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IF〜もしも男子校にTS娘が入学したら〜  作者: 中内達人
1章:〜もしも男子校に女1人で転入したら〜
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IF8.〜もしも友達とご飯を食べたら〜

 とりあえず飯食おうぜ。俺がそう言って食事の提案をすると、とくに何か異論があるわけでもなく、そのままご飯ということになった。

 そのため、俺は大宮と二人で、食券売り場に来ていた。見上げる大宮は、どことなくそわそわしている気がする。


「ね、ねぇ?」「は、はい!?」「いや、そんなにビクビクしなくても…………」

 大男がキョドっているのを半笑いで見ながら、話を続ける。


「ねぇ、まだ名前、聞いてないんだけど?」

 やっぱり、早めに聞いておかないと、会話の中でぽろっと出てしまう気がする。気をぬくと、こいつの事を大宮と呼んで、怪しまれてしまう。


「あ、えと、大宮春紀と言います…。あ、あなたは?」

 なんでこいつはいつも緊張すると声が低くなってテンションが下がるんだろうかと疑問符を頭に浮かべながら、返答を考える。


 ………さて、なんと答えるべきだろうか?

 本名を言うべきか?言ったところでバレない気もするが、なんとなく、呼ばれるたびにビクビクしてしまいそうで怖い。

 そんなに自分の名前を怖がりたくないから、偽名を使いたいけど…………


 でも、もし中学校に戻れるとしたら、こいつと会うわけだよな………………?そしたら、俺の名前は適当に決めれないってことになるじゃん!

 もしここで言った名前と、会ったときに名乗った名前が違ったら、弁明が面倒くさいよな?てことは、今ここで、女の子でいる間使う名前を考えるわけだ。


 …………っく、ここは、俺の苗字を使うか…………


「え、えと、日比野!下の名前は…………」

 どうする?どうする?どうするどうするどうするどうする?ヤベェぞ、大分ヤベェぞ。

 だって俺、女の子の名前を語るのがスッゲェ嫌なんだ。誰からも女の子の名前で呼ばれたくない。俺が男であるということを、この世にとどめておきたい。


 もしも俺がここで全く関係のない名前を言ったらどうなると思う?答えはすなわち、俺がこの世から消えてしまうということだ。


 ……………でもやっぱり女の子の名前しか思いつかない。


「…………さき。さ、さき!日比野咲だよ!?」

 くぅ!これしかなかったんだぁ!俺の名前を忘れさせなくて、その上で女の子の名前なんて、こんな安直なのしか思いつかないだろう?やっぱり命名って鬼難しいんだな……………


 でもまぁ、言っちゃったものはしょうがないし、もう変えようがないから、このままいくしかない。


「あ、じゃあ、よろしく、日比野さん」

 うん、だから暗いって!いつもお前そんなんじゃないやん!まぁ女の子と二人きりでいるのがとてつもなく労力のいることっていうのは、わかるんだが………


 いや、こうなったのは俺のせいだ。俺がここにいるからこいつはこんなに緊張しているんだ。

 だったら、俺がこの空気を打破するしかない!


「ね、ねぇ!大宮君は何を頼むの?」

 くそぉ!考えた末にこれかぁ!コミュニケーション能力の低さがここで滲み出てきたぁ!

 てかなんで俺も緊張してんだ?


「え、ええ?えっと僕はラーメンです」

「何ラーメン?」

「いや、その場で決めます」

 シーン。


 いや会話終わっちゃったよ!早いよ終わらすのが!なんでそんな返事しかできないんだよ!


「え、えと、あの、大宮君はどこの学校に行ってるの!?」

 だからなんで俺がこんな慌ててんだ!?俺は冷静で落ち着かなきゃいけないんだよ!分かってるだろ?俺!?


「あ、えっと……三吉原中です」

「え、ああ…………」

 って、ああ!いかんいかん!俺も通ってるから忘れてた!あそこ、結構頭いい学校なんだった!

 俺の周り、ポンコツな奴が多かったからなぁ…………俺も含め。


「あ、ああ!おお、凄いねぇ!へぇ、受かったんだ、あそこ難しいよね!?大宮君頭良かったんだ!」

「あーいや、そんなことないですよ………」

 シーン。


 いやだから、なんでこんな早く会話を終わらせるんだよ!?もっとあるだろ!?俺に学校を聞いてくるとかさぁ!まぁ大したこと答えれないけども!


 てかまだ食券買えないのか!?長い!長すぎるよぉ!

 なんだよ、なんでこんなフードコートで大行列並ばなきゃいけないんだよ!くそ……………世界が俺を敵対しているんだな………………


「あの………?」

「ん!?あ、ひゃい!?」

 な、なんで急に話しかけてくるんだよ?お陰で変な声が出ちまったじゃねぇか。


「あの、僕を気遣ってもらわなくて結構ですよ?」

「……え?は?ど、どういうこと?」

「だから、気遣わなくても…………」

「いやそれは理解してるよ」

「じゃあ、そういうことです」

 な、なな、なななななななななななななな!ガーン。

 なんで、なんで俺にそんな冷たいんだ?

 初対面の人ってだけで、そんな冷たくしてくるものか?普通………………


 やっぱり迷惑だったかなぁ?俺、なんか怪しすぎるかなぁ?ど、どうしたらいい?どうしたらこいつとの関係を元に戻せるんだ…………?


 どんな話をすれば良い?こいつの好きなアニメとか?あ、でも急にそんな話されても気持ち悪いよな、じゃあ他に………

 ああくそ!思いつかねぇ!こんな事になるなら日常的にこいつとの会話を記憶してたよ!


