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聖女さまは魔王を守りたい  作者: 朝霧あゆみ
聖女さまとラザン帝国
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聖女さまは案外いけるらしい

不注意にて、右手をカッターで、左手を包丁でやってしまい、執筆が遅れました。遅くなってしまって申し訳ありません。

やっと落ち着いたので、またゆっくりと再開させていただきます。

さて、何故か羽を隠していても魔族だとばれてしまうようだ。

でも、何でかな?


私たち魔族と人間の違いは主に角の有無と羽根の有無、そして身体能力と魔力の総量である。

逆に言えば、それ以外にはないのだ。

だから、動物が魔力を帯びて魔物になったり、人間が魔力を帯びて魔族になったなどと言われるくらい。

血液型も基本は4種類。人間と魔族で子供もできるし、食べるものやかかる病気、必要な栄養素や睡眠時間も大差ない。

まぁ、ゼルのように獣人から派生した魔族や精霊たちから派生したといわれる魔族は多少の違いはあるけど。それでもみんな、人間に近い形をしている。

これは、祖先たちが人間と仲良くなりたくて人間を模したなんて言い伝えがあるけれど、本当のところはわからない。


「羽根を隠す魔法は外から見た限りだと全くわからないはずなので、通る人全員に何らかのテストでもしているんですかね?」

「うーん?ばれるといっても、さっきの子は完全に羽根が出ていたよね。魔法を解除されたのかな。」

「強制的に魔法を解除されたか、竜族みたいに鼻がいいか、一部の獣人族みたいに目がいいか、なの。」

「町全体に、魔法が使えない結界が張られている可能性は?」

「ないと思う。それだと、日常的に使う魔法まで使えなくなっちゃう。不便すぎるじゃん。」


結局のところ、入国の列から外れるのもあれなので並び続けていたのだが、対策は浮かばなかった。

おそらく魔法解除の魔法をかけられるのだろうけど、ここを通る人全員にかけるなんてものすっごく大変だと思うんだけどなぁ。


「おそらく、ですけど、ほら、ギルドに有った魔力値を測定する水晶みたいなやつで、魔力値の高い人を選別して、違和感のある人に解除魔法をかけるのでしょう。」


全員の意見をすり合わせた結果、そういう結論になった。

あれ?そうなると私たち全員だめじゃない?

どう考えても一般人よりは魔力あるよ?

私やゼル、ハンナだけでなく、ジークハルトもアレクシスも一般人よりは多い魔力を持っている。


「まぁ、俺たちは解除魔法をかけられたところで、隠している羽根があるわけでもないし、なんてことはないんだが。お前たちどうするよ?」

「う~ん。羽根が出ちゃったら大騒ぎだけど、いっそのこと魔族ってばれて捕まって、牢屋に行って捕まってる人たちを助ける的な路線て悪くないのではないかと思い始めてます。」

「……まぁ、それも一つではあるんだがな。お前たちの顔が魔族として広まってしまうのはあまり好ましくない。それを懇意にしているわが国も危ないしな。」


私の投げやりな案を、アレクシスがあっさりと却下する。

うう、ほかの国に迷惑がかかるとか言われると、どうにも無茶な策はとれなくなる。

となると、結局は騒ぎに乗じて逃げるか、こっそり入国するかなんだけども、こっそりはいると偵察自体が難しくなりそうなので、できる限り正面から入りたい。

荷物に隠れたらどうかと案を出してみたけど、荷馬車に隠れていたらしい混血っぽい人も連れていかれていたので、それを察知する人もいるようだ。


「魔力の気配を感じるなんて、人間というよりは亜人の能力な気がするんだけどなぁ。」

「帝国が亜人奴隷を利用して検査しているというのか。確かにあり得るな。」

「ところであのさ、なんでわざわざ捕まる危険を冒してまでみんな帝国に行きたいの?」


正直な事を言えば、帝国に行かなくても生活はできるし、辺境の町なんかには混血の人間も隠れ住んでいたりすると聞く。

ほかにも、生きるだけなら魔族領を頼ってくるという選択肢もある。実際ハンナのように、そうして移り住んでくる混血や亜人も多いのだ。

捕まって殺されるのが分かっていて、わざわざ帝国に行く意味が分からない。


「理由は様々でしょうが、高度な医療を受けるためだったり、生活が苦しくなって血縁を頼ってきていたり、希少生物としての密輸だったりもします。特に、禁止されているとはいえ、サキュバスやエルフの混血児は闇で高く売買されていると聞きます。」

