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IF〜もしも男子校にTS娘が入学したら〜  作者: 中内達人
2章:〜もしも女の子に弄ばれたら〜
32/42

IF.30〜もしもみんなで遊んだら〜

すみません

まだ生きてます

すみません

 詩音と俺と坂本は、市で1番大きいであろうスポーツ施設に来ていた。ここは色々なスポーツが楽しめる施設で、体を動かして遊ぶといえばここというくらいの大きさなのである。


「ここで体を動かして正樹君のことを忘れちゃいましょう!」

「あ、あぁ、そうだな」

 忘れないで!お願いします!


 と心の中で願いながらも施設の中に足を踏み入れる。


 休日ということもあってか、中は大勢の人々でごった返していた。客層は、中高生から大人まで様々であった。


「ワクワクしますねぇ!」

「あぁ!そんなに走ると危ないよ!」

 詩音ははしゃぎながら俺の前を走って行ってしまう。


 詩音はそのまま走って、チケットの列に並びに行ってしまう。そして、俺と坂本が取り残される。


「…………なぁ、ちょっといいか」

「うん?………なに?」

 俺が声をかけると、坂本は立ち止まって、俺の方を振り返る。


「なんで俺が困ってるのわかったんだ?」

「…………なんかそんな気がしたんだよ」

 坂本はくすくすと笑いながら話す。


「………ストーカーみたいでキモいな」

「おい助けたのに酷い言い様だな!?」

 へへへっ、と俺が照れるような笑いをすると、口調とは裏腹に坂本の顔も笑顔であった。


 今の会話は少しだけ男子同士っぽかったな。なんてことを考えながら詩音の元まで歩いていく。


 そして、詩音の元までたどり着き辺りを見渡すと、結構な人の数であり、休日のアミューズメントパークの恐ろしさにため息が出た。


 …………人、ひしめき合いすぎなんじゃないだろうか?ここだけ人口密度世界一なれるんじゃないか?


「大分並んでますねぇ」

「あ、おおう、確かにそうだなぁ」

 どうしたのだろうか?詩音に急に話しかけられて思わず慌ててしまった…………?


 今までならこんなことはなかったのだが………


「坂本さんも、無理に誘っちゃって、すいません」

「えええええ、あいやぜぜぜ全然だだだだだ大丈夫ででですすすよよよよよよよよ!!!!!?????」


 うん、まああれだ。気のせいだ。慌てるってのはこういうのを言うんだ。うん、間違いない。


 あまりの慌てぶりにみんなこっち見てるし。その中にはスマホを耳に当てて誰かに電話しようとしている人もいるようだ。


 …………いや110番はやめてね?119番してね?彼は頭の病気だからね。多分治らないけど。


「それにしても混みすぎじゃね?まだ俺らの番来ないの?」

「そうみたいですね。でももう30分もしたら入れるんじゃないですか?」


 こくり、と小首を傾げて詩音は言う。

 うん、かわゆす。詩音の動きを見てるだけで2年は待てる。いや、それは言い過ぎか。せいぜい2日くらいだな。



 まあそんなこんなで30分くらいして、ようやく中に入ることができた。ここに来るのは初めてじゃないから、これくらい慣れたものだ。


「あはは、やっと入れましたよ!」

「あーうん………ソウダネ」

 と、返事がなぜこんなにも適当なのかと言うと、この俺日比野正樹は、ここが大嫌いなのである。


 いや、楽しいと思うんだよ?でもさ………ガヤガヤしすぎててうるさすぎるんだよな。

 あと楽しみ方がわからない。


 ここにいたら楽しくなさで1時間で帰りたくなる。

 実際男だった時大宮と来た時も、朝から言ったものの、午後3時くらいで限界がきて帰ったわけだ。


 それが今日は坂本と詩音の3人という、うーん、楽しそうじゃないメンバーというか。


 特にこいつがな(坂本を睨みながら)。


「…………何?どうしたの?」

 と、じっと見すぎたようで、坂本が怪訝そうに俺に話しかけてきた。


「うっせ。なんでもねぇよ」

「………ならいいんだけど」

 うーん、露骨に機嫌悪そうにしすぎたかな?