「あ、あの?」

「…………どうしたら………………」

「あ、あの!」

「う、うぇい!?」

 だから急に話しかけんなよ!身構えてねぇと変な声が出るだろうが!………恥ずかしい。


「食券、買わないんですか?」

「………へ?しょ、食券?」

 視線を前に戻すと、そこには大きく構える大人の背中ではなく、ボタンの沢山付いた筐体がそびえ立っていた。


「先買って、先座ってますね?」

「…………え?あ、ちょ、ちょっと!」

 なんでこんな時に限って人の進みが早いんだ!?さっきまで結構長い列出来てたじゃないかぁ!


 まるで何かに追われるかのように大宮は、千円をくしゃくしゃにして入れて、機械を急かすかのように味噌ラーメンのボタンを連打する。

 そして出てきた少し丸まった食券を親指と人差し指で摘んで、お釣りの小銭を右手に握りしめて、そそくさと歩いて行ってしまった。


 ……………な、なんだよ、そんなに嫌か?そんなに俺と二人きりが嫌なのか?

 ふ、ふん!そこまでされると流石の俺もちょっとカチンと来るよ!あんな言い方無いじゃないか!なぁ?


 追いかけないからな?ぜぇったい追いかけないからな?追いかけて、たまるもんかぁ!


 さて!あんな奴ほっといてじっくり何食べるか決めようじゃないか!よく考えたら女の子になって初めてのご飯だし?よぉし、今日は贅沢するぞ!ちょうど結構なお小遣いも貰ったし?


 何食べよう?餃子定食?ラーメン大盛?チャーシュー麺にネギトッピングとかも良いなぁ!あ、でもこの体になって食べれる量も減ったし……………

 やっぱり普通盛りの普通のラーメンが良いよな?

 とすると、塩か醤油か、味噌か。


 ………そういえば大宮は、安くて量も普通な味噌ラーメンを買ってたような………


 あ、いや!あいつと一緒のなんて頼むかよ!どうしよう、何にしよう…………?

 やっぱり普通のラーメンなのに少しだけ値段の高い塩ラーメンと醤油ラーメンはなんだかもったいなく思えるな……………

 お金ならいっぱいあるのに、なぜか心を満たすものが足りない。あと、一歩なのに………!


 と、ふと味噌ラーメンのボタンが目に入る。さっき大宮が嫌という程連打していたボタンだ。

 なぜかそこが、光り輝いているように見えた。

 …………いや、きっと安いからだ!うん、そう、安いからこんなによく見えるんだ。


 そ、そうだよ!後ろも詰まってるし、安いし、量も普通だし、よし、味噌ラーメン麺にしよう!そ、そうしよう!……………な、なんかしっくりくるし?


 そう思って、千円を紙幣の入り口にねじ込む。千円で買えるラーメンや定食のボタンが、一斉に光を帯びる。ただしかし、その中でも俺が真に輝きを受け取っているのは1つ、味噌ラーメンのボタンだけである。


 その光輝くボタンを連打する。やはり、意味はないと分かっていても、落ち着かないから連打してしまうもので、さっきの大宮をバカにするような気持ちが馬鹿馬鹿しくなってきた。


 数秒の末、小さな食券が一枚出てきた。

 お釣りを全部とったかを見る間もなく、一心不乱に走る。食券をお店に出して、返事もろくに聞かずに、走る。


 行き着く先は一緒なのに、何故か走りたくなる。無性に走りたくて、追いつきたくて、大きな一歩をたくさん踏み出し、前へ前へと進んで行く。


 すると、そう広くもないフードコートのスペースの中に、歩いている見知った背中を見つける。


 ーーーーー飛び込みたい。

 そう思う本心を押し殺し、力の限り一歩を踏み出し、大宮の手を握りしめる。


 見上げた大宮の顔は、驚愕と照れ臭さに染まっていた。


「あ、あのさ!なんで、なんでそんな冷たくするの?」

 大宮は目を背けるが、腕を引っ張ってこちらに顔を向けさせる。目と目がしっかり合って、大宮の瞳に映る俺さえも分かるほどだった。


「構わないでなんて言わないでよ!話を強制的に終わらせないでよ!たしかに緊張するのは分かるけど、俺、頑張るから、だから、楽しいフリでも、してくれよ!」

 そう言うと、大宮は大雑把に頭をガサガサとかいて、大きく一回溜息をついた。


「いや、あの………….別に冷たくしてるわけじゃないんですけど……………?」

「………え?」

 ………………というと?

 あまりにも予想外すぎて、頭が追いつかない。


「いや、あの、緊張で上手く喋れなくて…………その、ウチ男子校ですから、女子に免疫がなくって………だから…………その………」

 どんどん言葉が尻すぼみになっていく。


 ………….つまり、全部俺の勘違いだったって事?

 やっぱり最初思った通り、緊張してただけだったのか?


「んだよ!それならそうと言ってくれよ先に!」

 照れ臭さを隠すように、わざと大雑把な口調で話す。


「あ、番号札貰い忘れた、ちょ、とってくる」

 その場から逃げるように、走って戻る。


 恥ずかしい、恥ずかしい恥ずかしい恥ずかしい恥ずかしい恥ずかしい!恥ずかしすぎるよぉ〜!


 勘違いだったのか………そんな事に俺の純情な心は振り回されてしまったのか…………


 …………なんだか腹立ってきたな?んだよ、紛らわしいことしやがって、この童……………


 ま、いっか!なんだか足取りが軽くなったし、心も浮いているみたいだ!


 その時の俺は、大宮とまた少しだけ仲良くなれて、結構、嬉しかったんだ。



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