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IF〜もしも男子校にTS娘が入学したら〜  作者: 中内達人
2章:〜もしも女の子に弄ばれたら〜
42/42

IF40〜もしもまた来たら〜

更新遅くてごめんなさい………

お待ちいただいた方とここまで見て下さった方々に、心からの感謝させていただきます。

 梨花さんにぐいぐい引っ張られながら門を出た。

 そしてその辺で、手を振り解く。


「ちょ、一体なんなんですか!?」


 俺が叫んでいる周りでは、俺たちを避けるかのように中学生達が列で帰っていくのが目に入る。


 皆んなが見ている中、俺は話を続けた。



「梨花さんは結局、なんでこんな所にいるんですか?」


「教えなぁ〜い」


「ぐっ………」


 むかっ。なんだよ、教えてくれたっていいじゃん。



「じゃあなんで、梨花さんは僕を引っ張って来たんですか?」


「ん〜?気分?」


 むかっ!


「もう!なんでまともに返事してくれないんですか!?」


「ん〜………?明日になればわかるから、かな?」


「明日?」


 なんでこんな含んだ言い方なんだろうか………?


 ここで教えてくれない事に何の意味もないと思うんだが………


「てかさ、早く帰ろーよ」


「え、えぇ?………まぁいいですけど」


 さっきから凄い目立ってるのは確かだしな……皆んなに見られて良い気分にはなれない。


 俺は梨花さんと連れだって、駅までの道を歩く事にした。


 男子校中学生の群勢の中に、俺と梨花さんの2人だけが女子という構図は、あまりにも異様に思えた。

 そしてその懸念通り、あまりにも目立ってた。


 目立つから帰ることを決意したのに、目立ちながら帰るんじゃ何の意味もないよね。


 だから脇道にそれて、なるべく人の少ない道を行く事にした。最終的には群勢と合流するんだけどな。


 脇道にそれて殆ど2人きりになると、梨花さんが先に口を開く。


「咲さぁ、なんか悩み事とか無いの?」


「え?」


 突然だったので聞き返してしまったが、よく考えてみれば悩み事があった。それもとびっきりの奴が。


「それがですね……なんか、誰か分からない人が、僕を貶める様な張り紙を貼って回ってるらしくて、それが学校で大問題になってるらしいんですよ」


「え?どゆこと?」


「なんか、僕が昔の友達と遊びに行ったら、それを隠し撮りされてたみたいで、『他校の生徒と遊びに行く痴女』みたいに誇張されて張り紙にされてたんですよね」


「え、うそ、マジ?しんじらんないね。じゃあアタシはめちゃくちゃな痴女って事になるワケ?」


「うーん、坊ちゃんだらけの私立校だから、そういう事になるのかな……」


 実際、他校の人と遊ぶのなんて大した事じゃない。そんな事で痴女とか言い出したら基本痴女しか結婚できない。


 だけど、そんな事実よりも、『誰かが俺を貶める様な張り紙をして回ってる』という事が大事で、問題は皆んなが俺を好奇の視線で見つめ、距離を置いてしまっているという事だ。


「ふーん、大変だね、咲も」


「………分かります?大変なんですよ」


 とここまで会話していると、すぐに駅に着いてしまった様で、普段の道を歩いてきた下校中学生集団と鉢合わせた。


 少し離れたところで群衆がみんな地下鉄の入り口に飲み込まれてくのはちょっと笑えた。


「あれぇ、めっちゃ混んでんね」


「そりゃそうですよ。毎日こんな感じです」


「はぁ、大変だね」


「そればっかですね。でもそうなんです、大変なんです」


「そうだよねぇ、やっぱり、女の子になった男子って、大変な思いするよねぇ」


「そうなんです、大変なんで………」



 俺は地下鉄の入り口に入ろうとする足を止めた。


 …………今、梨花さんはなんて言った?



「ん?どした?咲?」


 梨花さんはまるで当たり前の会話をしていたかの様に、全く悪びれも動じてもいなかった。


 自分の言った事に、気づいてないのか?それとも、俺が聞き間違えたのか?


 今この人、『女の子になった男子』って、言わなかったか?



「あ、あの?あの、梨花さん?もう一回、さっき言ってた事、言って貰っても良いですか?」


「え?どこ?」


「なんか………いや、うん、聞き間違いならそれで良いんですよ、うん、はい!なんでもないですはい!ごめんなさい変な事言って………」


「あ、まさか、咲の事元男だって知ってる話?」


「うん、そうです………ってえぇぇぇぇぇぇ!!!???なんで知ってんの!?!?!?」


 やっぱり知ってたんかい!!言ってた上でとぼけてたんかい!!


