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聖女さまは魔王を守りたい  作者: 朝霧あゆみ
聖女様と人間の国
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聖女さまと竜討伐@ティーナ挿絵

うたた寝してしまって遅くなりました。



「悪かったな。まぁ、座ってくれ。」


受付嬢についていくと、私たち3人はなかなかに豪華な客間に通された。

豪華、と言っても、ものすごい装飾品があるわけではなく、ソファーがフカフカだったり、机が下品な感じではなく高そうだったりと、良いものを揃えてます感がつよい。

私たちは、王宮の客間にあったようなフカフカソファーにゆっくりと座った。


「安心してくれ。この部屋には遮音系の魔法がかかっているが、お前達をどうこうしようと言うつもりはないからな。寧ろ、秘密は守るということの証明だと思ってくれ。普通の人だと、外に声も届けられないと焦るかもしれないが、お前達なら俺が何をしようと勝てる相手では無いしな。」


入った瞬間に、肌にピリッとした感じがあった。結界で覆われた部屋に入るときの感覚だ。

そのせいで多少ゼルが殺気立っていたので、ギルドマスターは慌てて説明したのだろう。

私としては、この程度の人間が小細工したところで、ハンナにすらたいした傷は付けられないだろうと思い気にしていなかったが、無駄に神経質なゼルにはダメだったらしい。


「はい、大丈夫です。」


キョロキョロした後、結界が防音と魔力探知を遮るものだと確認がついたのか、ゼルの殺気も落ち着いた。


「いきなりで悪いんだが、お前達に頼みたい依頼が……あれ?ラードルフは?」

「え、奥さんのところに行きましたけど。」

「幼い娘を置いて?」

「その辺の男じゃ束になってもかなわない娘さんなので。」

「……あー。」


どうやら、ラードルフ込みで頼みたい仕事だったのだろう。あからさまにがっかりするギルドマスター。

受付嬢が、申し訳なさそうにソワソワしている。


「ラードルフさんに依頼があったのであれば、すみませんが、しばらく合流の予定はないんです。」

「あ、いや、悪い。こっちが勝手に勘違いしたんだ。」


うーむ。やはりああ見えてAランク。指名の依頼とかもあるんだろうな。

私達はCランクだから、ラードルフさんに依頼したかったのがB以上の依頼なら、私達は受けることすらできないわけで。


「えーっと、私たちに依頼がないなら、帰ればいいの?」


大人が気まずくモジモジしていても、結構ストレートに聞いてくるのは子供だ。

ハンナは、キョトンとした顔で、尋ねた。

特に悪意もないのだから、凄い。いや、ハンナなら悪意はあるかもしれないが。


「あー、うーん、いや、うーん。」


歯切れが悪く悩むギルドマスター。


「正直、頼めるなら誰でもいいから頼みたいんだ。俺の見立てでは、お前ら、実力だけならBランクのウーリ達よりはるかに上だろ?たまたま勝ったとかいうレベルじゃないほどによ。そもそも、ギルドマスターの権限で、指名の依頼はたとえランクが下のやつでも振り分けられるんだ。」


まぁ、確かに模擬戦で勝ってるしね。経験とかはともかく、ただ単純な戦闘力だけなら上だろうなぁ。でも、はるかに、って……。


「でもそれは、例えば睡眠魔法を使ってくるAランクの魔物に、睡眠抵抗魔法を持ったCランクに依頼するとかいう、適性の問題であって、お前達みたいな子供に、純粋に対象モンスターのランクが高い依頼を振り分けていいのかどうか。」

「何とも言えませんね。ただ、私達は回復魔法も使えますし。そんじょそこらのパーティよりは安定して依頼がこなせるとは思っていますが。」


流石に、ラードルフさんがこなせる依頼なのなら、私たちで何とかできないわけはないと思うけど。それをいうのもどうかと思うしね。

下手に言えば、また魔族だってバレてしまいかねない。何のために羽とツノを隠してるんだか。


「ああ、お前達の実力はわかってるつもりだ。コレでも、かなりの数の冒険者を見てきてるしな。」

「寧ろ、分かられていたら困るんです。」

「へ?」

「あ、いや、何でもありません。」


ポロっと本音っぽいものが出てしまった。危ない。

こっちは頑張って隠しているのに、基本的には会う人会う人にばれまくってるこの状況。(エミール)に知られたら、絶対バカにされる!

