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聖女さまは魔王を守りたい  作者: 朝霧あゆみ
聖女様と人間の国
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聖女さまとドラゴン

さて、ドラゴンが出るという街道へと3人で向かう。

ドラゴンと呼ばれるのは主に古竜種であるが、他にも飛竜、元素竜、劣竜などなど、全部合わせてドラゴンである。最強と言われるのが、何千年も生きる古竜だ。

地方によっては亜種の神龍と呼ばれるドラゴンもいるらしいが、私は見たことがない。

古竜は、遠くから見たことがあるだけだ。

戦えると思うと、楽しみでしょうがない。噂だと、魔王か勇者クラスでないと勝てないとか!


「早く出てこい、ドラゴーン!」


が、私があまりにもハイテンションなのを見て、ゼルは呆れた顔をする。


「というか、竜相手だとチートとも言える聖女さまがいるんですし、何にも面白くないんじゃぁ?」

「そ、そんな、まさか……?」


ゼルの台詞に、過去のことを思い出す。

出会っただけで失神した劣竜。土下座したまま動かない飛竜。 腹を見せて、服従し続ける元素竜。

魔王には、勇者の聖剣が弱点のように、聖女のキラキラが効くように、ドラゴンにとっても、聖女の魔力(キラキラ)は、効果は抜群だ!という感じなのだ。


「いやいやいや、流石に古竜は!キラキラなんかに負けないで戦ってくれるはず!」

「現状、最強認定の魔王さまですら抗えないのに?」

「父様は、親バカだから、抵抗(レジスト)しないだけで、私を全て受け入れてしまっているだけ、とかではないの?」

「いやぁ、普通にキラキラに勝てないだけだと思うんですけどね。」


これは、まずい。

楽しい古竜退治が、出来レースみたいな、全力で怯えて服従するだけの相手をそっと捻るだけで終わるなんて、そんなクソ展開だったら、私はもう、何を信じていいのかわからない。

そもそも、キラキラは、家族を瀕死に追い込み、友達含む魔族を行動不能にし、ポーションを作れば不良品扱い。

何なの?聖女ってもっと崇められるもんじゃないの?

それだけでなく、古竜退治といった娯楽さえも、踏みにじるだと?


「まぁ、そうでないことを祈りましょう。じゃないと、お嬢様の我慢が限界のようですし。」

「耐えられない!聖女やめる!」

「まぁ、魔族に対する切り札というか、魔族を倒す最大の武器が、魔族側にいたところで宝の持ち腐れですよね。何の役にも立たないどころか、むしろ害も多いっていうか、腐り落ちちゃってますね。」

「ゼル、あんた、私のこと嫌いでしょ?」

「嫌いだとか好きだとかで表現できる相手ではないのが残念です。」

「………。」


こいつ、私の部下だよな?

そんなこんなで、半日もかからず、古竜が目撃された場所についた。

比較的拓けた街道で、広く、見通しもいい。

だからこそ、空から襲撃するには最適なのだろうけど。


「確かに、攻撃魔法を食らった痕跡が有るわね。」


あたりをよく見ると、ところどころ焦げた木や、抉れた土が見える。

空から派手に攻撃魔法をぶっ放された跡だろう。

見る限り、かなり期待できる攻撃力を持っていそうだが。


「この辺の燃え方も、かなり高温ですね。少なくとも、中級以上の魔法を使った形跡があります。」

「あと、人の足跡も、いっぱい有るね。」


あたりには、踏み荒らしたような跡。

ドラゴンの足跡ではない。多数の人間が歩き回った跡だ。草の倒れ方をみても、かなり新しそうである。


「古竜なんて、レアな生き物、みんな素材が欲しいの。だから、鱗の一枚でも落ちてないかと探しに来てるの。」

「ああ、なるほど。回復薬が枯渇しているこのご時世、竜の素材は重要なのね。」

「赤き龍谷にいっぱい落ちてますから、そんなに重要だとは思いませんでしたね。」

「ハンナが言うのも何だけど、この人たちが人間と仲良くできる要素が見当たらないの。」

「何故!?」

「多分、このままいくと、近づいてくる人は9割がた金目当てになるなの。頼むからおとなしくしていて欲しいの。」


7歳児にボロカス言われながらも、辺りを調べる。人間が踏み荒らしているとはいえ、多少痕跡はある。

特にドラゴンの足跡。これはなかなかに重要な手がかりだ。

このサイズの足跡だと、かなりの大きさの古竜であるのがわかる。

成体なのは間違いない。それどころか、かなりの年数を生きないと、なかなかこのサイズにはならないだろう。直接戦ったことはないとはいえ、遠くから見ていたことはある。

大体の大きさはわかるつもりだ。


「大きい!すごい!見間違えた飛竜とかだとがっかりだなーなんて思ったけど、間違いなく古竜よ!」

「そうですね。ここら辺に古竜が来ていたのは間違いないようです。」

「早く見たいの!早く来て欲しいの!」

「しかし、人間の荷車を襲うようなザコい真似をする古竜ですか。しょぼいやつでなければいいのですが。」


なんか、水を差してくるなぁ。今日は特に棘があるような?そろそろ、本気で帰りたくなってるのかな?