 でもいっか、坂本だし。


「さあさあ、遊びましょう!何します?あ、そういえば坂本君はバスケ部なんでしたっけ?」

「はへ?あは、ふん、ほほ!ほうですよ!?」


 だから慌てすぎだよ。でもまあ、最初の方からしたら結構喋れるようになったと思う。

 ……………気のせいだろうか?


「じゃあバスケしちゃいましょう!」

 おー!と言いたいところだったが、あいにく俺もテンションは最低であったために、言う気にはなれなかった。


 まあバスケってのはいいよな、うん。



 +++++++++++++++++++++++++++++++++++++++



 ダムダム、とバウンドするいい音が聞こえる。

 この音が、バスケしてるって感覚になるんだよなぁ。


「では、始めましょう!ルールは、どうしますか?」

 ルールか。美少女2人男子1人という状況を鑑みれば、俺と詩音対坂本がいいだろう。


 しかし!俺たちは素人、坂本はバスケ部を2年やってるのだ。しかも俺たちは女。まあ俺は女と言っていいのかわからないのだが、うん、まあ許してください。


 とにかく、2対1じゃあ平等じゃないってことだ。


「僕1人でいいですよ?で、そっちはお2人で」

「私はそれでいいですよ!」

 あぁ、今にもルールが決まってしまいそうだ!民主主義国家はどこへ行ってしまったのか!


 俺はただでさえ運動神経が悪いんだぞ!それが女の子になった時にどうなるか…………!

 世界が滅んでしまうかもしれない…………!


「ちょっとまったぁ!」

「………?どうしたの?」

 おい坂本?その目はなんだ?睨んでんのか?あん?俺には学校の奴ら全員がバックについてんだぞ?あん?


 という雑魚感満載なことを思いながら、頭に青筋を浮かべながら坂本に返事をする。


「よく考えてみろ?お前はバスケ部、俺たちは素人。それも女子ときた。俺たちのが不利だろ」

「あー!確かにそうですね!」

 詩音は今度は俺に賛成してくる。

 意思がないね!でもそんなところも可愛い!


「確かにそうだね。じゃあハンデをつけようか」

 あ?上から目線だなおい。でもまあその通りであるから反論はしない。あとで坂本の悪い噂を学校に流しとこう。


「じゃあ、坂本は左手だけでドリブルすることにしてよ」

「あー、それでいいならいいよ」

 坂本は余裕綽々と行った感じで、指の上でボールを回しながら言う。


 いや、何気にすげえな。なんか腹立つからやっぱり学校に悪い噂流しとこう。


「じゃあ始めましょう。ではそちらからで」

 そう言って俺にボールを投げてくる。


 へっへっへ、いいのかぁ?この俺にボールを渡しちまってぇ…………!?三吉原中の青い雷と呼ばれたこの九能た…………いや、やめておこう。


「よし、じゃあいくぜ」

 獰猛な笑み(イメージです。実際の顔とは異なります)を浮かべ、ドリブルを始める。


 右手でボールを押し込み、弾んできたボールを包み込むようにして押し返す。


 そして左に行くと見せかけて、右へ行く。


 残像を生み出すような速さをイメージして、ズレるように横移動する――――――


 絶対抜いた!勝った、勝ったぞ!

