従者のクリスマス
かなり短いです。
クリスマスにアップしたかったのですが、間に合いませんでした……続きは後日です。
すみません。
クリスマス話です。
去年のクリスマス話の、さらに一年前という設定です。
「ぎゃああああ!」
「今年も、懲りませんねぇ。」
クリスマスに響くのは、悲鳴。
その声を聞きながら、のほほんとお茶を飲む王妃様と、父。
本来ならば、家臣である父が、同じテーブルに着き、お茶を飲むなど言語道断なはずだが……。
平民出身の王妃様は、1人で飲むのは寂しいわ、と言って私たちを座らせることも多い。
今ではよく見られる光景で、最初は抵抗感を持っていた家臣たちも、我先にと手を伸ばし、王妃様のクッキー美味しいです、なんて言いながら、お茶を啜っている。
特に今日はクリスマスと呼ばれる特別な日だ。
人間たち……大昔に転生者が広めた、とも、聖女が広めた、とも言われる何とも不思議な日で、この日は子供の枕元に赤い服を着たサンタという老人がプレゼントを届けるらしい。
その役を、大体の家庭では、父親が担うそうなのだが。
……何故か姫様は毎年部屋に罠を仕掛けるのだ。
初めは、サンタを捕獲するのが目的だったようだが、全ての罠を受けても逃げていく父親に闘争心を燃やし始め、今では半端ない殺傷力のある罠がずらりと並ぶ始末。
しかし、あんな悲鳴あげてて、気付かれないものかな?
などという疑問が残るのだが……。
「あ、だめ、そこは!いやじゃぁああ!!」
「……今年は、どんな目に遭っているんでしょうね。」
王妃様の部屋は、姫様の部屋に近いので、声と物音がよく響く。
いつの頃からか、毎年、この叫び声を聞きながらお茶をするのが恒例となっていた。
聖女の魔力を練り込んだ罠は、魔王様には効果絶大で、触れるだけで弱体化し、悉く全ての罠にはまる。
……姫様、気づいてやってないか?
という疑問は、今や全ての配下が思っていても口に出さない。
普通の人間や魔族なら、おそらく……死ぬだろうし。
魔王様だから、「メッチャ痛いんじゃよ!?」で済んでるけど。
まぁ……怪我といっても大したことはなく、死ぬギリギリを体験できる罠、とでもいうべきか。最近は特に精神的なダメージメインになってる気もするが……。
それでも必死にプレゼントを届けようとする魔王様と、楽しそうに罠を設置する姫様。
その様子を、呆れながらも面白がっている王妃様。
そして、魔王様がサンタだと気づいているが、知らないふりをして微笑ましく見ているエミール様。
エミール様は、勇者なのだから、魔王探知機といっても多言ではないのに、何故その部屋にこっそり忍び込めると思っているのだろう。
魔王様も王妃様も、気付かれてることに気づいてないから、言わないけど。
何とも幸せそうな魔王一家だ。
うちは、早くに元々体の弱かった母さんが病になって以来、サンタさんなんて来なかった。
姫様が母を治してくれたころには、流石にそんな歳でも無かったし。
この父さんだもんなぁ。
そう思ってチラリと父を見ると、何故か目があってしまい、気まずくなって目を逸らす。が。
「ああそうだ、ゼル」
「はい?」
突然話しかけられて、ビクッとする。
父は、私にあまり興味がない。
治癒魔法に長けているとはいえ、能力値もそんなに高くないし、執事業務もまだまだ見習いだ。
そんな私は、父にとって汚点なのだろう。
何だか悲しくなって、目を合わせられないでいると。
「早く寝ないとサンタさんがきませんよ。」
「は?」
「ですから、早く寝ないとサンタさんが来ないので、早く寝てはいかがですか。もう夜も遅いですよ。」
「は?」
父が、とち狂った。
ロベルトが壊れました。




