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聖女さまは魔王を守りたい  作者: 朝霧あゆみ
聖女さまとラザン帝国
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聖女さまと聖女教

「ピクリとも動かなくなりましたね。」

「これがパワハラってやつか。」

「違うと思うの。」


こちらを見る事すらしない、特殊ガーゴイル君。

その前を通り抜け、私たちは教会へと入っていった。


裏手には孤児院も併設している大型の教会で、少なからず参拝に訪れているのであろう人々の姿がある。

懺悔室に、大型のオルガン、そして、聖女を象ったらしい像。


「あー……。これが聖女なのであれば、ばれるとは思えませんね。」


小さな声でゼルが呟く。


「殺すよ?」


反射的に言ってはみたものの、流れるように美しい髪と、柔らかな微笑みを湛えたその美貌。

後ろのステンドグラスのイラストが、像の美しさを引き立てている。


「聖女さまは、プラチナブロンドなの?」

「いいえ、聖女さまは、歴代の皆さまがそれぞれ、見た目も性格も異なります。この像は、大聖女カムラ様のお姿だと言われております。」


ステンドグラスの聖女のイラストを見たハンナのつぶやきに、近くにいたシスターが答えた。

何処に行ってもちらつく大聖女カムラ。どうも、人々の印象と本来の姿がかけ離れている気がするのだけれど。気のせいかなぁ。


「この世界を救い、人々に永久の安寧をもたらした大聖女さまは、今でも厚い信仰の的です。」


頼んでもないのに、にこやかに解説をしてくれる。


「この教会も、聖女教ってことですよね?」

「そうです。帝国は、聖女教を信仰し、聖女さまを通して神の加護を得て、これほどまでに繁栄しているのです。もうすぐ、今代の聖女さまもお姿を現してくださることでしょう。」

「聖女教って、聖女を召喚したりします?」


突然アレクシスが本題をぶち込むが、シスターは特に顔色を変える様子はない。


「召喚?まさか。聖女さまというのは、神の加護を得て生まれてくる女性です。悪魔のように召喚して現れるようなものではありませんよ。」

「……ですよね。なんか、そんな話をちらっと聞いたもので。」

「確かに、噂として聞いたことはあります。真・聖女教を名乗る集団が、聖女様を召喚し、この世の悪を一掃しようとしている、とか。でも、聖女様を召喚することなんてできませんし、聖女様自身はそれほど高い戦闘能力はありません。勇者様方が協力して初めて悪魔や魔族と戦う事が出来るのです。

何でも、今代の魔王は特に恐ろしい力を持ち、虎視眈々と人間の殲滅と世界征服を狙っているとか。それを阻止するために、帝国の連合軍は討伐隊を編成し、命がけで戦っているのです。

それに、下手に召喚なんてしてしまったら、劣化悪魔や魔物なんかが沸いてしまう危険もありますので、安易な召喚魔法は禁忌とされていますしね。」

「へ、へぇ……。」


召喚のお守りをポケットの中で握りしめて目を逸らす。

禁忌と言われる召喚をホイホイ行っているが、ちゃんと安全には気を付けている。

私が(エミール)魔王(とうさま)を呼ぶ際には、完全なる道を作り、完璧な制御の下、相手の同意をもって行う召喚なので、召喚というよりは召喚魔法を利用した転移ともいえる。

なので、召喚の際に歪が生じたり魔物が沸くなんて言うことはないのだが、無理やり空間を捻じ曲げて、同意のない相手を力づくで引っ張り出す召喚は、同時に隷属の魔法を組み込んだりと細工も多く、どうしても完全に制御することは難しい。