 てかなんで知ってるんだよ!?俺が教えた!?いや、そんなはずは……てか今朝「女なのに?」とか聞いてきたじゃんってあれもそういう『分かった上で』の発言だったって事じゃん恥ずかし〜!


 だとしたら俺はずっと女子みたいな所作で女子を演じる愚かな男子高校生だったというわけかよおい!誰か殺してくれ頼むから!じゃなきゃ自動的に死ぬ!!



 あまりに大声を出しすぎたせいで、男子中学生軍団だけでなく一般の通行人の人達まで俺を見てるが、そんなことは今どうでも良い。


 この人、マジでなんで知ってるの!?



「ちょっと咲?道で大声を出しちゃいけません」


「あ、ごめんなさい………って言ってる場合か!なんで知ってるんですか!?『あの事』を!」


「あー、それはねぇ……….」


 梨花さんは逡巡した後。


「明日になったらわかるから!」


 ニコッ、と笑顔になった。


 おい笑ってんじゃねぇぇぇぇ!ぶっ飛ばすぞおいぃぃぃぃ!!!

 と血が出るくらい拳を握ったが、ついぞ振るわれることはなかった。良かったね、世界が滅びずに済んだよ。



「じゃね、咲」


「え、ちょ、どこ行くんですか?」


「アタシ、今日はこっちから帰るわ!なんか、すっごい混んでるし!」


「は!?は、は!?」


 自由すぎないかこの人!?

 相手に気を使うとか、協調性とかそういう言葉は存在しないナポレオンなんですか貴女は!?


 かと言って、俺はついてくわけには行かない。

 なんてったって、ついて行くと遠回りになるからだ。


 ていうかこんだけ明日になったら分かるとか言ってるんだから、明日全部洗いざらいゲロってもらうからな………


 去って行く梨花さんを睨みつけながら思うが、よく考えたら連絡先とか全然分からない事に気づくのは、もう数分後の話。



 ++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++



 次の日。


 俺は今日とていつも通り学校へ向かっていた。

 学校行くのが憂鬱………けど、行かないといけないし……


 うだうだ考えながらも足を前へ前へ進めていけば、自然と学校に着いた。便利な体ですわ。


 今日は少し遅めで朝礼が始まるギリギリに着いた。

 まあ早く着いたところで話す相手も居ないし、皆んなが変な目で俺のこと見てくるしな。メリットがない。


 俺は下駄箱に入り靴を変え、7組の教室に入った。


 既に殆ど皆んないて教室は騒がしかったが、俺が入ると皆んなの視線が一度俺に向き、また喧騒が広がった。


 概ねいつも通り。


 来る時の掲示板には張り紙が貼ってなかった様だったし、先生が剥がしてくれたのか、もう貼られることはないのか。

 まぁよく分からないが、今日その話が先生からされることはなさそうだと安堵した。


 1つだけぽかんと開けられた俺の席に荷物を置いて座る。


 と、8時20分を知らせるチャイムが鳴り、同時に教室の前の扉が開き、先生が入ってきた。


 今日は随分と早いな………と少しだけ不思議に思っているといつのまにか皆んな自分の席に座っていた。


 つつがなく、朝礼は始まる。



「きりーつ、れい」


 挨拶をした後、先生は話を始めた。



「はい、今日は、大事なお知らせがあります」


 大事なお知らせと聞いて、クラスが少し静まった。


 ………なんだろう、大事なお知らせって。ここ最近張り紙の事件のせいでバタバタしてたのに、さらに何かあるんだろうか。



「入ってきて下さい」


 先生は、ドアに向かって声をかける。

 その動作で今から何が起こるのか分かったのは、どうやら俺だけじゃないみたいで、皆んなから声が上がった。


 がらがらと木の重いドアを開ける音と共に入って来たのは、()()()()()()()()()()()()


 もっと言えば、()()()()()()()()()()()


 そいつは落ち着いた黒髪で、だけど明るい見た目。



「やっほー、よろしくー」


 と軽く挨拶した声は、俺と同じく、女の声。



「急ですが、今日からこのクラスにもう1人、女子生徒が転入する事になりました。自己紹介して下さい」


「うぃ。アタシ、泉梨花。気軽に梨花って呼んでねー」


 クラス中が呆気にとられている中、俺だけは本当に意味がわからなさすぎて口をあんぐり開けていた。


「はは、咲の顔、ちょーウケる」


 正しくこの女性は、泉梨花であった。

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