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聖女さまは魔王を守りたい  作者: 朝霧あゆみ
聖女様の帰還
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聖女の言い訳

「……と、言うわけなのよ。」

「よくもまぁ、簡単な儀式でそこまで問題を起こせるの。アホなの。」


少女が魔族になり、偽聖女疑惑がかかり、ガロとかいう転生者が出てきて劣化悪魔になったあと、シンディとラルフに祝福をして、変な訛りのヤバそうな男が出てきた。

そしたらゼルが天使に乗っ取られて駆けつけて気絶して、ロベルトが召喚され、それに対抗するため、魔王を呼び出した。

と言う事を、簡単に伝えたのだけれど。

アホ呼ばわりですよ。


「いや、私何も悪くなく無い?」

「少なくとも、魔王を呼び出したのはティーナしゃんでしゅ。」

「はっ……!」


説明している間、ロベルトはゼルの看護を、復活した父様は私が元気なのかを確認した上で、ラルフたちと軽くおしゃべりを交わしていた。

看護、と言っても怪我をしているわけでも無いので、ソファーに横たえたゼルを心配そうに覗き込んでいるだけなのだが。


「しかし、あの男は何だったのかな?」


ラルフたちでも手が出ない、私でも全く敵わない。

更には、劣化悪魔を素手で倒したり、人間に戻したり。

あの口ぶりだと、ガロを烈火悪魔にしたの自体も、あの男がやったようだし。


「そんな、ティーナしゃんでも全く敵わないような人がいるんでしゅかね?」

「父様や、竜帝王レベルだと思うんだけど。」

「そんなバケモノクラスがぽんぽんいたら溜まったもんじゃ無いの。目的が分からないと、怖いの。何だったなの?」


3人で首を傾げていると、


「クピーは、………と。」

「ん?何?」


意識を取り戻したゼルが、絞り出すように言った。

上手く聞き取れず、聞き返すと、一度ためらうように視線を泳がせた後、


「神王だと言ってました。」


はっきりとそう言った。

と、勇者たちと話しながらも、こちらをチラチラと気にしていた父が、急にこっちの話に混ざる。


「神王じゃと?」

「父様、知ってるの?」

「うーん。昔、そんな()()()()()と言うのは聞いたことあるのぉ。魔族を束ねるのが魔王なら、人族を束ねるのが神王。けど、何千年も前に突然姿を消して以来、一度も現れてないとか。」

「人間を束ねるのは、各国の王じゃ無いの?」

「その上に絶対的な存在がいたらしいんじゃがの。流石にわしもそんな昔のことまでは知らんのよ。」


言葉を濁す。


「寿命があって、子供らに引き継がれる魔王と違い、神王は寿命のない唯一無二。それが消えたと言うことは、死んだんじゃろうが、死んだなら新たな神王が現れてもおかしく無いはずなんじゃがのう……わしらもよく分からん。ただ、神王が消えて、世界のバランスが崩れて以来、勇者や聖女が現れたと聞く。何かしら主神や魔神の力が働いたのかも知れんの。」


消えたはずの神王が現れた?

