表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
聖女さまは魔王を守りたい  作者: 朝霧あゆみ
聖女様の旅路
28/175

聖女さまは頭を潰す

誤字脱字報告助かります!便利ですねー!


そう、その男は、どこからどう見ても魔族だった。

黒髪と赤い目、大きく広げた羽とツノを隠す気がないのだから、魔族であるということを隠すつもりもなさそうだ。

何処からともなく現れたようだが、私たちの背後から来たとは考えにくく、おそらくゴブリンの巣の中から出てきたのだろう。


「何だ?魔族だの人間だのって、そもそも人間が分けた境界線に従う必要があるのか?」

「別に人間が決めたわけじゃ無いでしょ!双方納得の上で、魔王領と王国領が分かれてるんでしょ?」

「はっ!そりゃぁ、大まかな国境はあるにしたって、昔は当然のように行き来できていたものだろう。それを、突然排除だなんだって騒ぎ出したのは人間だ。それに従う必要など感じないな。」


馬鹿にしたようにこっちを見て笑う。


「しかも、そうやって分けたくせに、いざ分かれて住み始めると、魔族は敵だと騒ぎ俺たちの領土に侵略してきているじゃないか。」

「そ、そりゃ、まぁ……そうだけど。」

「魔王も魔王だ。さっさと人間を滅ぼしちまえば、平和になるだろうに。何かといえば人間と仲良くやるだとか、殺すなとか。馬鹿じゃねぇの。」


うーん、お父様は平和主義だからなぁ。男の言うことも一理あるので、扱いに困る。ハンナを殴り飛ばした時は、問答無用でぶっ殺そうかと思ったが、ゼルが完治させたのを見て、多少気持ちは落ち着いた。

ハンナ自身は、やられたことに腹を立てているらしく、男を睨みつけているが、男はというとハンナを警戒してすらいない。羽根を隠したままのハンナでは、この男にはかなわないだろう。


「しかし、俺を見てもビビらないとは、度胸の据わった嬢ちゃんたちだ。大概は俺を見ると泣き叫んで逃げていくんだがな。」

「ふーん。でもその割には、魔族がいるとかいう話を聞かなかったわよ?」


人間たちから見れば、魔族なんて最上級の危険生物じゃないのか?ゴブリンの討伐なんて出してないで、魔族の討伐依頼を出すべきだろう。


「そりゃ、一人も漏らさず殺してるからな。」


あー……屑だ。こいつ、屑なんだ。人がせっかく人間との友好をとか思ってるのに、こんなクソ野郎がいるから人間は魔族を嫌うんだ。よし、まずは交友の一歩目としてこの屑を殺して人間と、などと頭の中でいろいろ考えていると、さらに想定外な状態が重なる。


「おう、バシリーさん。手伝いましょうか?」

「帰ったか。お前らがいない間に、せっかくのゴブリンどもが半分ほどやられたじゃねぇか。」

「なっ!?このクソガキどもが!てめぇら生きて帰れると思うなよ!!」

「あれ?人間??」


荷車を引いて帰ってきたのは、くたびれた服を着た薄汚い男たちだった。人間の。


「なんだ?お嬢ちゃん、その顔は。人間と魔族が一緒にいたら悪いってのか?」

「いや、むしろ推奨しようかと思ってます。」

「は??」


あ、つい本音が出てしまった。

しかしどういうことなんだ。人間は魔族を嫌ってて、この魔族も人間を嫌ってて、なのに人間と仲良くしてて……。

うん、全くわからない!

ていうか、あの荷車、すっげー血がついてるんですけど。完全に、誰かを殺して奪ってきましたってやつでしょ。……つまりは盗賊か。盗賊と、魔族と、ゴブリン。なかなか多彩なシェアハウスである。


「お嬢様。あれは、元魔族軍の兵士な気がするんですが。」


ハンナを後ろに下げると、ゼルが立ち上がって耳打ちしてきた。


「はい?」

「下士官にそんな名前の者がいたような気がするんですよね。バシリーって聞いたことあるんですよ。」

「うーん、同じ名前の人くらいいくらでもいるだろうし、同一人物かどうかはわからないでしょ。」

「まぁ、確かにそうなんですが、『人間なんてとっとと皆殺しにしちまえ』、とか『魔王は無能だ』とかいって、攻めてきた王国軍を無駄に殺したうえに、指令にも従わなかったのでクビになったうえに、反逆罪で追放されたはずなんですが。」

