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聖女さまは魔王を守りたい  作者: 朝霧あゆみ
聖女様の旅路
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聖女さまは依頼を受ける

やっぱり初心者クエといえばゴブリン退治だよね!

昨日泊まったのは食堂の付いていない宿屋だったので、晩御飯は近くの酒場に行った。

もう、冒険者的雰囲気がすごい。楽しい。魔王の城ではなかった経験ばかりだ。

そこで、昼間に試験をしてくれた三人に出会ったので、エリクサーを一つプレゼントした。あの程度の怪我で大騒ぎするって事は、回復に関してはかなり困ってそうだったから。

しかし後でゼルにしこたま怒られたけどね。エリクサーを作れるのは聖女だけなんだから、バレたらどうするんだ、って。でも、救える命って救いたいと思うじゃない?


そんなこんなで翌朝。


「では、お嬢様。申し訳ありませんがハンナのことを宜しくお願い致します。」


ラードルフは、無事に送り届けた報告と、ハンナのこれからについて相談するため、一旦魔王領に帰ることになった。


「任せて。しばらくは練習のためにこの街にいるから。あ、後、これ持って行って。」


エリクサーを二つラードルフに渡す。


「良いんですか?そんなにホイホイあげてしまって。」


受け取りながら、ラードルフは言う。確かに、昨日の冒険者たちの様子から見て、回復役は貴重なのだろう。しかしながら、薬草に魔力を練りこんで煮出した汁に、聖女の力を加えればものすごく簡単に量産できるのだ。薬草自体も、魔王領には大量に生えている。

むしろこれが欠乏する意味がわからない。


「良いよ、いっぱい有るし。」


どうやら、薬草の割合、練り込む魔力の量とタイミングによって、下位、中位、上位が分かれるらしいが、どうせ作るなら上位だし。

そもそも、下位の回復薬ですら聖女の魔力を加えたらエリクサーに近い効果を発揮したりする。

聖女のキラキラは、本当にチートだ。なので私は、常日頃ポーション作りに従事していた。

これを作ることによって、死者が激減しているのだから、作らない手はない。

聖女の治癒魔法をかけると、傷は治るがものすごい疲労感で倒れてしまうのとは違い、エリクサーでなら、魔族でもそこそこスッキリ回復出来る。ちょっとクラクラするらしいが、少し休めば復活できる程度。


「本当、作りすぎて在庫過多なくらいですよね。」


ゼルも苦笑していた。もう置く場所なくなってたし。


「人間の世界では、かなり不足してるんですがね。あ。上位回復薬作って売れば儲かるかな。」


ラードルフがふと呟いたが、思い直したらしい。


「いや、ダメだな、一人で作れる量には限度があるし、下手に大量に売ったら足がついて命を狙われかねない。やめとこ。」


ふむ。でも少しくらいなら、売るのもありかなぁ。なんて考えるが、下手なことをして魔族だ聖女だと言われてもこまるのでとりあえず保留で。


「じゃあね、ハンナ。良い子にしてるんだよ。怪我には気をつけてな。流石にお嬢様が一緒なら、怪我でどうこうなるところは想像できないから安心だけど。お父さん、すぐ戻ってくるからね。」

「大丈夫なの。ハンナは強いの。お父さん、泣かないの。」


そんなこんなで、ハンナにハグをしてもらい、多少心残りは有るだろうが、そこそこご機嫌でラードルフは帰って行った。


「よーし!ギルドで依頼受けよう!」


ギルド、冒険者、といえば、依頼を受けてなんぼなんだよねー!色々情報とか手に入れないと、魔族と人間の諍いの原因とかよくわからないし。

まずは、人間の世界で生きていける下地を作らないと!


「お嬢様、あんまり無茶しないでくださいね?」

「でもさー!ドラゴンとか討伐してみたいじゃん!」

「やめてください。ドラゴンみたいに可愛い生き物虐めたくないです。」

「可愛いの?いじめるの?」

「ハンナちゃんは、ドラゴン見たことないの?背中に乗せてくれたりするんだよー!」

「すごいの!乗りたいの!」


表情はそんなに変わらないが、かなりテンションが上がっている。ハンナちゃんは、こう見えてかなり好奇心が旺盛なんだなぁ。

そもそも、ドラゴンは、よほどの古代種でなければ、正直ちょっと戦うのが面倒なだけで、そんなに強いとも思わない。言葉を理解し、喋ったりするので、魔族の中には、ペットとして飼っている人も多々いる。


「まずは、ギルドで手続きね。」


昨日のテストの結果は、今日に持ち越されているので、受付で手続きを済ませて、初めて冒険者登録が完了する。

ギルドにつき、中に入ると、受付嬢がこちらに気づいて手を振ってきた。

ギルドの中は、多少人がいるとはいえ、受付は空いていた。


「あ、ティーナさん、ゼルさん、ハンナさん、結果出てますよー!」


私たちは、そのまま一直線で受付に行き、ギルドカードを取り出す。


「なんとなんとなんと!全員Dランクからのスタートです!!私がここで働き始めて初ですよ!!」

「おー!それってすごいの?」

「な、なっ……そりゃすごいですよ!」


いまいち、すごさがわからず聞き返すと、露骨に顔をしかめる受付嬢。周りの人たちもザワザワし始める。


「Dランクからだって!?俺たちも、FからDに上がるまで5年かかったってのに!!」

「あんな小さな子まで!?どんな裏技を使ったってんだ!?」

「そういえば、とある大商人の息子は、ものすごい額を払って試験官やギルドマスターを買収して、Eランクからスタートしたって噂は聞いたことあるが、流石にこの街のギルドマスターは金で動くような人じゃないしな。」

