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聖女さまは魔王を守りたい  作者: 朝霧あゆみ
聖女様と人間の国
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冒険者と竜娘の恋

思った以上に長くなってしまいました。



しかし、驚いた。

今回はAランクの依頼で、流石に危ないと思う場面も多々あった。ドラゴン素材の収集と、街に飛来する飛竜の討伐。

それでもなんとかこなして、帰ろうとしていた時のこと。


「ウーリ!あそこ!」


青き竜谷の入口あたりにいた、指定の飛竜を倒し、3人でホクホクと歩いていた。

その目の前にいたのは、なんと幼い少女だったのだ。

しかも、グリフォンと呼ばれる鷲型の魔物に襲われている。

5メートル近い巨体は、少女を踏みつけ、今まさに喉元に噛み付こうとしていた。


「Aランクの魔物討伐の帰りに、Aランクの魔物に会うなんて、ついてねぇな!」


俺は、魔力を練り上げ足に収束させる。

魔力を爆発させて得た推進力で、そのまま少女とグリフォンの頭の間に滑り込んだ。


「ぐっ!!」


攻撃する余裕はない。

大剣を横に持ち、足に収束させていた魔力を腕に移動させる。

大きな嘴をギリギリ受け止めていた。

不快そうに目を細めるグリフォン。


「女性には優しくしろって、ばーちゃんの遺言でな!」


力任せにその嘴を弾き、怯んだ隙に足を切りつける。

ほんの少し、少女を踏みつける力が弱まった。

少女の腕と肩を支え、背負うようにしてとにかく一度離れようとした。

しかし、流石にAランク。

すぐに態勢を立て直して、再び鋭い嘴が背中の少女を狙った。


「グガッ!!」

「悪いな、リーダーのナンパの邪魔はさせないぜ。」


その嘴は俺たちに届くことなく、ナイフで目を貫かれたグリフォンは大きく仰け反った。

例えBランクとはいえ、それを見逃すような優しさはない。

クリスタはすかさず呪文を唱えた。


「氷の刃よ、切り裂け!氷刃(アイスブレード)!」

「浅い!」


羽毛が思ったよりも厚く、首筋を軽く切り裂いただけにとどまる。


「ケキャァ!」


甲高い雄叫びをあげるグリフォン。

流石にAランクの魔物だ。大して怯むことなく、態勢を立て直すと、ギラギラとした目でこちらを睨みつけた。そりゃ、大事な獲物を横取りされたんだ、怒るのも当然だよな。

翼を大きく広げ飛び上がると、俺と少女に狙いを定めた。

しかし、好都合。グリフォンの倒し方には、王道のパターンがある。


「来いよ、トリ頭。」


挑発してやると、落下速度を味方に、一直線に向かってきた。かなりのスピードだが、着地位置を大きく変えるほどの飛行技術はないので、ギリギリで回避するとそのまま着地する。

そこが大きな隙になる。

再び飛び上がるには体が重いのでタメが必要になるし、走って一撃を食らわしてくるほどのスピードは無い。

俺は、回避と同時に背中の少女を下ろす。多少荒っぽくなってしまったが、仕方ない。

もう、奴がこの子を食えることは無いのだから、少女へのガードはしない。

スピード勝負だが、想定通りに動くだけなら、下降速度以外は鈍いグリフォンになら勝てる。


「いくぜぇ!」

氷槍(アイスランス)!」


回避後、すぐに前に突進する形でロングソードを突き刺す。

背後からはクリスタが準備していた魔法が飛来し、ヴァルターの麻痺毒を塗った短剣が先程氷刃で与えた首の傷をさらに抉る。


「グ、ガァ……。」


流石にグリフォンはその場に崩れ落ちた。

その様子を確認する前に、クリスタは少女の治療に当たっていた。


「まずいわ。もたないかもしれない。」


下級回復薬を口元に持っていき飲ませているが、効果は薄い。痛みが多少和らぐ程度だろう。


「普通の人間の子供なら、とっくに死んでるな。」


先程までは、うつ伏せで踏まれていたためよく見えていなかったが、頭には小さめのツノが二本。背中にはコウモリのような翼があった。いや、鱗?ドラゴンの翼か?

人間でないのは明らかだった。

腕は変な方向に曲がり、右手首から先は無い。

内臓も傷ついているのだろう、息をするたびに変な音がするし、ゴボゴボと血が変なところを通っているであろう音がする。

いくら魔族であろうとも、この状態では助からないだろう。


「中級の回復薬も使っちまったしなぁ。予備もない。」


一般の冒険者は高価な回復薬はそうそう持ってない。

なんとかしてあげたいが、今から連れて帰ってもどうにかできるとは思えないし、特に、魔族など町に連れて帰ればまともな治療を望めるとも思えなかった。


「あいつらなら、なんとか出来るだろうがな。」


先日試験をしたルーキーを思い出す。

まさかの上級治癒魔法を使いこなす逸材だ。正直、生まれてこのかた片手で数えられるほどしか見たことのない上級の回復魔法。


「あー!!そうだ!!」


俺は、アイテム袋とは別の腰巾着から凝った細工の小瓶を取り出した。

あのルーキーの少女がくれた、高価そうな瓶に入った上級回復薬である。


「ああ、それ!!」


俺たち自身もすっかり忘れていた秘蔵のアイテム。これだけで、一回の依頼報酬が消えることもあるレベルの高値アイテムだ。最近は値上がりしていて、金貨一枚で買えない事も多い。


