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聖女さまは魔王を守りたい  作者: 朝霧あゆみ
聖女様と人間の国
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聖女さまと王様

次は誰の話を挟もうか悩んでいます。

ウーリ、エミール、王様、母様。書きたい話は色々なのですが、とりあえず本編を進めていきたいと思います。

話をよく聞いてみると、なるほど、ロベルトが昔気まぐれで助けた子供が王になったということか。

ロベルト、良い仕事するじゃない。


「実際。魔族というのは人間よりも強く、魔法にも長けていて、と言うのは伝わっているのだが、完全に排除してしまったことにより、本来の強さが伝わっていない。」

「その通りです。特に帝国は、魔族など取るに足らないと言った話すら広めています。実際に魔族にあったことのない人々は、魔王は強いけれど、それ以外の魔族はちょっと強いが、頑張れば勝てる相手くらいの認識になっています。そんな訳ありません!」


王の言葉に続き、話し始めた大臣は、語気を強めていった。


「勇者の資格があって初めて魔族と戦うことができ、才能と努力があって初めて魔王に対峙できる、と言うことを皆は知らない。歴代の勇者ですら、魔王に軽くあしらわれた者は数知れず。私が知ってる中では、50代の勇者(ラルフ)だけが辛うじて魔王と戦えるレベルだと思っています。30代の勇者(ていこくのおうじ)は、中でも特に才能がない。あれでは、70代の勇者(シンディ)の方がマシなくらいだ。」

「ああ、あの美人の勇者と言われていた方ですね。」


ゼルが言うと、騎士団長が苦笑する。


「まぁ、70を超えてもバリバリ現役で、騎士団の顧問になるくらいのツワモノで、私が子供の頃には憧れたレベルの美人ですね。今でも、美しい面影がしっかりと残っている。」

「ああ、惚れそうになったとかいって、母さまに……もごっ」


言いかけると、ハンナに口を塞がれた。あ、まだ私たちの正体をどこまで話すか決めてないんだった。


「お姉ちゃんは口が軽すぎるの。」

「すみません……」


年下に忠告をうける切なさ。ゼルも少し呆れたような顔で見ていた。ちくしょう。


「しかし、10代の勇者がまだ見つからないとはどう言うことなんでしょう。」

「聖女とは違い、勇者の方はその凄まじい力をそうそう隠せるモノではないので、すぐに見つかると思ったのだが。」

「他国でも、勇者が見つかったと言う報告はないし、そもそも、戦力を欲している帝国が見逃すわけがない。うちの国から勇者が出れば、少しくらい強く出れるのだが、シンディが前線を退いて以来、立場が弱くてな。」


あー。どうしたものか。どこまで伝えるかなぁ。

王たちは自分たちの情報をはっきりと説明せず、あくまで話の中で聞かれたことにしたいのか。ペラペラと重要そうなことを話していく。


「あの、ですね。いくつか確認しても良いですか?」


私が言うと、ピタリと話をやめて、三人同時にこちらを向いた。


「何なりと。」


今までの軽い口調ではなく、王として、威厳のこもった声で応えた。


「あなたたちは、魔族をどう思っていますか?」

「敵対してはいけない相手だと思っている。」

「脅威であり、恐怖の対象である事は、否定しきれないが、それは相手がどんなに温厚な狼であろうとも、ウサギが本能で狼に怯えるようなものであり、敵としての感情ではない。ウサギは狼から逃げる事はあっても、襲いかかりはしない。」

「王!」


大臣が咎めるが、王は真剣な顔で続ける。


「私の本音としては、良き隣人でありたい。だが、それを示してしまえば、我々は人間側から総攻撃を受けかねない。その時、魔族側にも人間側にも逃げることができなくなれば、我が国は滅びてしまう。既に、引き返せないところまで来てしまっているのだ。」

「話が逸れましたね。私たちが魔族である以上、あなたたちも本音でと言うのは難しいかも知れませんが、それでも聞きたいです。」


私は、王をまっすぐに見ていった。


「あなたたちは、魔族が嫌いですか?」


王は、ゆっくり息を吐くと、目を閉じ、暫く考えたあと口を開いた。


「好きと言うのは嘘になるかも知れん。しかし、嫌いではない。事実、私たちは魔物に襲われたときに、魔族に助けられている。恩は感じても、憎しみはない。」

「そうですか。」


ふむ。上っ面で好きと言われるよりはずっとマシな答えだろう。

そもそも、これだけ魔族は敵だと言う認識が広まっている中、それに染まらず、ロベルトへの恩を抱き続け、なんとか魔族との和解を、秘密裏に進めようとしたのだ。


「及第点というところか。」


ゼルがぼそりと呟いたのを聞き、私は小さく頷いた。


「面白い。私は、あなた方と、この国を信じましょう。」


魔族領に一番近いこの国がこれほどまでに魔族を理解してくれるなら話は早い。

小国とはいえ、友好関係を結んでくれるのであれば、魔族側としても動きやすい。


「ありがとうございます!」


大臣が頭を下げようとしたが、私はそれを制した。


「私は、魔王ではありません。友好関係を築くなら、王と王が対等であるべきです。」


あと、最初の間色々探り合ったことについても聞きたいなぁ。


「はじめの、わかりやすい勧誘とか、会話は、私たちを試していたんですよね?」

「ははは。そう言われてしまうと申し訳ない気持ちだが、許してくれ。いきなり、貴方は魔族ですかとも聞けなくてな。」

「何より、ゼル殿がロベルト殿にあまりにも似ていたものでして。」

「それなんだよ、ほんと。」


大臣と騎士団長は、マジマジとゼルを見る。ロベルトをよりは少し温和で、臆病だけれど、見た目はよく似ていた。

しかも、数十年も前のロベルトなら尚更、今のゼルと似ていてもおかしくはないだろう。


「記憶にあるあの魔族とそっくりで。入ってきた瞬間、動揺を隠すので精一杯だった。」

「魔族ではないかと思われる人を見つけると、色々質問したり、ロベルト殿の名前を出してりしてみて反応を見たりしたのだがな。今回は、ゼル殿がそっくりすぎて、かなり焦って話を進めてしまった。すまないな。」