何かが起きてるってことなのか。それとも、ただの偶然なのか……。


「とりあえず、ここで話し合ってても仕方なかろう。此方でも少し調べておこうでは無いか。なぁ、ロベルト。」

「はい。神王の再来となると、他人事ではありませんしね。」


ゼルが起きた途端、いつもの笑顔の仮面を貼り付けたロベルトは、何事もなかったかのように父様の横に立っている。

あんなに心配そうに覗き込んでいたのが、嘘のようだ。

……なんだかんだ、ここも親バカなんではなかろうか。


「ラードルフ、ハンナを連れて帰るんじゃろ?ワシらもそろそろ帰るし、同乗するかの?」

「同乗?馬車かワイパーンでも用意したんですか?」

「いや、竜帝王がお土産に転移用の魔法陣くれたんじゃよ。」


そう言って懐からピラっと紙を一枚取り出す。

私たちが使う召喚の魔法陣とは違い、かなり複雑な術式が刻み込まれている。

古竜の使う独自の魔法だろう。

召喚は比較的簡単にできるのだが、通路を固定して行う転移は竜族の専売特許だ。


「あー、それ、魔力で酔うから苦手なんですよねぇ。一週間以上かかる道のりが一瞬なのは魅力的ですけど……。」


渋るラードルフに、ハンナは身をなり出して言う。


「ご一緒させていただくの!そしてすぐ帰ってくるの!ツッコミ不在だと、ティーナが心配なの。」

「そんな理由!?」

「ハンナちゃん、冒険者ごっこは、もう少し大きくなってからにしちゃどうかの?ラードルフが心配するのも分かるからのぅ……。」

「や!なの!」

「そんなに!?」


何か、しょげるラードルフを父様が宥めてるんだけど。


「ハンナが戻るまで、帝国に行っちゃダメなの。わかったの?」

「はいはい。ナルノバ王国で待ってるね。」


ハンナと約束を交わしていると、ガヤガヤと部屋の外が賑やかになってきた。

勇者2人が呼ばれ、部屋の外を警護している人と何か話したりしている。


「さて、ややこしくなりそうじゃし、ワシらは戻るからの。

何かわかったら、連絡するから。気をつけるんじゃぞ。無茶はせんようにな。」

「わかってるわ、父様。父様も、気をつけてね。帝国の動きが怪しいって、アレクシスも言ってたし。」

「ふむ。帝国の王子が来るくらいなら、平気なんじゃがの。それよりも、加護を持ったそこの勇者2人の方が段違いに厄介じゃし。」


流石に気付いてたようで、シンディとラルフを目で示し、肩をすくめて見せる。


「今度遊びに行くから、楽しみにしてろって、シンディのやつが言ってたしの……。」

「……すみません……。」


パワーアップした戦闘狂に付き合わされる日々を想像したらしく、遠くを見つめる父の手に、そっとエリクサーを握らせる。


「肉体よりも、精神が削られるんだけどね。」


そう言いながら、エリクサーをポケットに仕舞うと、軽く手を振って魔法陣を起動させた。

同時に、不服そうなハンナと、どこか嬉しそうなラードルフ、そしてロベルトと父様の姿がかき消える。


「ロベルト殿が来てるそうで!?」


入れ違いに駆け込んできたのは、大臣と騎士団長。


「ああ、それなら今さっき帰りましたけど……。」

「……お会いしたかった……。」


王様含めこの3人は、命を救われて以来、相変わらずロベルトファンらしい。

がっくりと肩を落として、残念さを全身で表現していた。

おそらくこの場に来ていないだけで、王様もロベルトに会いたくてワクワクしている事だろう。

子供の頃に命を救われたのだから、彼らにとっての英雄は勇者ではなくロベルトなのかも知れない。


本当に、この城にいると、魔族だとか人間だとかそう言うことを忘れそうになるなぁ。


「嵐のように過ぎ去りましたね。」


ソファーからやっと起き上がってきたゼルが苦笑する。


「あんたは大丈夫なわけ?」

「クピーのせいでえらい目に遭いましたけどね。軽い打撲程度なので、薬塗りましたし、痛みも無いです。」

「なら良かった。ところで、アレクシス知らない?」

「ああ、彼なら、儀式の間暇だから騎士団のトレーニングに混ざるとか言ってましたけど。そろそろ来るんじゃ無いですかね。」

「アレクシス様が!?」


色々ありすぎて疲れたのか、ぐったりと椅子にもたれかかっていたフローラが、突然立ち上がって顔を真っ赤に染める。

因みに、認識阻害の魔法がかかっているので、他の人たちには聖女っぽく見えるらしいが、わたしたちのように、魔力値が高く更に正体を知っていると効果が薄まっているので、ちゃんとフローラに見えるのだけど。


「髪を整えてちょうだい!」


なぜか侍女を呼び、いそいそと乱れた服や髪を整え始める。

認識阻害の魔法がかかってるから、おそらく魔力の少ないアレクシスやジークハルトたちには、正体が分かっていても別人に見えるから、おめかししてもあまり意味がない。


「女心ってやつでしゅよ。」


首を傾げる私に、ヒメが耳打ちする。

そういうもんなのかなぁ。


「お、騒ぎの張本人!」


そんなことをしていると、入り口のあたりから声がかかった。


「アレクシス様!」


嬉しそうに駆け寄るフローラ。

そのままアレクシスに抱きついて、服に顔を埋めている。


「お、()()()()、だな。よく頑張ってるじゃないか、えらいぞー。」

「と、当然ですわ!」


ぐしゃぐしゃと整えたばかりの髪を撫でられ、慌てて顔を離すと同時に、嬉しそうに顔を綻ばせた。


「アレクシス、ちょっと図書室借りていい?」

「ん?ああ、良いぞ。奥の一般閲覧禁止分も、読みたきゃ読んで良いからなー。」

「有難いけど、管理体制に不安が残る禁書ね。」


私は、血まみれになった侍女の服を脱ぎ捨てると、アイテム袋から予備の服を取り出す。

軽めの胸当てとローブ、マントとブーツ。

剣士と魔法使いの中間的な格好だが、魔族はこういった軽めの衣装を好む。


「さーて、では、少し、帝国のことも神王のことも、調べないとね。」


私が入り口の方へ向かうと、


「私も行くでしゅ。」

「あ、私も。」


ここにいるのも退屈だと思ったのか、ヒメもゼルも同行を申し出る。

まぁ、人数がいる方が、調べ物も捗るわよね。


そうして、私たちは図書室へと向かったのだった。



遅くなって申し訳ありません。


これからもよろしくお願いします。

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