神王の見る夢
設定を盛り込む話を書くと、どうしても更新が遅くなりがちです……
私は、全てを愛している。
私は、神の作り出した傑作だった。
全てに秀でていて、全てを知り、全てを司る。
完璧な存在。
不完全な神が作り出した、完全な神王。
神はただ全てを愛して作り上げ、魔神は全てを愛して壊した。
主神と魔神が作り上げたこの世界は、主神の作った天使と魔神の作った悪魔がいる、幸せな世界のはずだった。
生きることを幸せとした天使と、死ぬことを幸せとした悪魔。
彼らは等しく、生と死を求めた。
死なない天使は、生きることに疲れ、魔神に死を願った。
すぐに死んでしまう悪魔は、死に怯え、主神に生を願った。
2人の神は、悩んだ末に、お互いの種族に祝福を与え、悪魔には長めの生を、天使には限りある寿命を与えた。
祝福を得た天使と悪魔は、地上へと降り、ヒトとなった。
主神に愛され生まれたヒトは魔神の祝福を得て人間となり、魔神に愛され生まれたヒトは主神の祝福を得て魔族となった。
しかし、互いの体に馴染まない祝福が歪みを呼び、同じはずのお互いを憎み始める。
このままではいけないと、主神は人間を導く神王を作り、魔神は魔族を導く魔王を作った。
そうしてこの世界は、平和に作り上げられたはずだった。
主神の愛は神王を通じて世界に満たされ、魔神の愛は魔王を通じて世界に満たされた。
ある日のこと。
人間が、神を捨てたのだ。
魔力に憧れ、魔力を得るため、魔神の力を欲した。
神に作られたその体に、魔力を湛えるため、神の作った体を呪った。
呪いは体に染み渡り、魔力を得た代わりに、神力を受け入れられなくなった。
魔神の祝福を受けた彼らが、魔神の力を求めたのは、ある意味必然かもしれないが。
魔力を得て、魔力に酔いしれた人間は、魔族よりも魔力をうまく扱えないことを、私のせいにした。
私を殺せば、もっともっと魔力を得られると思った。
私は抵抗などしなかった。
私は、そんな憐れな彼らのことも、愛していたから。
そもそも私たちは彼らが私を憎んだ時、抗うことなどできない。そのように作られている。
主神と魔神が作り上げた絶対的な支配力を持つ私たちが、人間や魔族を裏切らないよう、苦しめないよう、細工を施していた。
私たち神王と魔王の力の根源は敬愛の念である。
人間が私を敬い愛するほど、私は神力を湛え、人間に還元することができる。
同じように、魔族が魔王を敬い愛するほど、魔王は魔力を湛え、魔族に還元するのだ。
しかし、いつからか、人間は私を疎ましく思い始めた。
癒し、守ることしかできない力。
戦いには向かない神力を嫌い、魔王の力を求めたのだ。
神王さえいなければ、魔力が手に入り、世界を手に入れられるとでも思ったのだろうか。
敬愛を失った私は、無力な存在となり、魔族だけで無く人間からも求められた魔王は、強大な力を手にした。
人々は、魔力を持って私を殺そうとしたが、それは叶わなかった。
いくら弱くなったと言っても、神の作った完璧な私は、死ねない。人間は、私を殺すことを諦め、地下深くに封じた。同時に、私がいなくなったことで、魔王は強大な力と魔力を世界中に振り撒いていた。
魔王を信仰し魔神から得た魔力では、魔王を倒すことなどできないと、人間たちが気づいた頃には、私は忘れ去られ、弱り過ぎていた。
もう、人間たちに神力を与えることもほとんどできてはいない。
私は、ただ人々を憐れみ、愛し、慈しみながら長い月日を過ごした。
それは、人々に愛されていた間も、忘れ去られた後も、何一つ変わらなかった。
愚かで可愛い我が子たち。
彼らを想い、愛する日々は、それなりに幸せだった。
だが、ある日、私は完璧では無くなった。
私を心配した魔王がよこした、小さな女の子。
魔族は、5歳にもなればその辺の人間では太刀打ちできないくらいの力を持つ。
魔王自身が直接来れば、大騒ぎになるだろうと思ったのだろうが、あいつもなかなか無茶をする。
私の封印を解くため、こんな小さい子供をよこすなんて。
真っ赤な髪に、釣り上がった目。
魔族としてはそれほど珍しくない髪色に、瞳の色。
くりくりな目に涙を湛えて、
「お兄ちゃん、悲しいね。可哀想。我慢して、えらいね。」
彼女は、私のために泣いた。
泣きながら、力任せに封印を破壊した。
愛の化身であるはずの私は、その涙を理解できなかった。
だって、私は人間たちを愛しているのだから。
何が悲しいというのか。
だが、私のために流されたその涙は、とても暖かかった。
◇◇◇◇◇
「んー?なんか変な夢見たかも。」
「急に来たと思ったら、いきなり寝こけるんだもん、あんたも無茶苦茶よね。」
どこか神秘的な雰囲気のある部屋の中。
ソファーにもたれかかって寝てしまっていたらしい。
「まぁまぁ、巫女姫にしてあげたんですし、休憩室くらい提供してくれてもええですやん。」
しかし、魔族が聖女ねぇ。
8000年前の少女に、あの聖女を重ねる。
まぁ、初代魔王の末裔ではあるし、多少似ててもおかしくはない。
神王が唯一無二なのに対し、魔王は寿命もあり結婚もし、子供も作る。
死ぬとその資格が血縁の中の一番濃い者に移るだけなので、ある意味永遠の存在だ。
逆に、どれだけ薄くなっても、初代の血が入っている限り、魔王になる可能性があるのだが、基本は一番血の濃い実子へと引き継がれる。
人間はすぐに政権争いとやらをするが、魔族にはそれが無い。
魔王は絶対的な存在で、魔族は魔王に敬愛の念を抱いている。
私利私欲のために王を討つ者は、蔑まれ、憎まれ、次期王として君臨できない。
私も、そう有りたかったな。
不完全となった神王は想う。
「で、どうだった?規格外の聖女見てきたでしょ?あの体が欲しいんだけど!」
コロコロと笑うピンクの髪の少女。
中身は、何千年も生きた亡霊だ。
「その身体を手に入れるために相当無理しましたやん。こんな近々にもう一回なんて、できるか自信ありまへんけど。」
「やってよ!この体が聖女だって予見したのに、なぜか聖女の力がないんだもん、ハズレじゃん!私は、こんな不自由な生活は嫌よ!」
醜く顔を歪めて叫ぶ。
そもそも、こいつが邪魔をしなければ、彼女の魂を見失う事なんて無かったのに。
捻り潰してやりたいほど愛しいが、駒を減らすのはダメだ。
愛に歪んだ憐れな亡霊。
そして、互いを傷つけ憎み合う人間たちも。
殺してしまいたいほどに、本当に、心から愛おしい。
更新が遅くて申し訳ありません。
これからもよろしくお願いします。
次回は、おそらくクリスマス特番?だと思います。




