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聖女さまは魔王を守りたい  作者: 朝霧あゆみ
聖女様の帰還
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転生悪女は何も出来ない

別視点のお話です。

自我がはっきりしたのは、もうすぐ2歳になろうかという頃。

よちよちだが、歩けるようになり、あーだのうーだの、喃語を話せるようになったまではよかった。

しかし、周りの音は曖昧にしか聞こえないし、そのうちはっきり見えるだろうと思っていた目も、いつまでもぼやけたままだった。


おそらく、この体は()()()()なのだろう。

……マジかよ!?


おかげで、2歳になったというのに、周りの人ときちんとしたコミュニケーションが取れない。

2歳といえば、カタコトの会話ができる頃でしょうよー!!


大まかに聞き取れた言葉を総合すると、私の名前はイザベラ。とある公爵家の1人娘で、不治の病故に10歳まで生きられないんだとか。


だが、私は……それ自体は悲観していない。


生まれついての婚約者であるこの国の第二王子の名前を聞いた時、どこかで聞き覚えのある名前だなと思ったんだ。


同じ歳の近衛隊長の息子の名前も。


ある日、ぼやける目で改めて鏡を見たその時、「中森彩香」という名前が突然頭に浮かんだのだ。

なんの変哲もない、()()()()()()の名前と記憶。


間違いなく、私は地球生まれの日本人なはずだ。

さらに、2歳ではない。

……35年間生きた記憶がある。


なのに、鏡に映るのは……ぼやけた目に映る、褐色の肌、ルビーのような瞳、額に輝くエメラルドの魔力結晶が映える少女。


不幸中の幸いで、難聴とはいえ、耳も全く聞こえないわけではない。

目も、かなり酷い近眼と言ったところだ。

本来()()()()()()()()()()だったはず。

それを思えば、ラッキーなんだろう。


だが、人の顔も相当近づかないと判別できない。

さらに、エコーがかかったように、雑音とともに聞こえるこの耳のせいで、人を見分けたり、言葉を覚える作業が、とにかく難航していた。


悲観していない理由はひとつ。

種族不良で短命なイザベラは、王子が連れてきた聖女と呼ばれるふわふわピンク髪の、不思議な魔法使いの少女によって、6歳になる前に、病を克服するはずなのだ。


その後の大まかな流れも分かっている。


治療を機に、その聖女と仲良くなるが、大好きな婚約者の王子と恋仲になった()()()を虐めまくり、最後は、愛想を尽かした聖女と主人公に反撃され、王子に愛想を尽かされ、勘当され、のたれ死ぬという流れ。


いや、婚約者がいるのによその女とイチャイチャする王子が一番悪くね?イザベラ、そんなに悪くなくね?

とは思うが、まぁ多少強引なのは仕方ない。


これは「赤い月夜の夢」という乙女ゲーのメインストーリーなのだ。

その中で、私ことイザベラはいわゆるライバルキャラ、というか、悪役である。

メインストーリーでは王子と身分違いの恋に落ちる主人公に、嫌がらせをする役で、他の分岐でもことごとく邪魔をして処刑されたり追放されたり、まぁ、なんとも迷惑なキャラである。

性格も悪く、高飛車で嫌味。贅沢三昧な日々を過ごす。

他のキャラに対して絡まないストーリーですら、王子と結婚したのち血税を湯水のように使い、処刑されたりとか。


……いやだぁぁぁあ!!!


なんで、若くして死ぬ以外の道がないのよ!!


病は治るのが分かってるからいいけど、そのあとは、20歳にもならずに死ぬわけだよ!?

とにかく、どんなことがあっても主人公には近寄らないぞ、という強い決意のもと、ここまで生きてきた。


そして、今日。

やっと5歳になり、そろそろ聖女と呼ばれるピンク髪に、会うはずなのだ。


だが、少し変な話も聞いた。

ついに現れたと噂の聖女は、()()らしいのだ。

そんなわけはない。

あの、ふわふわしたピンクの髪は、ゲームのパッケージにもあったし、忘れるわけはない。

案外登場回数の多いキャラなはず。


しかしながら、不安になり過ぎて、父親にピンク髪の少女の話を聞くと、帝国の巫女が珍しいピンクの髪だったが、その他はあまり聞いたことがない、と。


何で何で??


メインストーリーから離れてる?

昔読んだことのあるネット小説を参考に死亡エンドを回避しようとしていたのに、ここまできてキャラの見た目や登場人物が違うなんておかしい。


あまり大きくメインストーリーから外れてしまうと、回避の仕方がわからなくなる。


いや、まぁいいか。

とりあえず主人公……私の婚約者と恋仲になるはずの女と関わらなければ済む話。


そう思ってた。


だが、今回、更に訳のわからないことになっている。



王が、私を連れ出し、「自分の娘」と言いながら聖女を探しているのだ。

いや、確かに、王子と結婚したら娘になるかもしれないけど、気が早すぎないか?


そんな事を思っていると、衝撃の事実が明らかになった。

私の耳がほとんど聞こえないと思って油断していた王と従者の話が聞こえたのだ。


要約すると、私は王と使用人の子で、更に種族不良なので体裁が悪い。

そこで、同じ日に生まれた信頼できる公爵の息子と取り替えたと言うのだ。


……マジかよ。

ファンタジーとはいえ、やる事パネェな。


結婚させれば、家族になるし問題なし!

みたいな感覚なのか?


そんな裏ストーリー、あのゲームにはなかったと思うんだけど。

事実は小説よりきなりってやつなのかなぁ。



そもそも、王子が連れてきた聖女と会うはずなのに、私が王に連れられて聖女に会うとすれば、その辺もストーリーが違うよね。


攻略対象の竜族の少年や、精霊の少年なんかも会えるのを楽しみにしていたけど、こんなにめちゃくちゃなら、ストーリーの通りに会えるとは思わない方がいいんだろうな。



はー。

深く考えるのはやめよう。

上手くいけば、明日にはこの不便な目も耳もすっかり治るんだから!


……魔族になっちゃうらしいけどね。


それは、ストーリーで知ってるから、覚悟はできている。

魔法使えるようになるんだろうし、いいじゃんいいじゃん!


追放されたら、地球の知識を活用して魔王に取り入ってみようかな。

死ぬ気になれば何とでもなる!


アラフォーのオタクは、思い切りが大事!


明日はナルノバ王国の国王に謁見するらしい。

上手くいけばその時に聖女に会えるのだろう。


目指せ老衰。

健康な体で自然死を目指す、魔族の幼女の物語。


……うん、売れそうにないから、多分私は主役じゃないんだろうな。


そんな事を考えて苦笑する。


普通に生きている限り、誰もが主人公なんだ。

だから、ゲームみたいに「主人公」なんて言う存在がいるのはおかしい。


そういう個人の自我のせいで、この世界はストーリーの通りに行かず、歪んでいるのかもしれない。



ま、明日になれば何かわかるかもしれないし。

聖女と仲良くできるといいな。

また、滞り気味ですが、少しずつ更新していきますので、気長にお待ちください。


これからもよろしくお願いします。

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