聖女さまはテストを受ける
なかなか体調が戻らず、、、。インフルって怖いですね。
事務らしきお姉さんに案内され、奥の扉を抜けて、機材の置いてある部屋に入る。窓の外には、少し広い裏庭が有り、おそらくそこが練習場なんだろう。
「ではまず、この計測器に乗ってください。大まかな魔力値が色で表示されます。青が一番少なく、緑、黄色、オレンジを経て赤くなるほどに強いとされています。」
「私、乗りたいの。面白そうなの。」
その魔道具は、ちょっとした踏み台のようなものに、大きな水晶玉が付いていた。
淡白な態度と冷めた表情でわかりづらいが、どうやらハンナは相当ワクワクしているらしかった。
「では、ハンナさんどうぞ。」
ちょこん、とハンナが乗ると、透明だった水晶玉がキラキラと光った。
「す、凄いです!この歳で、黄色に近いとはいえ、オレンジなんて!魔力量だけなら、Bランクの人と同じくらいですよ!!流石はAランクのラードルフさんの娘さんですね!」
「だろ!?だろー!?流石はハンナだな!凄いなー!」
おっさんは、ハンナを褒められた途端デレデレしながら娘を抱きしめて頬ずりをしている。ハンナは心の底から嫌そうだ。
事務のお姉さんは興奮しまくっている。ラードルフさんは、ハンナはあまり魔力が多い方ではないと言ってなかったか?羽を隠すのに魔法で魔力を抑えてるんじゃないのか?何となく嫌な予感がした。
しかし、おっさんは親バカ全開で思考が止まっている。
「では、次、ゼルさんどうぞ」
おそらく、ゼルも嫌な予感を感じているんだろう。促されるものの、乗るのを躊躇っている。
「ゼルさん?どうなさいました?」
「あ、いえ、何でもないです。」
おそらく、精神統一とかして全力で魔力を抑えているのだろう。効果があるのかはわからないが。
まぁ、ゼルは魔族の中でも魔力は少ない方だし。
そんな事を考えながらゼルの方を見る。恐る恐る魔道具に乗ると、水晶が光った。真っ赤に。
ラードルフはその色を見て親ばかモードを脱し、フリーズしていた。
「えっ……?え?赤?なにこの色。赤ってこんな色なの?」
事務のお姉さんは、パニックになっている。赤の色を認識できなくなっているらしい。
「赤って、そんな、最高峰の魔導師とか、勇者とか、そんな人しかならないんじゃあ???ん?赤じゃなかったっけ?」
目の焦点が合ってない状態でブツブツ言っている。その間に、かろうじて正気を取り戻したラードルフが、何かを思いついたように言った。
「ちょっと、俺も乗ってみてもいいか?」
「え、あ、はい、どうぞ。」
混乱しているお姉さんに、ラードルフが尋ねて、魔道具に乗る。すると。水晶は少しオレンジ寄りとはいえ、赤く光ったのだ。
「壊れてるんじゃないのか?俺が、昔乗った時は黄色だったぞ。」
「え?あ?そうかもしれません。そうですよねっ。生まれついての魔力量はそうそう変わるものではありませんもんね。」
当然ながら、ゼルが魔力が少ないというのは、魔族として、である。自分たちの周りには、魔族しかいなかったから、ゼルもティーナもそもそも人間の基準を知らないのは仕方ない。
「何かがおかしくなっていて、少し、数値が高く出てしまうのかもしれません。」
しかし、ラードルフですら、魔力を抑えた状態の二人なら、自分とほとんど変わらないし、一般人よりは少し強い程度で済むだろうと思い込んでしまっていたのだ。自分とそれほど変わらないと言うことは、Aランク以上に分類されてしまう事を、なぜ忘れていたのか。
長年、魔族と共に暮らすことで麻痺していたのだ。人間の一般とはどの程度なのか。という事を。
「ラードルフさん、フォローありがとうございます。」
ゼルが、小声で言った。
「いや、だって、壊れてるだろ?」
「あれ?」
ゼルは、フォローのために本気を出しながら計測してくれたのかと思ったのだが、どうやら本気で壊れていると思っているらしかった。
「10年前の値と、そんなに変わるわけないだろ。」
「魔力値って、魔力濃度の高いところに住んでいると、多少ですけど、上がるんですよ?特に、ラードルフさんみたいに血を引いてらなら、なおさら。」
「えっ?」
どうにも、魔族と人間の間での知識共有がうまくいってないらしく、全員が要所要所で抜けまくっていた。
「うーん、でも、困りましたね。これが壊れているとなると、新しいものを手配するのに数日かかってしまいます。」
そして何より、ラードルフとゼルがコソコソ話している内容を、ティーナが一切聞いていなかったのだ。
なんかわからないけど、ゼルは精神統一しても赤になった。まずい感じもしたけど、ラードルフさんも赤っぽかったし、平気だろう。
早く私も測ってみたい!
「壊れててもいいから、乗ってみたいです!」
私は、ハンナと同じくワクワクしながら言った。
それでも、言って仕舞えば、最大が赤である。勇者や最高峰の人たちが乗って赤だったんだから。
そして、今、二人も赤を出している。おそらく故障だろう。
こうなれば、もう一人赤が出たところで、もしかしたら凄い才能があるかも程度で済んじゃうんじゃないかと。
普段冷静なゼルや、比較的常識人のラードラフさえ思考が一周してぶっ飛びかけていた。
「まぁ、正式な値ではないかもしれませんが、仮の結果として記載するので、乗ってくださって結構ですよ。」
許可が出たので、私もゼルに習い、効果があるのかはわからないが、あまり魔力を放出しないよう、体の中にとどめるイメージで乗ってみた。
水晶は一瞬輝いたのち、色が現れ……なかった。
というか、
「なにこれ、黒??」
もう、事務のお姉さんは錯乱状態である。
「黒ってなに?」
と、思った瞬間、黒の中にキラキラと金色が混ざった。幸い、お姉さんは黒の意味がわからず説明書とカラーチャートのくっついた冊子とにらめっこをしていた。
「んんん??」
ラードルフとハンナはそのキラキラが何なのかピンと来ないまま見つめており、私とゼルは心当たりのあるキラキラをイメージして冷や汗を垂らしていた。
急いで降りよう。と、思い行動に移そうとしたその時。
ビシッ!
水晶に、無数のヒビが入り、そのまま砕けた。
やっぱり、割れちゃった、、、。
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