聖女さまと竜人
説明部分が多いので、短めですが投稿します。
多少辻褄が合わない部分は、後日調整予定ですので、大目に見ていただけると幸いです。
「まさか、ご本人が直接来てくださるなんて思いもしませんでした。我々が待ちに待った聖女様。貴女を得るために、各国は血眼になっていますしね。」
にこやかに語るのは竜人のリンシェン。この孤児院の責任者だそうだ。
その隣には、敵意むき出しの少女、リファーが控えている。
大型の爬虫類が魔力を帯びて竜になった中、蛇が偶然神の気を帯びて現れたのが青龍の始祖と言われているが、本当のところは定かではない。
一部で「竜人」と呼ばれるのも、人々が、人の姿を好む彼らを亜人に分類するのか、天使に近いものとしてとらえるのか、それとも竜種とするのか悩んだ結果なのだろう。
人や魔族が生まれるより遥か昔から、彼らはこの世界に存在しているのだから。
戦闘力では古竜に匹敵するものの、彼らは争いを好まず、時には人と関わり導いてきた神の代理ともいえる存在でもある。
聖女教のように、一部の国では青龍を『龍神』として祭る龍神教まであるほどだ。
まぁ、それも龍神を通して最終的には主神を祭っているのだろうが。
「いや、まあ、成り行きでね。まだ公表するつもりはないんですけど。」
「確かに、それは良い判断です。まさか、魔族が聖女だなんて、天地がひっくり返ってもあり得ないですから。どういう経緯があったのか、詳しく知りたいところですけれど……。」
そう言ってリンシェンは探るような視線を私に向けた。
現状は、角も取って有るし、羽根も隠している。
「詳しく、と言われましても。父が魔王で母が人間、という以外に何もありません。」
そう。実際のところ何故私が聖女なのかもよく分からない。
普通に考えれば、一番生まれてはいけない場所だとさえ思う。
「魔神の加護と主神の加護を半分ずつ持っているだなんて。なんて面白いのかしら。」
くすくすと笑う。
とりあえず今のところ敵意は無さそうで助かるが、正直、父様に言われていた『手を出してはいけない者』のうちの一人である。争いになると、どうなるやら。
「あなたは、真実を知りたいですか?」
リンシェンは、突然真面目な顔をして、私を正面から見据えた。
「知りたいわ。何故、私たちがこれほどまでに忌み嫌われているかもわからないし。」
私が答えると、彼女はうんうんと頷いたのち、リファーを部屋から出るように促して、結界を張った。
あまり聞かれてはまずい話なのかと思い、二人きりになった方が良いのかどうかを問う意味でアレクシスたちを指さすが、小さく首を振って否定した。
「彼らも聞いておいた方が良いでしょう。特に、勇者と、側近の貴方。」
アレクシスと、何故かゼルを指さして微笑んだ後、話をつづけた。
「もともとの聖女の役割って知っていますか?」
「いえ。人間を守り導くという話は聞いたことがあるんですけど。」
私の回答にうんうんと頷くと、続ける。
「聖女は、バランスを整えるため存在なのです。」
「バランスを整える?」
「この世は、光をつかさどる主神と、闇をつかさどる魔神が作った世界です。どちらかに力がが偏ることを、二人の神は望んでいません。昔は人間は神気を、魔族は魔力を扱っており、世界は等しく在りました。」
「何だそれ。神気なんて、天使か聖女しか扱えないだろ。」
それまで沈黙していたアレクシスが、怪訝な顔をしながら口をはさむ。
そりゃそうだ。
神気とは神から与えられた力で、聖女が扱うキラキラの魔力がそれにあたる。
それを、全ての人間が当たり前に使えるなど、在りえない。そんなことがあれば、聖女を奪い合い戦争が起きるような今の状況になるわけがない。
「しかし人は、いつしか信仰を忘れ、魔力の便利さに惚れ込み、神気を捨て、魔力を得ようとしたのです。」
「……何で?」
「私には分かりかねますが、人々は守り癒す力よりも、攻撃し、奪う力に魅力を感じたのでしょう。しかし、もともと神に作られた体に魔力は馴染みづらく、しかし一度魔力を受け入れた体に神気は戻らず、結果、人間は神気も扱えず、魔力も中途半端にしか扱えない存在へと堕ちたのです。」
いきなり、おとぎ話を語られても、頭が付いてこないのだけれど。
そして何より。何故この青龍族は、それほどまでに詳しいのか。
そんな経緯があるなら、そもそもなぜ人族と魔族がいがみ合うことになるのだろう。
「あなたは、いったい何者なの?青龍って、みんなそうなの?」
「私たちは、神より、人々を導き守るよう定められた存在です。貴女の父が、魔族を導き守るように。」
独特の香りのするお茶を一口すすると、にっこりと笑った。
「じゃぁ、今人間がどんどん弱体化しているのって……。」