「医療ねぇ。」

「聖女さまには無縁かもしれませんが、辺境の町では特に医療に関してはかなり遅れています。帝国の進んだ医療や薬を求めて移住する人も多いんですよ。」


ジークハルトの丁寧な説明を聞きながら、徐々に近づいてきた入国審査の現場を見ようと目を細める。

そこには、ギルドで魔力量を測定したときのあの水晶と、鎖につながれた二人の亜人が見えた。

背中に羽根、ではなく、両腕が翼になっているので、おそらくハーピー族かグリフォン族だろう。

彼らは鳥の亜人で、特に目が良い。

魔力量もそんなに多くないので、人間の国では捕獲されて奴隷にされているという話を聞いたことがある。

しかし、あの目。


「何か、薬でも使われているんでしょうかね?」


ゼルも同じところを見ているようだ。

血走った赤い目。それでいて虚ろな表情。

使役するために何らかの薬物を投与している可能性は大いにあるだろう。


「同族かもよ。助けるかい?」


亜人を道具として使う様子に、かなり不快な様子のアレクシスが好戦的な口調で言った。

しかしゼルは首を振る。


「先ほども言ったように、助けたいなら同族だなんだと情を挟むわけにはいきません。気を見て、なるべく犠牲を増やさないように細心の注意を払ってからです。」


どうやら、ハーピーの少女たちは積み荷を検査し、人間は水晶で魔力量を量られているようだった。

そして、魔力量が多い人は魔術師らしき男たちの前へと行かされ、何やら魔法をかけられているように見えた。


消去魔法(キャンセレーション)かけているっぽいね。」

「そうですねぇ。困りました。」


私とゼルが顔を見合わせる。

水晶の色が青に近いほど魔力は低く、緑、黄、オレンジ、赤と、赤に近づくほどに魔力値は高いと判断される。


「やっぱり、お前らがあの水晶触ると赤色になるわけ?」


アレクシスの問いに、ギルドでの審査を思い出す。


「あ。」


まずいぞ。

私、ギルドで水晶触った時、()()になったんだった。

しかもラメ入り。

あれ、絶対、聖女検査も兼ねてる。


「私が検査した時は真紅でしたね。」

「だろうな。」


ゼルが答え、私は頭を抱える。

その様子を見ながら、アレクシスは私にも回答を求めた。


「ちなみに、ティーナちゃんも赤?」

「ラメ入りの黒。」

「絶対見られたらダメな奴じゃねぇか。」

「それならいっそ、全力出してみたらどうなの?」


もう、すぐそこに迫った順番を見て、ハンナは何かを思い出したらしい。


「確か、あの時水晶、割れたの。こうなったらぶっ壊しちゃえばいいの。」


流石うちの幼女は発想が違いますね。

親の顔が見てみたいところです。


「過剰な魔力放出での破壊ねぇ。それは一つかもしれないけど、審査が遅れるだけかもよ。後、全力出すためには羽が出ちゃうんじゃないの?」

「この間のゼルさんのあれみたいに。一瞬だけ開放しちゃえばいいの。」

「ああ、なんだかんだみんな背中の羽を意識するから。ハーピー型の魔物には反応が遅れるかもね。」


私たちがゼルを見ると、ものすごくいやそうな顔をしてこっちを見るゼルがいた。

まぁ、そうだよね。

自分が真っ先に危険にさらされるのだから。


「そもそも、手を水晶にかざすんでしょう?手が一瞬とはいえ翼になったらばれますよ。」

「そういえばそうかー……。」

「そもそも、羽根や翼云々の前に測定で赤とか黒とか出すのは得策じゃありませんね。」


ジークハルトのセリフに、一同は頷く。

黄色よりも少しでも赤みがかっているレベルの魔力を持っている人は、消去魔法をかけられるようだった。

つまりは、ハンナもアウトということになる。


「ちなみに、アレクシスとジークハルトは何色になるの?」

「俺はうっすら緑がかった黄色だったな。ジークは緑寄りの黄緑だったか?」

「ぎりぎりセーフってことね。」


相談の結果、アレクシスとジークハルトの二人が先に検査し、次にハンナが測定をすることになった。

そして、ゼル、最後に私。

いろいろ対策を考えても思いつかないので、ハンナやゼルの数値のどさくさで隙を見て水晶を割ってしまおうということになったのだ。

