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IF〜もしも男子校にTS娘が入学したら〜  作者: 中内達人
2章:〜もしも女の子に弄ばれたら〜
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IF35.〜もしも旧友が面倒な奴だったら〜

「奏太じゃん!久しぶりー!」


「お、おう!久しぶり!」


 と、俺達の旧友は奏太に駆け寄って行った。

 奏太も戸惑いながら返事をしている。


「元気だった?あったの何年ぶり?2年ぶりくらい?」

 と、旧友は元気に奏太に聞いていた。


 それに対して奏太は「あーうん、まぁ、ねぇ」なんて曖昧な返事をしながらもこちらに視線を送ってきていた。

 コイツをどうする?的な視線だろうか?


 そんなもの決まってる。


 こういう時はね。




「は、初めまして!」




 知らない人のふりをするの。



 と思ったのだが、バレるかもしれないとあり得ない想像をしながらだったためか、存外大きな声が出た。


 なんか2人に嫉妬して焦ったみたいになった。


「…………ど、どうも?」


 と心配していたのだがどうやら当の旧友本人は俺の可愛さに恐縮しているようで、俺のこの焦った感じには気付いていなかった。


 よかったぁ、とニコニコしていると、「あれ彼女?」「いやちげーわ」などと、2人でまた会話し出した。


 …………なんかまた仲間外れにされてない?いやいいんだけどね?そんなに奏太のこと好きじゃないし?


 でも2人で仲良く話している中で1人だけ除け者というのも気分が悪い。というか、俺のことを忘れないでほしい。


「………帰っていい?」


 ニコニコしながらそういって、帰ろうとする。

 と、背を向けた方から「待って!」と声が聞こえた。


 振り向くと、どうやら声の主は旧友のようであった。


「…………あの、その、いや………」


「なぁに?」


 はっきり喋れよ、という気持ちを、ニコニコの視線の奥に含めて言ったが、指をツンツンしてもじもじしているだけでどうも話が出来なかった。


 俺の方見て、はっきり喋って?喋るか死ぬかどっちかして?


 だがそうやってほとんど睨んでいると、意を決したように旧友は顔を上げる。そして、捲し立てるように言った。



「………あの、僕とメアド交換してください!」


「………あ、はぁ?」



 …………あまりに突拍子もない言葉だったから、変な返事になってしまった。


 でも女の子に「はぁ?」なんて言われたら、傷ついて1年間は寝込むよね。というわけで。



 女の子に「はぁ?」と言われた彼は、凄いショックを受けておりました。


 また指をツンツンして、どんどんちっちゃくなっていく。てかもう、泣きそうだった。


「あぁごめんごめん、びっくりしたからさ」


 そんな彼を不憫に思って、なだめるように俺は言った。


 たしかに、俺は俺が元男である事を理解しているけど、コイツは知らないもんな。フェアじゃないな。


 第一、こんな美少女に勇気を出して言ったことがもう褒められるべき行為だからな。俺は言えない。


 というわけで。



「いいよー。メアドね?ちょっと待ってよ………」


 とスマホでメールアプリを開いて、メアドを見せた。

 それを打ち込んでもらって、メールを繋げる。


「ありがとうございます!」


「あー、大丈夫大丈夫」


 いや、そんなに喜ばれるとこっちが恥ずかしいわ。


「まあ、今度こそ帰るからね」


 そう言い残して、俺は背を向けた。


 背中の方では、「そう言えばもう直ぐクリスマス祭があるわうちの学校」「え、マジ?いくいく!」なんて会話がなされてて、あぁもうすぐそんな時期かあ、なんて呑気なことを考えてた。


 この時は、そんな安直な考えで良かったんだ。


 だって、俺は男だから。大丈夫だと、心の底で思っていた。俺の心の支えは、自分が自分を男であると信じていることだった。


 その自信が、俺の全てだったんだ。





 +++++++++++++++++++++++++++++++++++++++





 とりあえずモーニングを食べ終えて、家に帰ってきた。その頃にはもう、母さんとかみんな起きてた。


「ただいまー」


「おーおかえりー」


 玄関から声をかけると、母さんの声が返ってきた。

 その時初めて、あー起きてたんだと思った。


「モーニング美味しかったよー」

 と階段を上りながら言うと、階段を上がった先にいた母さんは笑顔であった。


 そのままてくてく歩いてリビングに行くと、兄がソファに座っていた。それに向かって、話しかける。


「起きたんだ?」


「おう、ついさっきな」


 なんていうたわいもない会話をしながら、俺も深々とソファに座ることにした。


 するとぴろん、とスマホが鳴ったので、ポケットから取り出して開くとどうやらメールが来たようだった。


 そしてそれを開く。





 件名なし


 奏太の友達の泉田透いずみだとおると言います。さっき会いましたよね!?

 早速ですが、今日遊べませんか?


 お返事待ってます。





「うっわぁ〜……………」


 なんかこう、ねぇ………あまりにもアレだから、思わず声が出てしまった。それによって兄がこっちを見てる。


「なんだよ、なんかあった?」


「いや、うん…………」

 なんとなぁく相談するのが嫌だったから、秘密にしておく。だけどなぁ…………


 連絡するの、早すぎない?


