聖女様とチャラ王子
とりあえず仕上げましたが、後日修正するかもです。
「何という勇敢なその心!国民の為、世界のため、自らの犠牲を厭わないそのお姿、フローラは感動に打ち震えております!」
なんか、こっちはこっちで濃いな。できれば関わりたくない人種やで。
「いや、来なくていいところを、付いていたいってゴネてるだけなんだけど。」
「流石は、アレクシス様です!他者が傷付かないように配慮し、身代わりとして自ら危険な任務に志願されるとは!」
「いや、ジークハルトさん一人でいいところに一緒に行くとか言ってるんだけどね?」
「まさか!お兄様の事を心配して同行してくださると!?何と慈悲深い!何とお優しいお方なのでしょう。配下のために命をかけるそのお姿!ああ、フローラは一生アレクシス様に付いていきます!」
あかん、こいつ。めんどくさっ!
シスコン兄も危険かと思ったが、こっちも相当ヤバい。
「お父様、ぜひフローラも一緒に……」
『やめて下さい』
全員の気持ちが一つになった。
「フローラ、俺たちは遊びに行くわけじゃない。大切な君を、傷つけたくない気持ちももちろんだが、君に再び会いたいその気持ちで、俺たちは頑張れる。君はここで、待っていてくれることこそが俺とジークハルトの力になるんだよ。」
くさっ!
消臭魔法使いたくなるレベルの臭いセリフ!
こういうとこな。
無駄にイケメンだから、臭いセリフもサマになるのがまた何とも言い難い。
それでも、フローラには効果絶大だったようだ。
目を潤ませ、感動にうち震えている。
「何と……。分かりました。フローラは、皆様のため、無事を祈りながらお待ちしております。必ず無事に帰ってきて下さいね。そしてその暁には……!」
「さ、とりあえず今日はこの辺で。あ、あと先日希望していた書庫の閲覧許可が出たから、ゼル君、ティーナちゃん、案内するよー。」
「へ?書庫?」
ぐっと拳を握りしめるフローラを遮り、アレクシスは私とゼルの手を取った。
「多分、君の知りたいことも、少しはそこにあるから。」
そう言って、ウインク。
ああ、ムカつくけどイケメンは臭いセリフも行動も許されるんだなぁ。
「エミール君たちもまだしばらくは戻らないでしょうし、皆さんはゆっくり、食事でもお楽しみ下さい。フローラ、良ければ、お嬢さんたちに城の案内でもしてあげたらどうだい?」
「ええ、そうですわね!食事が終わりましたら、散歩しながら、中庭でお茶でも如何かしら。」
「お菓子!お菓子なの!」
「それならば、俺も同行しよう。」
キリッと良い顔をしているジークハルトだが
「大丈夫ですわ!」
あっさりと断られて、項垂れていた。
「ハンナちゃんヒメちゃん、クッキーとケーキ、どちらがお好きかしら?」
「わたくちは、噛みごたえがある方が好きでしゅ。」
「ハンナは、ケーキ!」
お菓子を前にすると、キラキラした良い笑顔を見せるハンナ。やはりしっかりしているとはいえ、7歳の女の子。美味しい食べ物やお菓子には目が無いらしい。
フローラも、何だか嬉しそうに子守を引き受けていた。
私と大差ない年齢だろうが、末っ子なのかな?
子供の扱いは得意そうではないが、嫌いではないのだろう。
「では、父さん、少し失礼します。」
私とゼルとアレクシスが部屋を出ようとしたその時、フローラがにっこり笑って言った。
「あ、アレクシス様、ティーナ様。私は、聖女様の代わりに命を差し出す覚悟はできていましてよ。」
「フローラ!」
ジークハルトが慌てて窘めようとするが、王たちは困ったような顔をして、それでも頷いていた。
「そうならないように、最善を尽くすよ。」
アレクシスは柔らかい笑みを浮かべて、それ以上の話し合いを避けたのだろう、ゆっくりとドアを閉めた。
「すまなかったね。騒がしくなってしまって。」
「いいえ。でも、書庫って?」
「君たちは、人間の常識を欲しがっているんだろう?書庫ほど人間の視点から見た常識と情報にあふれている場所はないと思うよ。」
「確かに……。」
この話を聞いたときから、私たちの書庫閲覧の許可を申請していたのか。
あれ?チャランポランに見えて、一番まともじゃなかこいつ。
「綺麗な女性と静かな空間。一つの本に対して触れ合う指。気になるけれど声をかけられないもどかしさ。物語の合間にふと視線が絡み合い……色々掻き立てられる想像がまた良いでしょ?」
「評価を下方修正します。」
「何で!?」
うちの周りに、まともな奴はいないのか。
しばらく歩くと、彼は大きな鉄の扉の前で立ち止まった。
「さて、ここだよ。」
「おおおおっ!」
ドアの向こうには、物凄い数の本が並んでいた。
すご!これは凄い!本はそんなに好きではないけど、圧巻。
比較的本好きのゼルは、こんなところにいたら何年でも引きこもりそうだ。
「素晴らしい。しかし、我々はこれほどの本を読む時間がないのが残念でなりませんね。」
「ま、大抵は俺の頭に入ってるよ。」
アレクシスは当然の様に言うと、そんな事より、と先に用意しておいたのだろう数冊の本を手渡してきた。
「人間の文字は読めるかい?」
「ええ、勿論。」
「それは残念。手取り足取り翻訳しても良かったんだがね。ゼル君も、読めるのであれば、自由に読んでくれて構わないよ。」
「手取り足取りって……。」
「良いのですか!…では遠慮なく。」
本の海に興奮したゼルは、主人が軽くナンパされていることを完全スルーで、さっさと本棚の中に消えていった。
ちょっとは考えろよ。護衛だろおまえ。