「あ。こいつだわ、それ。」


何でそんな問題ありそうなやつを放流するんだよ。牢にでも閉じ込めとこうよ、お父様。


「おい、てめぇら!何をコソコソやってやがる!見られたからには、生きて帰れると思うなよ!」

「見られたも何も、あんたたちが勝手に出てきたんでしょうよ……」

「うるせぇ!」


人間の盗賊らしい男が、こっちに向かって大きめの半月刀(シャムシール)を構える。

ゴブリンを駆除しにしただけなのに、何で魔族やら人間やらと戦わなくてはならないのか。状況を確認したいが、どうやら説明してくれる気はなさそうだ。


「いいや、盗賊なら殺しても怒られないだろうし。魔族も、本来は死罪なんだろうし。」

「お嬢様、一応可能なら魔族も盗賊も殺さず無力化した方が良いのでは?」

「うぇー……手加減するの?」


さっさと全滅させようと思ったが、あとが面倒なので仕方ない。両方生け捕りを目標に、失敗したらご愛敬ってことでやっちゃいますか。


「ゼル!あんたはハンナを守ってて。盗賊くらい平気だろうけど、魔族は厄介かもしれないから!」

「はいはい、分かりました。さすがに訓練された軍人ならともかく、ごろつきと、魔族の下士官ごとき、さすがの私でもそんなに怖くないです。」


あんたが怖いかどうかなんて聞いてないから。


「気味が悪い奴らだな。何か企んでるかもしれん。さっさと始末しよう。」


魔族の男も、なにやら呪文を唱えながらこっちへと近づいてくる。うーん、人間どもがいなければ、翼を解放して全力でぶっ潰すんだけど、人間に見られるの嫌だし。ていうか、生かして捕らえるんだったら、魔族であることも聖女であることも知られたら厄介だ。


「やっぱり、まずは頭を潰すのがいいわよね。」


私はそのまま駆け出した。

多少素早く、魔力を持っていたとしても、所詮は下っ端なのだ。本気を出すまでも無い。


「早い!?」


常に意識して、魔力を抑えている。解放すると、翼が出てしまう。だが、身体能力は完全に別物である。魔力とはなにも関係ない。

私は、魔王の娘だぞ。


「くそ!火球(ファイヤーボール)

消去(イレース)

「……は?」


間抜けな顔をしながら、あるはずの衝撃が消え去った自分の手に、目を落とす。

近距離で私の腹に魔法を叩きつけようとしたのだろう。まったく、人間なら、死ぬじゃないか。


「え、ちょ、何で?」

「はっはっは、貴様が弱いからだー!」


ゴッ!


隙だらけになったので、頭にチョップを入れる。鈍い音を立て、魔族の男はその場に沈んだ。ピクピク痙攣しているが、生きてる生きてる。流石の手加減!


大抵の魔法は、反対属性の魔法を叩きつければ相殺されるが、そんなことをしなくても、魔法式自体を解体してやれば、魔法は発動しない。相手の組み上げている魔法式さえ理解できれば、それで済むのだ。


「お嬢様。失神するレベルで頭を殴ったら、運が悪かったら死にますので、人間相手にやってはいけませんよ。」

「マジかよ!人間てどんだけ弱いんだよ!」


ついつい、口調が乱れてしまうほどの驚きだ。頭を殴るだけで死ぬなら、どこを殴ればいいんだろう。首?折れたら死ぬよな。体?柔らかいから穴開いたらどうするんだ。お尻?いや、流石に戦いの最中にお尻叩くのもなぁ。

何処殴ってもだいたい死んでしまいそうだ。

敵にヒールとか、なるべくやりたくないし。

はっ。


「敵に、ヒール。敵は悪役(ヒール)!」

「どういう思考でそういうセリフに至ったのでしょう。」


ゼルは、頭を抱えながら呆れたように言う。


「因みに、頭を潰すというのは、頭を強打することではありませんからね?」

「……し、しってるし!」


違ったのか。

頭を殴れば無力化できるという格言かと思ってた。


「あああ、バシリーさんが!!」


まさか、チョップ一撃でリーダー格の魔族が撃沈すると思ってなかった男たちは、暫くフリーズしていたが、私のギャグで復活する。


「てめぇら、だだで済むと思うなよ!」


シャムシールを構え、そのまま突っ込んでくる男たち。

ううっ。こんなひ弱な人間たちを相手に、殺さないで無力化ってどうしたらいいのよっ!


私は、必死に考えを巡らせるのだった。

思っていたよりさらに人間が弱いようです。



ブックマークや誤字脱字報告等ありがとうございました!

読みにくいと言う指摘をいただき、書き方も多少変えてみました。


面白かったと思っていただけましたら、評価の方もよろしくお願い致します。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