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聖女さまは魔王を守りたい  作者: 朝霧あゆみ
聖女様と人間の国
33/175

聖女様は王様に会う

うーん。話がまとまらなくてやばいです。

騎士団長とやらに連れられて、しばらく歩くと王宮についた。

小国とはいえ、なかなか立派な城である。

流石に顔パスなのか、門番に軽く会釈して、そのまま中に入っていく騎士団。続いてはいる私たちも、特に何かを求められることはなかった。


「こちらでございます。」


中を進み、誰が見てもここに王がいるとわかるレベルの立派な扉の前で立ち止まる。


「今度は、私たちも一緒でいいわけ?」


ゼルだけ無理やり連れて行こうとしたことに対する皮肉を言うと、団長は苦笑して答えた。


「ええ、もちろんです。」


部下によってゆっくりと扉が開かれ、ずらりと並ぶ鎧の騎士たちの奥、赤い絨毯の先に座る王が見えた。

立派な玉座だこと。


「失礼いたします!回復術師の男性を連れて来ました!」

「うむ、ご苦労であった。」


団長の言葉に、王は威厳たっぷりで頷いた。思ったよりも若い。50代に届かないのではないだろうか。若々しく、引き締まった体躯。伸ばしているヒゲは、これまた整っていてむさ苦しくなく、とてもよく似合っていた。

イケメンおじさまである。


「そなたらも、急な呼び出しに応じてくれて感謝する。そして部下の失礼な振る舞い、心から詫びよう。高いところからで申し訳ないが、どうか許してくれ。彼らも焦ってしまっていたのだ。」


ゆっくりと立ち上がって、頭を下げた。


「どうか、お顔をあげてください。謝罪は団長様より頂いております。この度は、お招き頂き光栄です。」

「そう言ってもらえると、助かる。度重なる魔王領への出兵で、兵士たちも気が立っていてな。回復術師がいれば助かったであろう同胞のことを思うと、冷静でいるのが難しかったのもあるのだろう。」


さて、どこまでが本当なのか、どこまで信じていいのか。見極めは難しいわね。


「それで、ご用件は?」

「ふむ、率直に聞いてくれる方が、こちらも言いやすいな。だがその前に、少し人払いをしよう。団長!」

「は!」


王の言葉に、団長は振り返り手を一振り。すると、控えていた兵士たちは統率された動きで、ドアの外へ出て行った。残ったのは、騎士団長と大臣ぽい男性が1人。


「さて、そなたは回復魔法が使えると聞いたが、間違い無いのか?」


ドアが閉まったのを確認すると、早速ゼルに向かって問いかける。

ゼルは、私に目配せすると頭を下げて跪いた。


「はい、確かに私は、回復魔法を使うことができます。」

「ほう!それでは、取れかけた腕すら治し、死の淵にいたものを救ったと聞いたのだが、そなたは神聖魔法の使い手ということで間違い無いのか?」


ゼルは、一呼吸置くと、頷きながら言った。


「はい、その通りです。」

「まことか!それは凄い!だがその動き、何処かの国の兵士と見た。流石にスカウトするのは難しいのだろうな?」

「そうですね。申し訳ございませんが、私は我が王に忠誠を誓った身であり、それを違えるつもりはありません。」

「そうか、そうだな。いや、急に連れて来てしまって悪かった。皆も知っていると思うが、今はどこも回復術師が不足していてな。ひとりの術師がいることて、何万もの人の命が助かることを思うと、必死にもなるというもの。」


王は、ため息混じりにそう言った。だがしかし、謎だ。そんな状態なら、兵など出さなければいい。


「僭越ながら申し上げますと、そんな状態であれば、魔王領への出兵を控えるということは出来ないのでしょうか?」

「ん?そなたらは、よほど遠くの国から来たと見える。我々は他国との同盟の都合上、出兵をさせられているというのが現状なのだ。」

「王!」


大臣らしき男が咎めるが、王は続ける。


「我が国は、もっとも魔王領に近い国の一つである。なので、魔族に対しての危機感が薄いものも少なからずいるのだ。だからこそ、魔族との友好関係が壊れた後も、本来はお互い不干渉で済ませたかったのだ。しかし、ラザン帝国には逆らえない。あの様な大国に逆らえば、この国の様な小国は一瞬で潰されてしまうからな。独立国家とは名ばかりの、ラザン帝国の属国だ。民も兵も使い潰されるだけのな。」


疲れた様な、それでいて諦めた様な、ため息混じりの笑いを浮かべた。


「我が祖父王は、親睦のあった魔族たちを可能な限り魔王領へと逃した。混血者も、可能な限り。それでも血縁を隠して住むものも、いる。名目上処罰の対象にしてはいるが、王宮に連れてこられたものは秘密裏にスラムの一部に集めたりしていたのだがな。見つかるだけで兵士ともみ合いになり死んでしまったり、自害したりと、まぁ、私たちのやってることはろくでも無いのだ。だが、たとえ魔族であろうと混血であろうと、我が国民だったのだから。」