 とボールをついて走って行く俺の手には、いつのまにかボールはない。


 思わず振り向いて、状況を確認すると坂本がボールをついていた。そして、笑顔でこっちに向かって、ちょいちょいとしている。


 …………おうおう、挑戦的じゃねぇか。


 やってやろう、やってやろうじゃねえか。


「じゃあ、行きますよ!」

 と、気がつくと詩音が坂本の前に立ちはだかっている。

 よし、前は詩音に任せた!実はああ見えて詩音は女子の中では運動神経が良い方だ。バスケだって、小学校の時はまあまあ強かった思い出がある。


 むしろ俺より強かったまである。となるとさっきなんで俺がイキってドリブルしたのかと不思議に思えるがそれは今は置いておく。


「いつでもきていいですよぉ!」

 詩音は、手を上下左右に動かして、必死にディフェンスしている。


 ………詩音や ああ詩音や 詩音や(圧倒的字足らず)


 はっ、感動のあまり天才的な俳句を思いついてしまった!日比野芭蕉って呼んでいいよ。


「ははは、ガラ空きですよ」

 坂本は笑顔でそう言って、一瞬消えたかと思うと、今度は詩音をズラしてドリブルのコースを作っていた。


 あぁ、抜かれてしまう!


 と思った矢先、縦一閃にドリブルして行く坂本に張り付くように詩音はディフェンスをする。


 あぁ、密着している!


 離れろ!離れろよ坂本!そう叫ぶのが早いか、坂本は詩音を、ドリブルの流れて押す。


 すると、手で押した勢いで詩音が倒れた。

 きゃっ、と言いながら尻餅をついた。



 ―――――――殺す!


 すぐ殺す今殺すまさに殺すちょうど殺す絶対殺す!


 恋のチカラは恐ろしや、体が勝手に動いていた。


 殴りかかるように突撃して行く。



 ドリブルを終えて、今にもシュートをせんとする坂本に、飛びつくように殴りかかる。

 


 と、坂本もシュートのために飛んでいた。



 空中というのは体の自由がきかないもので、まさに舞空術なんか持ってなければ急には止まれないというもので。


 気がつくと俺は、坂本とぶつかっていた。


 そして勢いそのまま、倒れてしまう。




 


「きゃぁあ!だ、大丈夫ですか!?」





 と、耳をつんざくような甲高い詩音の悲鳴で、ハッとなる。数秒間は頭が真っ白になっていた。


「け、怪我は!?怪我はないですか!?」


 オロオロ、という擬態語が今にも音となって聞こえて来そうなほどの慌てようだった。


 その声を聞いて、正気に戻って返事をしょうと冷静に今の状況を鑑みてしまった。




 俺の視界には、手をついた俺の両腕に挟まれた坂本の顔。


 そして視線を下げてみれば、俺の胸元には、手。


 その手は自分の手ではなくて、おそらく、坂本のと思われるような、手。





 またもや、頭が真っ白になった。





「うぉぁぁぁぁあ!!」

 と、今度はすぐさま正気に戻る!


 おい!何してんだ!なんで胸触ってんだ!


 という声は声には出ず、しかし体は動かず、俺はずっと同じ体勢でいた。



 と、目の前で叫んだからか、坂本がようやく目を開けて状況を確認しだした。


「………ん?うん?ナンダコレ?」

 まだ状況が理解できないのか、手を動かす。


 しかしそこには、俺の慎ましい胸。


 怖気にも似た何かが、背中をぞくぞくっ、と走って行く。


 そして坂本も、俺と見つめあって、固まった。


 2人の世界は日本ではないどこかに飛ばされて、この地球とは違う何かの世界に飛ばされて、どこか寂しい沈黙が漂っていた。


 後ろでは、ボールが弾む音が聞こえる。




 静まり返った世界の外では、「何美少女とイチャついてんだコラ!?」「なんだあいつブスのくせになんであんなラッキーなんだよ!?」「あれ?あいつ坂本じゃね?死罪じゃね?」「あー、殺す」などといった声が散在していた。


 でも俺と坂本は、それどころじゃなかった。


 どちらが先に動くとか考える前に、同時に叫んで飛びのいていたのである。

ちなみに今回のお話はスポッチャを意識して書いてますのでそれをイメージして下さいね(10分の間の出来事とは思えない)

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