「さて、二人っきりだね。」
「同じ部屋の中に護衛がいるので、二人っきりとはいわないけどね。」
「なかなかお堅い聖女様だねぇ。可愛いのに、残念だ。」
「どーも。人間て、ひ弱過ぎて、なかなか恋愛対象にならないのよね。」
「種族の壁も、なかなか大きいものだね。いつか君に認められるほどに強くなることにしよう。」
「フローラさんは良いの?」
「フローラ?彼女は親友の妹だ。俺にとっても可愛い妹だよ。それに、ジークハルトの兄になるのはちょっとな。」
そういって苦笑していた。
うーん、年齢的には私と変わらないだろうに、フローラちゃん、頑張れ。幼馴染って、鉄板とはいえ、一歩間違えば、完全に対象外になっちゃうからなー。
私も、ゼルは完全に頼りない近所のお兄ちゃんて感じだもんな。
「ま、冗談はさておき、聖女について書かれた本と、世界情勢についての歴史書、勇者や魔王の物語。魔族を記した本に、魔物の図鑑。とりあえず必要な知識はそこら辺からで如何でしょうか?もし、希望の本があれば探してくるから言ってくれ。」
「ありがとう。とりあえず読ませてもらうわね。」
思った以上に、良いチョイス。
基礎知識が欲しい私としては、こう言った伝承や図鑑、歴史書などはありがたい。
「あと、地図もあれば嬉しいかな。」
「ああ、そうだね。新しいものと古いものを用意しよう。読みながら少し待ってていてくれ。」
そう言ってアレクシスは本棚の間へと消えていった。
さて、まずは聖女の本でも読むか。
《聖女とは、神より与えられし魂の力。世界を正常に保つための安定剤であるとされる。悪の化身である魔王から力を奪い、集めて、人に、希望と、力と、恵みを与える。》
ふむ。なんかわかる様なわからんような。
しかし、魔王の魔力を抑え込んだり相殺して消してるのではなくて、力を奪ってる?
私の中に、魔力を貯めてるってこと?
力を奪って与えるのが聖女なのか?
まぁ、それも人間の解釈の一つか。
《聖女は大体200年に1人の間隔で人間の中に産まれる。他の種族には生まれないことから、人間は選ばれた種であるといわれていた。しかし最近の説では、多種族よりも寿命が短く、力関係を崩さないからではないかとされる。聖女は魔族に対して絶対的優位の存在であるが、内包できる魔力の上限が低いので、魔族との力関係が壊れない。》
む?
むむむ?
何だそれ。人間と魔族で、パワーバランスを保ってて、それの調整のために聖女がいると。
《この書物は、古い文献の翻訳であり、現代の解釈とは異なる部分も多い。》
古いのかよ。
後書いてあるのは、だいたい知ってることばっかりかなぁ。
魔力付与の奇跡とか、エリクサーの奇跡とか。
勇者との関係とか、治癒能力とか。
勇者と魔王の物語も、色々脚色されているが、私のひいおじいちゃんや、もっと古いご先祖様の話だ。
勇者目線なのでたまにいらっとするが、まぁ、物語として楽しく読めそうだ。
他には……何だこれ。
ふと、目に付いた薄い冊子。
本、というよりはメモ書きを大切に保管してあるかの様だ。
《聖女様は、稀に我々には理解できない神の知識を持っている事がある事から、神の生まれ変わりではないかと言われている。》
なんじゃそら。
私はそんな知識持っていないぞ。
《133代聖女カミラは137代聖女カルラと酷似している。彼女たちは何も為さない。》
何も為さない?聖女なのに?
あ、私もエリクサー作るくらいしかしてないか。
しかも世に出せないボツのエリクサー。
くっ。このままでは、私も何も為さないとか書かれてしまう。
「それね、面白いでしょ。」
地図を数枚私の横に置いてアレクシスが言った。
「ええ。あっちの古文書の翻訳本も面白かったけど、この冊子も興味深いわ。これが一般の人間の知識なの?」
こんな事、私たち魔族は全く知らなかった。
聖女の扱いに長けた人間から学ぶことも多そうだ。と、思ったが。
「おー、そう言ってもらえると嬉しいね。でも、その二冊はちょっと特別。」
「ん?人間の書物なんでしょ?」
「俺が書いたの。」
「お前かよ!」
なんなんだよこの男。
訳が分からなさすぎる。チャランポランかと思えば、やけに核心をついていたり、なんか本まで書いてたり。
第二王子だから、知識は持ってておかしくないけどさ。
「俺ね、実は聖女を研究してるの。でも、不思議でさ。過去の研究は、何故か133代の頃からプッツリと途絶えている。ジークハルトには、聖女オタクって馬鹿にされるんだけど、聖女様を研究するのは楽しくて。
城を抜け出しては、街の片隅にあった古文書研究所に、夜にこっそり立ち寄って、色々教えてもらってたんだ。」
ニコニコと笑ったあと、ずっと目を細めた。
「でね、ある日を境に、研究所の人達みんな、消えちゃった。」
は?
「正しくは、聖女の研究に深く関わってた人だけ居なくなった。関わりが薄かった人は、聖女に対する興味だけが消えていた。」
「そんな事ある?」
「あったんだから仕方ない。うちの父もそう。周りの人たちも、主要な人たちから聖女やこの世界の疑問に関する興味が、消えていったんだ。」
王たちにかかっている呪いとマーキングがそうなのか。
うーん、思ったよりもずっとややこしい事態かも知れない。
人間との和解は遠いのかなぁ。
話がややこしくなってきました。
作者の頭脳ではついていけなくなりつつあります。
どうしよう。
いつも感想等ありがとうございます。
これからもよろしくお願いします。