「ゼル、やめなさい。」


ゼルは、剣に手をかけていた。王の間に帯刀して入らされた時点で、違和感はあった。王たちは、知っていた。

少なくとも、王と、大臣と、団長は。だがまだ、確証はない。


「私たちにそんな話をしてどうなります?」

「我々に、敵意がないことを知ってもらいたかった。初めは、ただ、回復術師を引き抜くことができれば、と思ったが。お前を見た瞬間、思い出してしまった。」


ゼルを指差し、王は言った。


「そなた。ロベルトという魔族の血縁者だろう?」

「なっ!?」


ゼルと私は、剣に手をかけ、いつでも抜ける様に構えた。


「警戒しなくていい。少しでも信頼を表すことができる様に帯刀も許可した。そもそも、魔族であるお前たちが本気を出せば剣などなくても我々を軽くひねり殺せるだろう。」

「傭兵から、神聖魔法を使える若い男がいると聞いて、すぐ団長に偵察に行かせた。お前たちは宿に行ってしまった様なので、ギルドでそれとなく聞いたところによると、ラードルフの娘と、回復術師、そして若い娘の三人だと。ラードルフの娘は、生まれた時の様子からして先祖返りの可能性があることは分かっていた。」


王たちの情報網は、あまり舐めてはいけないらしい。ハンナのことも、疑いながら今まで何も手をかけていないのか。その話を聞くと、たしかにこの国は魔族に対してあまり悪い感情を抱いている様には思えない。だが、どこまで信じていいのか。


「その娘が、突然連れてきた2人。しかも、神聖魔法を使う。今までどこの国にも見つかっていなかったことを考えると、住んでいる場所は魔王領に間違い無いだろう。」

「じゃあ、私たちが魔族だと知りつつ、回復術師をダシにして呼んだわけね。」

「まぁ、そんなところだ。」

「何故?」

「まず一つは、好奇心。魔族は回復魔法は使えないと言われているだろう?なのに、ロベルトもそなたも使っている。」


そうなのよね。どこでどう伝わったのかわからないけど、魔族は回復魔法を使えないことになっている。下位のヒールくらいならできる人もそこそこいるし、ロベルトの様に上位の回復魔法を使う魔族も、かなり少ないとはいえ、いないわけでは無い。


「その、使えないという話の出所が知りたいくらいですね。」


私が言うと、王は笑った。


「そうか、使えるのか。では、我々はずっとデマを信じていたことになるのだな。」

「そうなりますね。」


知らないままに、魔族のデマが流れている。そして多くの人がそれを信じている。一体何があったのだろうか。


「ふむ。いや、な、魔族の血を引く疑いのある娘が、回復術師の男と一緒にいる、と言う話を聞いて、色々可能性は考えたのだ。その回復術師も魔族である可能性も、な。」

「そのデマを信じていた割には、回復術師が魔族とか、よく考え至りましたね。」

「ああ。それは、上位回復術を使う魔族を知っていたからな。」


ゼルの方を見て、微笑む。なんだ、この王は。

今のは、全く敵意のない、親しい者に向ける様な笑みだ。


「我が父をご存知の様ですが?」

「やはり息子か。驚くほどに似ているな。そうだろう?」


大臣と団長の方を見る。すると2人は大きくうなづいた。


「私は、成人したての頃、魔王領への出兵について行ったのだ。その時、魔物に襲われてな、回復術師もすでに死んでおり、どうにもならず、諦めかけた頃にその男はやってきた。」

「私たちもその頃はまだ見習いでしてね。なんとか王を助けたくて、瀕死の王を背負って支えて、国へと帰ろうとしていました。」

「周りは、魔物に襲われて死んだ兵で溢れていまして。この死体のうちの1人になるのだと思うと、情けなくて涙を流したのを覚えております。」


懐かしむ様に、大臣と団長も言葉を続けた。


「死を待つばかりの時に現れた魔族を見て、我々は絶望した。だが、大きな怪我をしていないこの2人だけは、なんとか逃げて欲しくて、必死に命乞いをしたのだ。」

「しかしながら、守るべき王に守られたなどとなれば一生生き恥を晒すことになります。我々は、私たちの命と引き換えに、王を救ってくれるように申し出ました。」


その頃はまだ、王も王子の1人だっただろうに、そこまで命をかけて守ろうとするあたり、いい家臣なんだろうな。


「その様子を見て、あのお方は言いました。お互いかばい合うその姿に感動した、と。余計なことを言わないなら、全員国に帰れる様にしてやる、と。そう言って王に回復魔法をかけてくださり、魔物に会わない様、瘴気の森の出口まで、案内してくださって。」

「ロベルトは我々の命の恩人である。なので、公には動けないが、可能な限り魔族に手かしていたつもりだ。」


なるほど。魔族に命を救われたから、その恩返しをしているわけか。

なんだ、緊張して損した。


国としては、何もできないが、個人としては魔族を助けてくれている王か。

うん、私にとってはこれ以上ない人物!ありがとうロベルト!

とはいえ、一旦会議をしに帰りたいところ。


「そうでしたか。で、他の用事は何ですか?なければ帰りたいのですが。」

「いや、実はですね、魔族であるあなたたちと、秘密裏に交渉をしたく思って呼んだのです。」


そこに大臣の爆弾投下。私たちと交渉?


「ここまで魔族排除が進んでいる状況では、魔族と話し合うことすらできません。下手をすれば敵国扱いです。なので、ちょっとした旅行か偵察に来ているあなたたちはソコソコの立場のある人物であると見込んで、お願いさせていただきたく……。」


しかし、いきなりバレバレになってしまうとは。やっぱり回復魔法はダメだったのかなぁ。

そんなことを考えながら、この後の展開に頭を抱えるティーナであった。

バレバレなお姫様たちです。



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