消去魔法(キャンセレーション)の魔法自体は対策をいろいろ考えたのだが、水晶が赤や黒になってしまっては困る。

予備もあるとは思うが、全部割ってしまえば問題ないだろうという、ハンナの案を採用するしかなかった。


「では、その水晶に手を置いてください。」


だが、想定外な事態がおこる。

アレクシスが手をのせると、水晶は赤に近いオレンジへと色を変えたのだ。


「濃いオレンジだと!?混血や魔族でもめったに見ない色だぞ!」


勿論のことながら、入国審査の場は軽くパニックに陥る。

同時に、パニックを起こしている人が二人。当事者二人も困惑していた。


「な……!?つい数日前に量った時は黄色だったぞ?」

「どうなってるんだ?」


一番驚いたのはアレクシス本人だろう。ジークハルトも、水晶の不調を疑っている。

勇者になったことが何か魔力の総量に影響したのだろうか。そういった可能性も踏まえつつ、二人は首をかしげていた。


「おかしいな。私もやっていいか?」


ジークハルトが手を伸ばす。

するとこちらも、アレクシスほどではないがオレンジ色になったのだ。


「ふん、水晶が不良品なんだろう。俺の魔力がそんなに多いわけがない。」


アレクシスとジークハルトの態度に、審査官たちも水晶の不調を疑い始めていた。


「水晶の不具合な可能性は捨てきれませんが、念のためそちらで魔法をかけてもらってください。」


そうして二人は、消去魔法(キャンセレーション)を受けるが、当然ながら何も変化は起こらない。

と、その様子を見て、ゼルが何かを思いついたようにニヤリと笑ったのが見えた。


「おい、予備をもってこい。これも、ちょっと試してみてくれ。」


順番待ちをしている私たちに、少し待つように告げると審査官たちは慌ただしく水晶のチェックや予備の配置を始めた。

そして、何人かの審査員が水晶に触れると、ことごとく水晶が真紅へと変化したのだ。

誰かが水晶に触れるたびに、ゼルの髪が()()()()()

彼は誰かが水晶に触れるたび、高速で移動して水晶に触れていたのだ。

なので水晶は、誰が触れてもゼルの魔力を反映していのだが、混乱しているこの場でその事に気づく者はいない。

ハーピー族の亜人たちなら気づいたかもしれないが、薬物の影響下で判断能力が低下していたのだろう。指示されたこと以外には、反応する様子がなかった。


「ダメだ、どの水晶も赤くなる。仕方ない、亜人奴隷に大まかにチェックさせるか。」


そう言って、審査官たちはハーピーの少女二人を前へと引っ張ってくる。

ああよかった。

生き物相手だと、こんなにも楽なのよね。


私を見て、魔力の量を量ろうとした少女は、びくり、と体を震わせる。

私の中に内包されている魔力量を直接目で見たら、たとえ薬で洗脳されていても、本能的な恐怖が先に来るだろう。


「私、ハーピーって初めて見ましたわ!思ったよりもずっとかわいいのね!」


一瞬の隙に、私は少女のうちの一人を抱きしめ、直接身体に聖女の魔力を流し込んだ。

一瞬の事だったので、おそらくキラキラと光る魔力を見ることができた人はいないはず。


「こ、こら、やめなさい!これでも亜人なんだ!危険だ!」


唖然としていた検査官が、慌てて私を少女から引き剥がす。


「あ、すみません、初めて見たもので、うれしくてつい。大変失礼いたしました。貴方達も、本当にごめんなさいね?」


私は、さっと後ろに下がるとハーピーの少女たちを見つめて()()()()()()()()

すると、二人の少女は同時に目を逸らす。その体は、小刻みに震えていた。


「驚かせてしまったようですわね。護衛達も向こうにいますし、私たちも行ってよろしいかしら?」

「あ、ああ……。」


ハーピーたちが何も言わないので、審査官たちは私とゼルとハンナを白と判断したのだろう。

こうして、なんとか私たちは全員無事に入国することができたのだった。






いろいろ作戦練っても、結局うちの聖女様たちは、力任せに解決する方が向いているようです。

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