「ほら、飲め!腕の欠損はともかく、上級なら傷には効くはずだ!」


魔族を差別する層はかなり居る。

俺たちも、近くに魔族がいればかなり警戒するし、場合によっては殺すことも厭わない。

しかしそれは、あくまで場合による。

例え相手が人間であろうとも、場合によっては殺すのだから同じだ。

魔族は敵で、恐ろしい生き物だと聞いていきてきた。

しかし、目の前で死にかけている子供がいて、果たして見捨てることができるだろうか。

人間の子どもとなんら変わりのない、幼い少女が。


「う、うぐぅ……。」


少女の口にその液体を注いだ瞬間のことだった。

見たことのない現象が起きた。

少女の体がキラキラと輝き、眩しいほどの光に包まれると、次の瞬間全ての傷が消え失せた。


「な!?」


汚れてボロボロになった服はそのままに、食われて無くなっていたはずの手首までしっかりと再生していた。


「こんな事、あり得ない。」


魔術師であるクリスタは下級の回復魔法が使える。

だからこそ、この状況には一番驚いた事だろう。

上級の回復薬では治らないはずの傷まで、跡形もなく消え去ったのだから。


「……まさか、特級回復薬(エリクサー)?」

「そんな、そんなバカな!伝説上のアイテムだぞ?」

「たまたま手に入れて、上級と間違えたのかしら?」

「だとしたら、すごいものを使ってしまったな。金貨100枚とも500枚とも言われる特級品だぞ。」

「でも、あんたの事だから、後悔はしてないんでしょ?」


金貨500枚といえば、一生とは言わないまでも、暫くは遊んで暮らせる額だ。慎ましく暮らせば数十年はもつだろう。

だが、それでも。


「命には変えられないから、良いんじゃねぇの?」


俺が言うと、2人も笑って答えた。


「それでこそ、ウーリよね。」

「安心して命預けられるってもんだ。」

「例え魔族の子だとしても。いつか敵に回ることがあるかも知れなくても、後悔はしないわよね。」

「その時はその時だ。大切なものは守ってみせるさ。」


そんな事をしていると、規則正しい呼吸になった娘がゆっくりと目を開けた。


「王子、しゃま?」

「お?気がついたか。まだ少し残ってるから、飲んでおきな。」


そう言って小瓶を渡す。

この瓶だけでもちょっとした小銭にはなりそうだが、もう今更だ。


「……ありがとうでしゅ。」


少女はそれを受け取ると残りを飲み干し、瓶は大切そうにポケットにしまった。


「しかし、こんな所でどうしたんだい?お母さんは?」

そ、それは(しょ、しょれは)……。」


少女は顔を真っ赤にして、キョロキョロすると、どこからともなく小さな笛を取り出した。


『ピィー!』


勢いよく吹いたが、かすれたような変な小さな音が鳴っただけだった。

呼び笛にしては、小さい音だな。

と、思ったが、暫くすると茂みが揺れた。

咄嗟に身構える。


「クェーッ!」


さっきのグリフォンの事があったので一瞬驚いたが、よく見かける大型の魔物、クーストだ。

フカフカの羽毛と発達した足。

馬よりも維持が大変だが、力もあり多少の戦闘もこなせるので馬車を引いたり、背中に乗ったりと、使い勝手は良い。

ダチョウが魔物化したものと言われているが、気性は穏やかで羽の生え方も多少違う。

羽が生えているが、ドラゴンの系統だと言う説もある。


「ありがとうごじゃいまちた!このお礼は必ずいたちまちゅ!今はとりあえじゅこれで!」


少女は、クーストに咥えられ、背中に乗ると、クーストの首に付けてある小袋から何かを取り出した。


「お納めくだちゃい。では、しちゅれいいたしまちゅ!」


舌ったらずなのに、やけに大人びた口調でそれを俺に渡すと、そのまま森の中へと消えていった。


「原住民の子どもかなんかか?5歳にも満たなそうな体でクーストを乗りこなしてたぞ。この辺に魔族の集落があるなんて聞いた事ないけどな。」

「まぁ、隠れた集落があってもおかしくないか。」

「ところで、それなんだ?」


なにか、直径20センチちょい。硬くて透けていて、5ミリほどの厚み。ガラスのようだが、これは、もっと頑丈なものだ。厚みの割にものすごく軽い。


「まさかとは思うが、それ、ドラゴンの鱗じゃね?しかも、この色的に古竜の。」


マジマジとみていたヴァルターがぼそりと呟いた。


「そんな、まさか〜」


クスクスと笑うクリスタだが、ヴァルターは真剣だ。


「もし本物なら、一枚で金貨50枚はするぞ?」

「だとしたら、かなり小さいわよね。子供の物かしら?それとも、別の飛竜種?」

「いや、これは……うーん。おそらく古竜だな。子供の古竜の鱗だとしても、本物なら金貨5枚はするだろ。」

「金貨5枚!?」


そんなこんなで、俺たちは謎の少女からもらった古竜の鱗を売り、かなりの収入を得た。


鑑定してもらうと、間違いなく古竜の鱗で、どこで拾ったのかと執拗に訊かれた。

貰い物だというと、疑いの目で見られたが、それ以上追求されることはなかった。隠しているとでも思ったのだろう。


狐にでもつままれたような出来事だ。

しかしまぁ、あの子が無事に親の元に辿りつけていればいいな、と思う俺たちなのであった。



最後の方の言い回しがあまり納得いかず……。

後日多少修正できたらなと思います。



読んで下さりありがとうございました。

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