「人の祖先が無理やり取り入れた魔力が、元あった場所へと還り、数少ない神気を持った人間たちも世代を重ねるごとに神気を無くしている結果、ですかね。私もそこまで詳しいわけではありませんが。」
「じゃあ、最終的に人間たちは魔力も神気も無くすの?」
「いいえ。そこで造られたのが貴女達ですよ。」
そう言って指先にキラキラの魔力を集めて見せながらリンシェンは言った。
「見ての通り、私も神気を使うことはできますが、先ほどのリファーとほとんど変わらないレベルです。一年間魔力をためて、ようやく一本のエリクサーを作れるといったところでしょうか。ただ、神気というのは魔力を取り込むのです。なので、強い魔力を持つものに敵対すると、その魔力を取り込んで、ある程度、行使できます。だからこそ我々は、古竜に引けを取りません。
相手を弱体化させ、その力を持って戦うのですから。ですが、やはり、限界があります。それこそが、人間が魔力を求めた所以なのでしょうけどね。」
「だから、私の魔力って底なしなのね。」
生まれてこの方、金色の魔力も、普通の魔力も、私は限界を感じたことがない。
使い果たしたことも無ければ、ほかの人たちのように魔力切れも起こさない。
不思議ではあったけれど……。金色の魔力が周りの魔力を取り込んでいるからなのか。
良かった、限界に挑戦とか、しなくて。
「人間側の神気の低下じたいは神たちも気にしていませんでした。しかし、それによって人が弱くなり、魔族や魔物に全く勝てなくなることで、パワーバランスが崩れることを神々は良しとしませんでした。きっと争いの火種になるだろう、と。そこで、作り上げたのが聖女と勇者です。手遅れになってしまった今、多くの人間に神気を与えることはできないので、代わりに魔力を与えることで均衡を保とうとしたのでしょう。」
もう、私の脳の限界を超えているので、あまりいろいろ新事実をぶち込ま無いでほしいです。
私はぐるぐると目をまわしそうになっているが、彼女はお構いなしに話をつづける。
「聖女は、片っ端から魔力を取り込み、それを周りへと還元します。還元された人々や勇者は強い魔力を得ます。また、聖女が神気をバラまくと、神気を持ちやすい体質の人へとうまく染み渡り、その人やその子孫が神気を扱う事が出来るようになります。聖女と勇者が魔王に挑むことで魔族側から余剰な魔力を汲み上げることもでき、これが、神と魔神が作り上げた人間救済のシステムです。」
なんてことだ。
神気……つまり、回復魔法を使えるのが一部の人間だけだったのは、そういう過去があったからなのか。
そして、本来魔力と神気をバラまきながら旅をするはずの聖女が魔族領にこもっている。
その結果、魔族が力を増し、人間は弱体化を続ける。
「しかし、私も驚きました。神気と混ざった魔力を作れる存在になってしまうなんて。」
「はい?」
「あなたが、ハーフなせいでしょうけど、黒と白を均等に混ぜる力、ですかね。普通は神気と魔力を別々に行使し、魔力を取り込んで魔力として使うはずの聖女が、神気と混ざった魔力をバラまいているとなると……。」
「……。となると?」
「本来、身体を強化する魔法を使っての治癒をすることしかできないはずの魔族が神聖魔法を使ったり、魔族や人間の分け隔てなく、際限なく強化してしまったりですかね。」
なぜ今まで魔族は神聖魔法を使えなかったのか。
何故私が教えると使えるようになったのか。
ゼルやロベルトのように、特殊な血を、色濃く引くもの以外、上位の回復魔法すらも使えなかった。
なのに、魔族でも、教えれば、魔力を行使して回復魔法や神聖魔法が使えるなんて、私の大きな勘違いだったのだ。
私が、特殊な魔力を分け与えたことにより、一部の魔族が特殊進化した形となったのだろう。
「私たちの魔力が、極端に増えたのもなの?」
ハンナが問うと、リンシェンはにっこりと答える。
「正直、今この場で殺しておいた方が良いのではないかと思えるほどに、あなた方はこの特殊な聖女の恩恵を得ています。」
おいおい、物騒な。
一瞬ゼルの魔力が膨れ上がるが、リンシェンは笑みを崩さない。
「ゼイル。落ち着きなさい。私たちは敵ではないと、いつも言っているわ。」
彼女は、ゼルの事をゼイルと呼んだ。
その瞬間、ゼルの目が金色に輝き、膨れ上がった魔力が四散する。
私たちが混乱する中、当の本人は、毒気を抜かれたように、キョトンとした表情でリンシェンを見つめていた。
いつも感想やコメント、ブックマーク等ありがとうございます。
健康だけが取り柄だったはずなのですが、最近、子供たちと一緒に体調を崩しまくり、てんやわんやしております。
ここのところ更新が遅れ気味ですが、最低でも週1、できれば週2を目指して頑張りますので、これからもよろしくお願いいたします。