 まるでこっちの都合を考えてないようなメールにほとほと嫌気が差してきて、はぁ、とため息をついてしまう。


 でも、遊びに誘われたのはちょっと嬉しいんだよなぁ……………だって遊びたいし?




 件名なし


 昼からなら遊べます




「…………うわぁ、言っちゃった」


 自分でもそう言ってしまうほど、こんな返事はしたくなかった。できることなら会いたくなかったけど、遊びたいと思ってしまったものは仕方ない。


 会いたくないって気持ちよりも、遊びたいって気持ちが勝ってしまったというわけで、遊ぶことにした。


「母さん、俺、昼から出かけるね…………」


「何?どこ行くの?」


「遊びに行ってくる………」


「なんかその割には元気なさそうだけど………?」


 まあそりゃそうだという言葉は胸の内にしまっておいて、よろしくと伝えてソファに深く腰かける。


 あぁ、腰が重いなぁ……………





 +++++++++++++++++++++++++++++++++++++++




 というわけで、集合が掛かったのでまたもや定番の待ち合わせスポットの女神像の前に来ていた。


 ったく、コイツの顔を見ていい思い出がないぜ…………


 しかし来たのはいいが、待ち合わせ5分前に来たというのに誰もいない。こういうのって、男が待つのが定番なんじゃないのか?


 と辺りをキョロキョロ見回してみると、こちらに走ってくる何人かの人影。


 そいつらの先頭に透を見つけて、ようやくその集団が俺の連れであることを理解した。


「すいません、遅れました!」


 と肩で息をしながら言う。

 どうやら全員で走ってきたようだった。


「何?走ってきたの?」


「そうです、遅れるといけないと思って…………」


 もう十分遅れてるけどね…………?という視線を送りながらも、透の友達の様子を確認してみる。


 皆一様に膝に手を置いて、肩で息をしていたが、よくよく見ると俺と同じ小学校のやつが何人かいた。


 全員で4人ほどの内、2人ほどは俺と同じ小学校の奴だった。


 なので、再会を喜びたい気持ちがむくむくと膨らんで、つい挨拶してしまいそうになる気持ちをぐっと堪える。


 そして、聞いた。


「今からどこ行くの?」


「あー、そういえば…………考えてなかったですね」


 考えとけよ。と口にはしないが、そういう顔をあからさまにする。と、流石にヤバいと思ったのか、急に5人で会議し出した。


 そういうのは女の子の前じゃなくて、先にやっておこうね?それくらい、元男でも分かるよ?


 とそんなこと考えていると、振り向いて、何かにやぁ、と気持ち悪い顔をした。


「決まりました」


 と自信満々に言う透の表情に、思わず苦い顔をしてしまうが、予想は的中した。



 というわけで、俺は半ば連行のような形で、あの因縁の場所へと、昨日ぶりに行くのだった。


 …………まさか、2日連続で同じところに行く羽目になるとは………………





 +++++++++++++++++++++++++++++++++++++++





 クラスで、大声で話している声が聞こえて、わたしは耳を澄ます。というか、そんなことをしなくても、嫌でも耳に入ってくる。


「俺、別の学校の超美人見つけてよお!」


「おお、どこのだよ」


「なんでも男子校に1人で通ってるらしいぜ?」


 何だよそれ。と心の中でつっこむ。

 特にわたしは自分の学校以外のことには興味がないが、おかしな学校もあるもんだと思った。


「それでさ、その人がなんとうちの学区に住んでるらしくてよぉ…………!」


 うちの学区と言ったあいつはわたしと同じ小学校だったから、つまりわたしと同じ学区ということだ。


 しかし、同じ小学校ならあんな他人行儀な紹介はしないはずだ。なら、誰なんだ?


「その人のこと探して、日曜日にでもアタックしてみようかと思うんだ!」


 そんなことしたら、ストーカーと変わらないじゃないか。


 そんなことを考えたのが、今週の木曜日。

 その時は別に気にしてなかったのだが、そんな気持ちは土曜日に大幅に変化した。


 わたしが彼氏と遊ぼうと予定していた日。


 彼氏は来なくて、代わりにとっても可愛い女の子が来た。


 そして、彼氏は遊べなくなったと言う。


 そんな時、心の中で、この女の子に対する何か熱い燃えるような気持ちがふつふつと湧いてきた。


 そして後からあの坂本とかいうからに聞いた話によると、どうやら彼女は、三吉原中という市内有数の進学校に女の子1人で通っているらしい。


 それを知った時、わたしはこの計画を思いついた。


 あの女を貶め、わたしの彼氏を誑かした罰を与えるため。


 そんな復讐心なのか嫉妬心なのか分からない心に突き動かされて、日曜日。



 偶然街で彼女たちを見つけた。


 新しい本を買いに街まで出てきた時だった。

 女神像の前を通った時、見知った顔を見つけた。



 女神像の前で、男5人に対して1人でいる姿は、まるでモテるギャルか何かの様だった。


 ああいうのを、「びっち」とかいうのだろうか?


 その集団を追って行くと、わたしが昨日行った場所と同じ場所へ着いた。


 そして、入って行く。


 そんな姿を見てわたしは。


「正樹君を助けなきゃ」


 って、そんな気持ちが、体の先から内側に集まるように湧いて伝わってくる。


 正樹君を助ける。そんな気持ちをめらめらと燃やして、パシャり、と1枚、写真を撮った。




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