「過去に魔王や魔王の側近を召喚しようとした人がその場で灰になり、漏れだした魔力と魔物で国が一つ滅びたとか。本当に恐ろしいです。」

「ですねー。」


適当な相槌をしながら、教会の中を見回す。

中には数名のシスターと、参拝者。しかし、何か視線を感じるのだ。

気のせいかと思ったが、やはり何となく落ち着かない。

私がキョロキョロし始めたのを見て、退屈し始めたと取ったのだろう。シスターは、軽く会釈して言った。


「それでは。皆様に聖女様の加護がありますように。」

「ありがとうございます。」


私たちは軽く頭を下げると、そのシスターから離れた。

そして、視線の主を探す。私の様子を見たゼルが、怪訝そうな顔をしたのち、一つの扉の陰を指さした。


「あそこですね。」

「ひっ!」


さっと逃げ出そうとする少女。しかし、慌てすぎたのか逃げ損ねてほかの参拝者にぶつかり転ぶ。


「何なの?何か用?」


道をふさぐように少女の前に立ちはだかると、目を全力で泳がせながら少女が言った。


「なんっ!なんなの!おかしな匂いがするから見に来たら、白いのに真っ黒じゃない!あんた、まぞ、むぐっ!」


なんかすごいことを口走りそうだったので、とりあえず口を塞ぐ。

もごもごと暴れるが、助けを呼ばれる前に存在感を希薄にする魔法をかける。

これで、よほどのことがない限り他人が私たちを認識することはない。


「なかなかに乱暴なの。」

「だって、なんかいきなり騒ぎ出すからさ。」

「騒ぐ相手を力任せに口封じするとか、なかなかあくどいの。」

「むぐー!むぎぎー!」


いくら魔法をかけているとはいえ、あまりこんなところで騒がれたくはない。

そのまま少女を抱えると、そそくさと聖堂を後にした。

教会の裏手、孤児院付近の人気の少ない場所へ行ってから少女を放す。


「あ、あんた!何で魔族がこんなところにいるのよ!私の目は誤魔化せないんだからね!」

「いきなり何なのよ。多少人より魔力が多いかもしれないけど、人間よ?」

「嘘つくんじゃないわよ!私の目は誤魔化せないわ!あなた、魔神の加護で真っ黒だもの!」


赤毛の少女は、腰を抜かしたままその場で暴れている。

どうやら腰が抜けて歩けないようだ。


「まぁまぁ、とりあえず落ち着くの。取って食ったりしないの。」

「近寄らないでよ、汚らしい獣人が!」

「うん、殺そう、なの。」

「お前も落ち着け、ハンナ。」


宥めようとしたハンナがキレたあたりで、見かねたアレクシスが仲裁に入る。


「お、お前も何なのよ!?おかしい、青色はお前じゃない!」

「なっ!」


ゼルとジークハルトは顔を見合わせ、アレクシスはその場で固まっている。

青、というのは、ヒメの言っていた勇者独特の魂の色で、竜族などの特殊な種族だけがかぎ分ける事が出来るらしい。

それをこんな人間の少女が?


興奮状態の少女が髪を振り乱したその時、その額に、何やら変なマークが見えた。

これは……。


「聖女の加護を持っていますね。」

「こんな子知らないけど。というか、ちょっと柄が違うし。」


そう呟いた後、薄く輝くそのマークを、私は()()ほど見たことがあることに気が付く。

一度目は、ヒメのおじいちゃんの手。

二度目は、さっきの聖女の像。


「これってもしかして、大聖女カムラの加護?」

「様を付けなさいよ、この薄汚い魔族め!」


何故、7000年も前の聖女の加護を持つ少女が?

普通、聖女の加護は与えた聖女が死んだ時点で薄まり、数年で消えるはずだ。まさか、7000年も残るわけはない。というか、古竜のジジイならまだしも、こんな少女が7000年も生きているはずがないし。

ジジイの手にあった聖女のマークは、加護の証というよりは焼き印だった。だから聖女の加護だとは思わず、オシャレジジイの刺青のようなものだと思っていたのだが。

まさか、あれも……?


色々と考えを巡らすが、よく分からない。


「大聖女って、とっくに死んでいるじゃない。」

「彼女は何度も復活するのよ!神の使いなんだから!」


うん、やっぱりよく分からん。聖女が復活システムだったら、私はいったいなんやねん。

腰を抜かしてプルプルしている少女から視線を外し、アレクシスたちの方を見るが、全員意味が分からないと首を振る。


「この悪魔め!魔族め!消え失せろ!」


少女が、薄い金色の光に包まれる。

かなり弱いとはいえ、これは紛れもなく聖女の魔力。

どうなっているのかと思っていると、その金色の光が広がり、私たちの方に飛んでくる、が。


ゼルとハンナは少し顔を顰めたものの、大した変化はない。

アレクシスに至っては、光を吸収し、なんだか少し血色がよくなっている。

私はというと、金色の光がまとわりつき、アレクシスと同じく吸収して消えた。

ジークハルトには、光が纏わりつくことさえしなかった。


「何で!?魔族をやっつける力なのに!」

「やめなさい、リファー。」


そんなことをしていると、孤児院の方から一人の女性が現れた。

白髪の混じる、そこそこ歳のいったシスター。

勇者シンディと大差ないくらいに見えるので、70歳前後だろうか。


ちなみに、まだ私は、魔法を解いていない。

私の魔法が発動している状態で、状況を察し、止めに来たというのか。


「ようこそ、初めまして。うちの子がご迷惑をおかけいたしまして、申し訳ありません。」

「いいえ。それより、あなたたちは、何者ですか?」


まじまじとその姿を見ながら、問いかける。


「私は、この孤児院の責任者を務めております、リンシェンと申します。あなた方には隠しても仕方ないので言いますが、青龍ですよ。」

「青龍……!」


不思議な力を持つ、独特の形をした龍族で、人の姿を取っていることも多く『竜人(りゅうじん)』と呼ばれ、神聖視されてる。

魔族やほかの竜族と違い、神の加護を得ている種族なので、人々に迫害されることも無く、程よい距離で共存していると聞く。とはいえ、めったに人前に現れることも無く、閉ざされた山奥にひっそりと暮らしているらしいが、何故こんなところに。


「私ははぐれの竜人です。人の血を受けて生まれたので、ハーフ、というところでしょうか。たまに神託をお伝えしたり、子供たちのお世話をすることで、ここで暮らしているんですよ。」

「では、その子は?」


青龍のリンシェンに抱きかかえられ、やっとの事で立ち上がったリファーと呼ばれる少女。


「この子は、私にもよく分かりません。大聖女さまの加護をもっている子供、と言う事しか……。生まれてすぐ、教会の前に捨てられておりました。何故か魔族を見抜いたり、弱いとはいえ、聖女の魔力を扱います。しかし、私が下した神託の聖女ではありません。それは貴女が一番よく分かっていると思いますが。」

「……。15年前に聖女が生まれる予言をしたのが、貴女なのですね。」

「ええ。なかなか見つからないので、私も相当肩身の狭い思いをしたものです。」


そういって笑う。

うう、なんか申し訳ない気持ち。


「あの、それは……。」

「良いのです。貴女のせいではありません。しかし、なるほど、世界中が血眼になって探しても見つからないわけですね。こんなところで立ち話も何ですので、中へどうぞ。リファーも、歩けるわね?」


リンシェンはリファーを支えながら、孤児院の中へと私たちを案内したのだった。


どうも体調が本調子に戻らず、更新が遅れ気味です。

更に、来週は、子供の運動会の準備等で時間がとりづらいため、更新が遅れ気味になる可能性がありますが、最低でも週1以上の更新を目指しますので、ご了承ください。


これからも、どうぞよろしくお願いいたします。

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