文句を言おうとすると、その時。


「何だ、貴様らは!」


どこからともなく、声が聞こえた。

いや、後ろだな。茂みの方から変な気配がする。


「あんた誰?」

「尋ねるなら、先にそっちが名乗れなの。」

「なっ!無礼な!」

「どっちがよ。いきなり出てきて、何だ貴様らは!とか言われても、ただの不審者じゃない。何で上から目線なわけ?」

「このガキどもが!」

「相手にするのやめようなの。無視するの。どっかいけおっさん、なの。」

「だ、誰がおっさんだ!!」


しばらく煽ると、中肉中背のおっさんが、茂みから飛び出してきた。魔物ならともかく、いきなりおっさんが出てくる街道。気味が悪い。


「どう見てもおっさんだけどね。」


別に、そんなにイケメンでもない。うちの親バカな父様が、あれでいてなかなかのイケメンなのだが、このおじさんはむさ苦しいと言うか、暑苦しい感じで、好みによるが、やっぱり一言で言うならおっさんだ。


「だまれ小娘が!殺すぞ!」

「よし、ゼル、やっちまえ!」

「何で私なんですか。暴れたいのも煽ってるのもお嬢様でしょう。これ以上面倒ごとは御免です。やりたきゃご自分でやってくださいよ。」

「ほんと、忠誠心のかけらもない部下ね。知ってたけど。」

「後悔するがいい!」

「お?」


急に、男は何やら呪文を唱え始めたのだ。

短気なやつ。殺すとか言ってたけど、結構本気だったらしい。

しかし、ドラゴンの調査に来てるのに、変なおっさんに絡まれるとか何なんだ。


「焼き尽くせ、灼熱の炎!業火炸裂弾(バーストボム)!」

「おおお、中級魔法じゃない!こういうのがいいのよね!!でも、ハンナを巻き込みたくないから、やり直し。炎よ、力を示し命ずる!消去(イレース)!」


そのまま応じたり避けたりすると、ハンナを巻き込んでしまう。ほんとは、同等の魔法をぶつけて相殺とか派手なことをやりたかったが仕方ない。

それ以上の魔力を用いて、強制的に魔法を解体する。


「な!?」

「物騒な人ね。先に手を出したのはそっちだからね?」


私は、剣を抜いてそのまま切りかかった。相手も腰に剣を下げているのだし、卑怯ではないだろう。


「魔法を打ち消すだと!?」


まさか、魔法を消されるなどとは思っていなかったのだろう。焦っているのか、動きが雑である。

追撃の魔法を唱えるでもなく、ギリギリで剣をかわす。


「ほら、殺すんじゃなかったの?」

「貴様!!」

「炎よ踊れ。炎嵐(ファイヤーストーム)

「くっ!?」


うーん。もう少し落ち着いてくれないと、パニックになっており、相手は実力を全く出せていない。本番に弱いタイプとかなのか?

これではつまらなさすぎる。

そう思っていると、避けながらもやっとの事で、剣を抜き、応戦を始めた。


ゼルとハンナは、やれやれ、と言った顔で数歩下がる。


「巻き込まれたら、馬鹿みたいなの。」

「しかし、アレですかね?」

「多分アレなの。」


アレ?ああ、ドラゴンの素材を取りに来た冒険者かなんかなのかな。

全く、ちょっと煽ったとはいえ、殺しに来るとは、何と気の短い。

これじゃあ、立派な冒険者になんてなれないぞ。

そう思いながらも、休まず剣を振るう。

ドラゴン相手の依頼だから、基本は大きめの派手な魔法をブチかましまくる戦いになると思っていたので、どこのおっさんかは知らないが、剣で遊べるのは嬉しかった。


「素材なんて、ほとんど残ってないし、襲われた荷車の荷物も、もう残ってないでしょ。今更、遅いのよ。」

「は?何を言っておるのだ?」


私の剣を何とか受けながら、男は答える。

剣の技術としては、エミールよりもずっと劣る。ゼルといい勝負が出来るかどうかと言ったところか。


「出遅れたおっさんが、何も手に入らなかったから、腹いせに私たちを襲ってるんじゃないの?」

「何のことだ。」


男は、少し首を傾げながらも、私の剣を受ける。


「なーんか、やなやつを思い出しそうな太刀筋だ。人間にも、使い手がいるような流派だったのか。」

「何を言ってるのよ。」


お互い、なんかよくわからないが、特に話し合うつもりもない。

と、急に男が後ろに大きく飛んで距離をとった。

何だ?必殺技でも使うのかな?


「何だそれは。お前、勇者か?……いや、年齢が合わないな。しかし物騒だな。どっちにしろ、そろそろ時間か。一度出直すか。」


何度かの剣戟の末に、私の首にかかっていた黒い羽がふわりと浮いた。それが目に入ったらしかった。

男はそのままくるりと踵を返して森の方へと消えていった。


「えええっ!?こんな不完全燃焼な終わり方ってある!?」


私の叫びもむなしく、その日は変なおっさんと少し剣を交えただけで終わった。

特に素材などを得ることもできず、野宿をしながらおとりの馬車が来るのを待つことにした。

収納から、適当にテントや寝袋、食材などを取り出す。


「野宿も楽しい!」

「ハンナは、宿でゆっくり寝たいの。」

「私としては、たとえ寝心地が悪くとも、宿よりは野宿の方が好きですね。人間が突然火を放ったり暗殺を企てたりしたらどうするんですか。」

「そうそうないと思うよ……。」


こうして、大した収穫もなく終わった割には、ゼルたちは満足そうだった。

ハンナに至っては、何故だかもう終わったし帰るとまで言いだしている。

調査だけで帰るなんて嫌だ。


絶対古竜と楽しいバトルを繰り広げるんだ!


そう、心に決めだのだった。


遅くなってすみません。


いつもありがとうございます。

これからもよろしくお願いいたします。

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