「その試験官とギルドマスターも、資格剥奪で追放されたって話だろ?」


ランクごときで買収とかするのか。人間てせこいなぁ。


「まず、受けることのできる依頼の数が大きく違います。そのパーティの一番上のランクの人を基準に、その一つ上の依頼までしか受けることができません。皆さんでいうと、DランクなのでCランクの依頼まで受けることができます。」

「へぇ。ちなみに、ランクってどうやって上げるの?」

「実績ポイント……つまりは、依頼をたくさん受けて実績を貯めて、最低一年は訓練期間があり、その後指定されたモンスターの討伐や素材収集テストを経てランクアップになります。」


むむっ。それじゃぁ、最低でも数年はかかるのか。一年で帰らなきゃいけないのになぁ。


「その一年て、短縮できないの?」

「一応、不正などで急激にランクアップさせないために設けている期間でして、基本的には例外は聞いたことないですね。あ、勇者は別枠と聞いたことがあります!」

「そっかぁ……。」

「はい、ではこちらがランク記載済みのギルドカードになります!」


返してもらったカードには、クッキリとDランクと書かれている。ラードルフはAだし、昨日の人たちはBだし。あ。そうか、すごい上位の依頼受けたかったらラードルフ連れていけば良いんだ!そうなると、何もランクにこだわる必要もないのか。


「では、何かありましたらいつでも声をかけてくださいね。」

「はい、ありがとうございます。」

「あ、そうだ。慌てなくても良いので、パーティ名を登録しておいてくださいね。そのうち名前が売れてくると、指名依頼とかもはいったりしますので。」

「それ楽しそう!えーっと……」

「後でゆっくり考えましょう。」


思いつきで適当に登録しようとしたが、やんわりとゼルに止められてしまった。


「じゃあ、また後日に。とりあえず依頼探してきます。」


そう言って、三人で依頼が貼り付けてあるボードを見に来た。

右から順に、ABCDEFと依頼が並んでいる


「私たちが受けられるのは、Cより左ってことね。」

「ゴブリンの討伐、オークの討伐、サーベルタイガーの牙、ブレイドラビットの毛皮、薬草の採集。」

「納品依頼と、討伐依頼とあるけど、どっちがいい?」

「採集は常時って書いてあるの。何もない時にやればいいの。」

「あ、そういえば、ここに来る途中に倒したサーベルタイガーとかブレイドラビットの毛皮とかあるじゃない。」

「そういえばそうですね。それを納品して換金しつつ、ゴブリンでも討伐しますか。」

「ゴブリン!楽しそうなの!」


やっぱり、冒険者の討伐といえばゴブリンよね!


「ホブゴブリンと、ゴブリンは違うんでしょ?私、普通のゴブリンてみたことないのよね。」

「まぁ、魔王領に来ると、ゴブリンて死ぬか進化するかなので普通のはそうそうお目にかかりませんね。」


ゴブリンが進化したホブゴブリンはある程度の自我を持ち、魔王領の隅っこに集落を作っている。ホブゴブリンからすれば、進化前の姿とはいえ、人間が先祖が猿でした、先祖がトカゲでしたとか言われているようなもので、彼らから見ると別の種族らしく、ゴブリンが人間たちに殺されようともそんなに気にしないと聞いたことがある。

自分たちに牙を向くようなら、彼らですら直々に手を下すことさえあるんだとか。


「依頼ランクもCだし、行ってみちゃう!?」

「魔物退治なの!やりたいの!でも、なんでゴブリンてそんなに嫌われるの?ホブゴブリンさんたちは、良い人だったの。」

「まぁ、ホブゴブリンたちは弱小種族とはいえ、争いを好まず、ひっそり農業で暮らしてますからねぇ。彼らとは違い、ゴブリンは魔物と亜人の間みたいなもので、知恵があり、人を襲いますからね。」

「人を襲うんだ……」

「結構積極的に襲います。」

「ふむ。じゃあ、なおさらだね!これにしよう!」


私たちは、Cランクの依頼書を取り外すと、それを受付に持っていった。受付のお姉さんは、微妙な顔でそれを受け取った。


「これやるんですか?ゴブリンて結構凶暴なんですよ?」

「うん、大丈夫だと思う!」

「そうですか……?まぁ、皆さんいきなりDランクになる程ですし、強く引き止めたりはしませんけど、彼らは群れで襲ってきますし、個々の力も強力です。普通の魔物と違い、知恵もありますからね。」

「はい、ありがとうございます。」

「では、これで受理いたしました。これはギルドからの依頼ですので、失敗時の違約金は発生しません。ご武運を。」


そんなこんなで、私たちは初めてクエストを受けたのだった。


しゅっぱーつ!




読んでいただいてありがとうございます。ブックマークや、感想も本当に励みになります。


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