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IF〜もしも男子校にTS娘が入学したら〜  作者: 中内達人
2章:〜もしも女の子に弄ばれたら〜
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IF37.〜もしも大宮に事情を聞きに行ったら〜

 放課中にチラシの真相を聞き出すことが出来ないような気がしたので、諦めることにして、仕方なく席に座る。


 そしていつぞやかにチャイム鳴って、が2時間目の授業が始まり、先生が入ってきた。


 むかむかしたまま起立と礼を終えて、早速チラシについてのことを考えることにした。



 チラシをみると、俺と透達が一緒にいる場面が激写されていた。たしかにこれでは遊び人と言われても仕方ないように思える。


 こんな1枚だけで学校中全員を騙すことなんて出来ないと思うが、もしかしたらそうかもしれないって可能性を俺に生じさせるだけでも良かったんだろう。


 だがこの角度、透達がやったものではないだろう。

 写真は、隠し撮りのような感じで撮られている。


 だったら偶然会った誰かの仕業か…………?


 でもそんなに俺を恨んでる人間なんかいるんだろうか。

 傲慢に聞こえるかもしれないが、この姿になって俺は、誰かに恨みを買うことはしてない気がする。


 ならもしかしたら、この学校の人じゃないのかもしれない。だとしたら、敵が多すぎる…………


 とりあえず、話ができそうな奴に話を聞くしかない。


 今はひたすら、授業が終わるのを待とう。

 とそう思ったんだが、どうも授業が頭に入ってこない。


 チラシが気になって気になって、とてもとても授業を聞けるような心境ではなかった。


 じゃあ寝ようか。今度はそう思ったのだが、そういうわけにもいかなかった。


 悶々とした気持ちと、心をかき乱すような焦燥感が心拍数を自ずと挙げて行って、口から血を吐いてしまいそうなくらい血圧が上がっていた。


 こんなに俺の心をざわつかせた奴を絶対に許さねぇ……!絶対に見つけ出して息の根を止めてやる……!


 と、漫画の主人公の様なことを思って、ただひたすらに、授業が終わるのを待った。




 +++++++++++++++++++++++++++++++++++++++




 体感時間数時間。現実時間数十分の長い長い授業を終えて、やっと解放された俺は、今度こそ!という意気込みと共に9組に行くことにした。


 信用できそうな奴は、坂本と大宮くらいだったからだ。そしてその2人のクラスは、9組。


 廊下に出ると、しーん、と静まり返った。

 まるで俺以外が人形になった様に、全員が動きを止めて、その不気味な2つのガラス玉で俺の方を見る。


 まるで視線に責め立てられている様で、気持ちが悪くなった。


 そんな俺を追う視線をこの細身に一身に受けながら、廊下を少しだけ歩くとたどり着く。


 少しだけの廊下なのに、途方もなく続く様に思えた。




 9組の教室に着いて強めにガラガラ、とドアを開けると、教室中の視線がこちらへ向いた。


 剥き出しの好奇心を隠そうともせず、歪んだ瞳で皆が一様に俺の方を見る中、大宮だけは俺に背を向けて友達と話をしていた。


 そしてその友達に言われてか、俺の方に気がついた。


「あ、おおみ………」


 と手を挙げて挨拶しようとした時だった。


 なんと大宮は、またもやこちらに背を向けて友達と話をしだしたではないか……………!


 どんだけ興味ないんだよ俺に。


 大宮に無視されて所在なさげに空を彷徨う俺の右手は、招き猫のポーズをして誤魔化すことにして、取り敢えず大宮の席にずんずん歩いて行った。


「おい、話があんだけど」


「…………なんですか?」


 絶対に俺の方を向かねぇという固い意思を感じる背中を見ながら、とんとん、と肩を叩くと、大宮は仕方なさそうにこちらを振り向いた。


 いつもなら大宮を連れ出して廊下とかでひそひそ話す所だけど、今日はどこに犯人がいるか分からないし、そもそもそんな目立つことどうせするならここでしちゃえ!という考えで、その場で話をすることにした。