ふむ。これほど危険を冒してまで魔族を探そうとしたその気概。なかなか良いではないか。

この国を足がかりに、和平交渉に持ち込めたらいいなぁ。でも、そもそも、魔族は人間とことを構えるつもりは微塵もないのに。


「あとひとつ。なぜ、帝国はそんなに魔族を嫌うのでしょう?」

「それは、正直わからないのです。100年以上も前のことでして。突然、魔族は敵なので排除するのだ、と。元々、勇者が魔王を討伐に行くことはありましたし、それはある意味では力関係の均衡を保つのに必要なことでもありました。しかし、最近のように無駄に兵を出したり、帝国がこれほど魔王討伐にこだわることが分からないのです。

しかしながら、従わなければ敵とみなされ、滅ぼされた国も少なくありません。」

「そうですか……。」

「ただ、逆にいえば、その突然が、帝国にあるのは間違い無いのです。」


大臣は、一呼吸おいていった。


「今まで、この国のように境界に近い国は多少なりとも魔族と共存してきまして。それを突然、全力で排除するよう指示を出してきた。ですから、その頃に何かがあったはずなのです。」

「ふむ。なるほど。帝国を調べれば、何かわかりそうね。」

「それは、我々からは言ってはいけないこと、なのですが。独り言として、帝国に何かがある、とだけ。呟かせていただきます。」

「ありがとう。その勇気に感謝します。」


これだけのことがわかった上に、王を味方につけることができたのは素晴らしい。これだけでも、私が旅に出た甲斐があったとも言える。


「私は、家族を守りたいのです。人間たちが攻めてきて、魔物に襲われたくさん死んでいる中で、魔族の被害を語るのもどうかと思いますが、たとえ片手で数えられるほどの数だとはいえ、魔族にも死者が出ているのです。」


王と、大臣、騎士団長は、私の話を聞き、呆れたように言った。


「片手で、数えられるほど?」

「ええ。大体、一度の侵攻で2、3人の死者が出ていますね。多い時で、10人近い死者が出たこともありましたが。」

「なんと言うことだ。帝国の発表では、毎回かなりの魔族を駆逐していると言っていた。私が参加した時も、良い戦いができたと言っていたが、やはり死者がいなかったと言うロベルト殿の言葉が、まことだったのか。」


帝国は、何を焦っているのか。完全に、兵の無駄死にだ。


「そちらでどのような話になっているかはわかりませんが、村までまともに攻めてくるのは数百から多くても数千人程度、毎回村人の抵抗によって追い払われています。勿論人間に死者も出ていますが、そうしなければこちらが殺されます。ご理解下さい。」

「わかっている。こちらが攻めている側なのだ。抵抗されても当然だろう。」

「そして村人たちにとっては、数百の人間よりもたった1人の肉親の方が大切なのです。とはいえ、人にもそれぞれ家族があるのはわかります。辛い思いをする人がお互いいなくなればと思い、この戦いの原因を探しに来たのが、私達なのです。……王様?」


王は、泣いていた。


「やっと、やっとこの日がきた。無駄死にとわかって兵を出す日々。魔族の血を引くものに辛くあたらなくてはならない日々。秘密裏に匿うにも限度がある。魔族の特徴を持つ子が生まれ、子とともに自害したものもいた。やっと、我々のやってきたことが実を結ぶの……か……?」

「王……。そうです、王子の死も無駄ではありません!魔族は悪だと教育せざるを得ない世の中だったのです!王子が、正義感から出兵に同行してしまったのも、王のせいではありません!」


ああ、人間にも多数の被害者がいるのか。これは、家族を守るだとか言ってられなくなったかもしれない。

家族をなくす痛みは、何物にも代えがたいから。


「王様。私が、可能な限り力を貸しましょう。」


王も、家族を、国民を守りたかった。私と同じ。なら、私のやるべきことは一つだけ。

可能な限り、手の届く範囲を、守る。


「おお、ありがたい……!」


まるで神を崇めるように、膝をつき、私に向かって両手を組んだ。


「やめてください王様。お互い、協力しましょう。」

「あの……。すまないが、何より一番聞きたかったことを質問しても良いかな?」


大臣が、言いにくそうに私を見て言った。


「ええ、答えられることでしたら、何なりと。」

「我々は、疑っていない。それだけはわかってほしいが、あえて質問させてくれ。」


目をそらし気味に、それでもはっきりと、彼は言った。


「魔族が、聖女を殺し勇者を攫ったと言うのは本当なのか?」


……は?

は?

なんか、どうやら話がややこしそうです。




感想や誤字脱字方向ありがとうございます。

とても励みになります。


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