多分、もうバカにされてる気はするけど。ちくしょう。


「一応、受けなくてもいいから内容だけ聞くか?」


そう言って、書類を机に広げ、こちらを見る。


「そうですね、せっかくなので。」


私は、概要が書いてありそうな書類の一枚に手を伸ばした。


「Sランク依頼!」


驚きの声を上げてしまう。張り出してあったのは一番高くてAで、流石にSは一枚もなかった。

ウーリ達でさえ、ランク制限で受けられない依頼なのか。

だとしても、Aランクのラードルフさんに頼むのもどうかと思う依頼だけど。


「そう。結構厄介でな。何でも、ドラゴンが出たらしいんだ。」

「へえええ!魔王領の竜谷以外に居るって、あまり聞かないですけど、居るもんなんですか?」


「いや、まぁ、確かに有名なのは魔王領の赤き竜谷なんだがな。あそこは、竜の強さも数も桁外れだ。昔、魔王退治に行った兵が道を間違えたのか竜谷に行ってしまい、ものすごい数の犠牲を出したのは有名な話だしな。

一応、それ以外にもいくつかあるぞ。聞いたこともないのか?まぁ、竜種なんて滅多に会わないし、ここら辺には赤き竜谷からのはぐれ竜位しか来ないからな。でも、他を知らないのも凄いな。お前ら、どこの出身なんだ?」


他意があるのかないのかわからないつぶやきをして苦笑する。

しまった、人間達の間では、他の竜の住処も有名なのかな?


「へ、辺境の小さい村です。」

「ふむ。そんなに竜が現れない地域なのか。因みに、今回目撃されたのは古竜種らしい。正直、ラードルフにも荷が重い依頼なんだが、とりあえずは二段階依頼でな。」


書類の下の方を指差す。


「調査がAランク、討伐がSランク依頼だ。」


ねるほど、うまく行けそうなら倒してねってことか。しかし、Sランクで倒せるものなのかな?壮年の勇者(ラルフ)でも、結構キツそうだし、帝国の王子勇者……なんて名前だっけ?あいつじゃ即死しそうだけど。


「寧ろ、Sランクで討伐できるものなんですね。」

「ああ、現状Sランク認定は勇者だけだからな。勇者は聖剣のおかげで魔王に有利なのと同じく、竜にも聖剣が効くんだよ。」

「へぇ。試してみよう。」

「いやいや、聖剣は勇者が持たないと使えないから。」


あ。

そうか、勇者以外で聖剣が使えたら聖女だもんね。どうやら、私が聖剣があれば大丈夫と思っている無知な女の子と思ってくれたらしく、ギルドマスターは笑っているけど。いやー、どこにでも失言はあるもんだ。

なんか、ゼルがじっとりとした目でこっちを見ている。気をつけないと。


「そ、そうなんですか?じゃぁ、流石に討伐は厳しいですね。」

「流石に倒してこいとは言わないさ。偵察くらいなら、出来そうか?それでもAランクの依頼だし、場合によっては古竜に襲われることもあるんだぞ?」

「まぁ、見つかっても逃げるだけなら何とかなるでしょう。それに、はぐれ竜は、たとえ古竜だとしても弱ってる可能性があります。」


そこまで基本無言だったゼルが口を挟んだ。依頼を受けることに反対はしないという事なのだろう。


「まぁな。だが、油断はするなよ?」


ギルドマスターは念を押す。


「ハンナも、竜、見てみたいの。」

「では、無理はしない、という事で、この依頼を受けたいと思います。違約金とかはありますか?」

「あとで資料もゆっくりみて貰えばいいと思うが、違約金はない。特殊な依頼だし、受けられる人も少ないしな。一応気をつけて欲しいのが、依頼人だ。」


そう言って、指をさしたそこに書かれていた名前は、


「ボルマン商会。会長ゼップル。なかなかの曲者だからな。」


ギルドマスターは、少し気まずそうにその名前を告げた。


「表向きは大商人、裏は奴隷商人。亜人をメインに、魔族とのハーフも扱う。恐らく、ドラゴン討伐も素材目当てなんだろうが、裏に何か抱えてる可能性がある。気をつけてくれ。」

「はい。わかりました。」

「一応、詳細はゼップル本人から聞くことになっている。連絡をしておくので、このあといってもらえるか?」

「はい。」


こうして、私たちは竜討伐もとい調査の依頼を受けた。

たのしみー!






♪♪♪♪♪



初期のティーナのイメージラフ画?を発見したので。


挿絵(By みてみん)

実家に帰ったことにより発掘したけれど、なんか可愛くなくて扱いに困っていたブツですね。

もうちょい間抜けな感じにしたかったのですが、所詮素人の落書き。うーん、いつか絵師さんに依頼できるようになってみたいです。

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