 いっぱい喋ってごめんなさい。


「これ、お前なんか知らん?」


 そう言って怪訝そうな大宮に、さっき半ば奪うように貰ったチラシを渡してやった。


 と、大宮は怪しみながらチラシに目を通す。

 そして顔はそのまま、俺の方を見上げた。


「なんですか?これ」


 日比野さんって痴女だったんですか?と問いかけてくるような目でこちらを見ていた。


 どうやら、何も知らないようだった。


「このチラシについて、なんも知らねえのか?」


「え?はい、なんなんですかこれ?」


 またもや同じ質問をしてくる大宮の表情は、とても嘘をついているようには見えなかった。


 ということは、大宮は犯人じゃないってことか。

 ちょっと安心した。


「なに大宮、お前これ知らないの?」

 と、後ろからなんか声が聞こえてきた。


 どうせ永瀬だろお前はお呼びじゃねぇよと睨む様に見ると、やっぱり永瀬だった。


 何?お前は大宮しか友達がいないの?今ならいい人紹介するよ?坂本だけど。


「これなんか、朝学校中の掲示板に貼ってあってさ。教師がぷんすか怒って剥がしてたんだよ」


 永瀬がそういうと、ざわっ、と教室中で皆が声を上げた。


 個々の声は小さいものの、それがバラバラとまとまりなく、されど大きな塊となって雑音となっていた。


 壊れたテレビのような汚い声の塊の1つ1つを、解析するように頭を働かせる。


「それ、言っちゃうんだ」「うわぁ、あいつ空気読めねぇ」「そんなん本人に言っちゃダメだろ」と、なんだか永瀬に否定的であった。


 俺を気遣うような言葉遣いであるような気がしたが、視線でそれが違うと分かった。


 みんな俺の出方を、剥き出しの好奇心で見守っていたからだ。



 それを知ってしまってか、自ずと声が詰まる。

 いつもなら流れるように出てくる声が、喉元で堰き止められてしまっているようだった。


 突き刺さるように催促する視線が、俺の体を啄み蝕み、思わず体を抱いてしまう。


 いつもより、気持ち悪い。


 初めて俺は、世界に丸裸で飛び出したのだ。



 だが、そんな俺たちの間の沈黙を破ったのは、他でもない大宮であった。


「…………全然気づかなかったわ」



 …………すごい大宮らしい一言であった。


 大宮は確かにそういう所に気を配れるような人間じゃなかった。人混みがあっても、それが気にならないタイプの人間だったんだ。


 多分大宮は、何も考えてなかったんだろう。

 けれど、今はそんな日常的な言葉が、俺の剥き出しの柔肌を包み込む衣になる。


 世界から、守ってくれるんだ。


 何故だか大宮を見ていると心臓の音が煩くなってきたので、別の事を考えることにする。



 そういえば、前はよく、そういう大宮を俺が導いてやったもんだ。懐かしいなぁ…………


 あれ?懐かしき日々を思い出してたら、眩しすぎて涙が出てきたぞ……………?



 そんな冗談まじりの涙を堪えるように、永瀬に聞いた。


「誰がやったかとか、なんか手がかりはないかな?」


「それは………ちょっと僕はわかんないですね」


 永瀬は少し考えたものの、やっぱり何も知らなかった。


 まぁ、答えてくれただけラッキーと思うべきなんだろう。

 誰がやったか分からない今、俺とまともに会話してくれるだけで感謝すべきなのだ。


 いやぁホント、都合のいい男に感謝。


「………わかった、ありがとうな」


 そう言って、大宮に背を向けた。


 もう大丈夫。俺、1人で歩けるから。


 という思いを大宮に届けるように。


 と、思ったんだが。


「あ、忘れてた!」


 どうでもいいというか、あんまり重要じゃないというか、まあうん、興味がなかったから忘れてたんだよな。


 坂本のこと。


「そういえば、坂本はどこだ?」


 もう聞きたかった情報はもらったんだが、一応坂本にも聞いておきたかった。


 さっきも言ったけど、今この状況で信用できる仲間というのは必要なんだよ。


 誠に遺憾ながらその中の1人である坂本の情報を仕入れるというのは必要な行為であった。


「あーそういえば、見てないですね今日は」


 と、最初に反応したのは大宮だった。


 なんだ?そんな敏感に反応してぇ?俺のそんなに話したいのか?いいぞ俺は?後何年でも話してやるぞ?


「坂本なら今日は休みですよー」


 と、今度は永瀬。


 だからお前はお呼びじゃないって。もういいよ。お前坂本のことそんな知ってんならもう2人で幸せになれよ。


「休みか…………」


 少しでも情報が欲しい状況だが、休みなら仕方ないなぁ。坂本のくせになまいきだ。


「まあいいや。ありがとなー」


 今度こそ手を振って、ばいばいをする。


 まあ坂本の事だからな、俺が心配するまでもないんだろう。おそらく、ただの風邪だろう。


 学校来てから、また話せたら嬉しいけど。

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