぁ、一部の村人にはわざと残しておくけど。

と、心の中で付け加える。


「そ、それはそうなんだが……。」


妖精王は、申し訳なさそうに俯く。


「そのくらいなら協力するわよ。そんな事より、奥さんと娘さん、見つかるといいね。」

「妖精王は、死なないからな。おそらく娘は、どんなことがあろうとも生きているはずだ。嫁は……まぁ、あいつも強いやつだ、死んではいないと思うことにしよう。」

「うちもな、嫁はとても強いんじゃ。母親になると、さらに強くなるからの。きっと無事じゃよ。」


母様に頭の上がらない父様を思い、ついつい笑ってしまう。


「では行くぞ。あんまりゆっくりしてると、うちの嫁の雷が落ちるからの。」

「ああ、悪い。世話になったな。」


父様と妖精王の姿が消え、ほっと一息。


「騒がしいおっさんだったの。」

「結局、7千年前の聖女に滅ぼされた妖精王国の王様っぽかったけどさ、7千年前の大聖女って、なんか変じゃない?宝石欲しさに国を亡ぼすって何なのよ?」

「うーん、あのおっさんの言ってることは本当かどうかはわからないけど、勝てば官軍、なの。伝記なんていくらでも捻じ曲げられるの。」

「そのうち、ヒメのおじいちゃんである竜帝王に色々聞いた方が良いかもね。聖女の風評被害甚だしいわ。」


そんなことを言いながら、家探しを完了し、アジトらしき建物を焼却処分する。

もっと黒幕だの、別の支部だのが出て来るかと思ったけど、意外にあっさりだった。

資料をちらっと見た限りでは、呪詛のかけ方や、聖女召喚の儀式の手順みたいなものはあったが、それ以外は碌なものがなかった。

資料を見る限り、ここはイータ支部だとか。ということは、最低でもあと7個くらい支部があるのか?先日のがベータ支部だとすると、多少は減ってるのだろうか。

まぁ、考えたところでよく分からん。後日改めてみんなで資料を解読しよう。


そう思い、ハンナと二人、足早に村へと戻った。


◇◇◇◇



「遅かったな、こっちはさっさと片付いたぞ。」


村に帰ると、村長であるシークスと、偉そうにふんぞり返っているアレクシスが出迎えてくれた。


「お前らが出て行ったあとな、なんか怪しいやつらが来たんだ。生贄がきちんと役目を果たさなかったときに、予備を連れていくだのなんだのと。鬱陶しいからやっつけたら、村人が突然自爆したりして大変だったんだぞ。」

「まさかこの村にも、あれほどの数の信者が入り込んでいたとは驚きでした。」

「ちなみに劣化悪魔もいたが、そいつはゼルが倒してくれた。さすがに、魔力を開放していたが。」


多少返り血を浴びているものの、無傷そうなゼルとジークハルトは、少し後ろで村人のケアを行っていた。

自爆に巻き込まれた人の治療だろうが、おそらくエリクサーを使うまでもない軽症の人の治療だろうから、私の出る幕はなさそうだ。

背中に翼の生えた状態のゼルに大人しく治療を受けているところを見ると、この村の人たちは本当に亜人や魔族に対して嫌悪感が薄いのだろう。


「お姉ちゃんも魔族なのか?」

「こ、これ!」


シークスの後ろにいたのは、ナナより少し大きい男の子だった。


「この子は、うちの使()()()のシチです。」

「そう。シチ君初めまして。私は、魔族で聖女のティーナよ。よろしくね。」


ワザとらしく使用人を強調したが、少年はシークスそっくりの顔をしていた。しかもナナと、うり二つでもある。

彼の額に角はないが、背中には小さな翼があり、獣人にも見えるが、じっくり見ると額にうっすらと膨らみが見える。おそらく角を落としているだけで魔族の先祖返りだろう。

父親の制止を振り切り、私へと駆け寄ってくる。


「俺は魔族の先祖返りだってきいた。魔族だと、ゼルの兄貴みたいに強くなれるのか?」

「もちろん、強くなれるわ。ゼルの強さを見たのでしょう?」

「ああ!俺は、今回みたいなことで家族を悲しませたくない。俺が魔族の姿で生まれたことに意味があるなら、きっとそれは家族を守るためだと思うから。こうやって隠されて、守られているだけなんて、嫌なんだ。」

「これ、シチ!」


慌ててシークスが止めるが、全く耳には入っていないようだ。強い意志のこもった瞳で私を見つめている。

周りには村人もいるが、おそらく同じ境遇の人たちばかりなのだろう。

よく見るとあちこちに、魔族や獣人、亜人の特徴を持つ、使用人の格好をした者たちがいる。


「最初は、自分の姿を恨んだんだ。なんで俺だけ、こんな姿なんだろうって。俺のせいで父さんは騎士団をやめ、国を出て、こんな寒村に引っ越すことになって。いっそ死んでしまいたかった。でも、俺が悲しむと、俺の家族がもっと悲しむんだ。だから、俺は、守りたい。」

「その気持ち、良いと思うわよ。しっかりと、家族を守りなさい。」


偉そうに言ってみたはいいけれど、シチの姿に、聖女に生まれて苦悩をつづけた自分を重ね、少し恥ずかしくなる。

こんな子供でも、強い意志を持っているのね。


「あなたに、聖女の加護をあげるわ。家族を、この村を守って。」


私は聖女の魔力を指先に集めると、シチの額を撫でる。

聖女の魔力を媒介にして、治癒力の活性化と、魔力の流れをスムーズにする程度だが、それでも魔族の血が濃く現れた彼にとっては、きっと役に立つだろう。

と、


「お、俺にも!お願いします!」

「私もお願いします、聖女様!家族を守れる力が欲しいです!」

「私にも!私も守られるだけじゃなくて護りたい!」

「え?わわわわ!?」


次の瞬間、使用人の格好をした亜人集団にもみくちゃにされた。


「あーあ、安売りするからそういうことになるの。」


あきれ顔のハンナの横で、延々と、この村の亜人や魔族の先祖返りたちに加護を施していったのだった。

うう、腰が痛い。



いつもありがとうございます。

多分魔王も妖精王もあとちょっと出てきます。


次回の更新は9/10(火)を予定しています。


これからもどうぞよろしくお願いいたします。


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