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IF〜もしも男子校にTS娘が入学したら〜  作者: 中内達人
2章:〜もしも女の子に弄ばれたら〜
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IF27〜もしも友達を騙したら〜

 ブレックスで大宮と遊んだ次の日。日曜日である。


 今日は坂本に、『相談したいことがある』と言ってわざわざ休日にファミレスに呼び出したのだ。

 ちなみに坂本と俺は同じ区に住んでいるので、家の近くのファミレスに呼び出していた。


 午後から部活があると言うので、午前だけである。


 ファミレスの中で先に座って待っていると、チリンチリン、という軽いベルの音とともに坂本が店内に入ってきた。


「おーい坂本、こっちだぞ」

「あーおっけー」


 俺が手を振るとファミレスにいた人達が『待ってました』と言わんばかりに振り向いた。


 ーーーーこの美少女の待ち人はどんな人なんだろう。きっと超イケメンなんだろうなぁ!


 なんて勝手に思っていただろう人々の好奇の視線が、一斉に坂本の方へ向き、突き刺さる。


 …………次の瞬間には、驚愕と落胆、失望の視線に変わっていたが。


 有名人くらいの視線を突如として浴びた坂本は、戸惑いとともに俺に助けを求める視線を送ってきた。


 ……………ったくしゃあねぇなぁ。俺が助けてやらなきゃダメなんだから。


「ヒデくぅ〜ん!待ってたよぉ?早く、このお腹の中にいる子供の話をしようよぉ!あれだけのことしたんだからさ?責任…………とってよね?」


 全力の猫なで声でそう言った。


 あ、もちろん嘘ですよ?こんな気持ち悪いヒョロヒョロの子種を体の中に入れるとかもう!考えるだけで蕁麻疹が出てきそうだよ!


 …………けれど、そんな身を呈して言った冗談の破壊力は抜群だったみたいで、坂本への視線が全て殺気に変わっていた。


「は?あの歳で孕ませたのか?………やばくね?」「ご、強姦魔よ!?だ、だれか通報して!?」「あのひょろ長があんなか弱い女の子をレイプしたのか!?」


 などなど、結構な大事になりそうな言葉が次々と辺り一面のテーブルから聞こえてくる。


 ………….俺自身すら収拾がつかなくなってきたような気がする。となると、結構これはやばいんじゃなかろうか?


 坂本は依然としてアタフタとしている。どうやら奴のテンパりが最高潮に達したようで、瞳がぐるぐると、視認できそうなほど渦巻いていた。


 どれくらいテンパっているかというと、何故だかドリンクバーようのコップにスープバーのスープを注いでいた。


 …………今注ぐ必要はあるのだろうか。


 と、そんな疑問は置いといて、とにかく。これは中々お不味い状況だと俺は思うのだが………….どうだろう?


 と、どうするべきか迷っていた時だった。


 トントン。そんな音が聞こえてきそうなくらい軽い呼びかけが坂本へ届く。まるで友達のようで、それでいて他人行儀な呼びかけ。


 坂本が慌てて振り向くと、青い服を着た、笑顔を顔に貼り付けたお兄さんがそこにいた。


「ちょっと君?少しだけ話、いいかな?」


 これは俺の感想であるが。というか、見た限りの俺の個人的な偏見であるが。


 どうやら警察官のようである。


「ちょ、やべぇぇ!!」

 流石の俺もやばいと思ったので、急いで坂本のところへ駆け寄る。そして、坂本の腕を俺が絡めとって言う。


「これは渡しません!私のものなんです!」


「とは言ってもね?ここのファミレスにひょろ長の中学生くらいの強姦魔がいるとの通報が入ってね?話を聞かないわけにはいかないんだ」


「そ、そんなぁ…………」


 …………やっと俺はここで、自分のしたことの大きさに気がついた。


 俺はこの体になって、みんなが言うことを聞くようになった。お願いしたらなんでもやってくれるし、俺が望むものはなぜか買い与えられる。


 まるで世界が俺に服従しているように。



 ーーーーけれど。その力の使いどころを間違えたら、他人を巻き込むような大きな事件に発展してしまう。


 この例が、いい例だ。


 みんなが脳死したように俺の言葉だけを信じて真実を捻じ曲げてしまう。

 だから、使いどころを間違えたら今みたいに取り返しのつかないことになりかけてしまう。


 ということは、この力?は使い手に全てが委ねられていると言っても過言じゃない。


「あ、あのう、それは冗談、ですよ?」

「ああ、すいません。彼女さんですか?」

「……………っ、そ、そうです」


 クソぉ!コイツの彼女って冗談で言うだけでも吐き気がしてくるよぉ!

 でもしょうがないだろ?嫌なものは嫌なんだから。


「して、冗談とは?」

「あ、あははは。僕…………わ、わわわ、私が!いたずらでそんなことを言ったんです!ほら、現にこんなにも仲良しだし!」

 そう言って、坂本を抱き寄せる。


 ………坂本は、こんなにも、腕が太かったろうか?

 何時ぞやかおんぶしてもらった時もそう感じたけれど、やっぱりそれは、俺が小さくなったからだろうか?


 そうなら少し、寂しい。


 坂本はここからどんどん成長して大きくなれるけれど、俺は細くなることしかできない。いや、太るとかはしたくないから。


 だから、ガリガリだと思っていた坂本が、急に遠く感じてならなかった。これからもガリガリなままなのだと思うが、しかし成長することができる。


 …………これが男と女の違いだとまざまざと突きつけられたような気分であった。


「いたずら電話?だとしたらそれはいけないですね。でしたら親御さんに電話してもらってもいいですか?親御さんとお話がしたいのですが」

「っ、親、ですか?」


 親、という言葉を聞いて、思わず身構えてしまう。


 母さんには俺が女の子になったせいで迷惑をかけている。

 これ以上の迷惑はかけたくなかったのだ。


「え、え〜っとぉ、これからはやらないので今回は見逃してくれませんか?」

 無理なお願いだとわかっていながらも、警察官を見上げて頼む。


「そ、そういわれましてもねぇ………」

 俺に上目遣いで見られた警察官は、照れているのか、俺から顔を晒していた。


 どうやら効果はあるようだ。


 ならばそこをつかない手はない!とばかりに俺は立て続けに攻撃を仕掛ける。


「ダメ、ですか?」

 …………もう、ヤケクソだった。


 男としてのプライドとかそういうのを捨てて、俺は上目遣いを続ける。


 目を潤ませるような勢いで見上げる。

 口はもうアヒル口みたいになってたと思う。


 …………もう男の威厳なんてものはとうにどこかに捨て去っていた。


「…………まぁ、そこまで言うなら……」

 こうかはばつぐんだ!


 ………てか、そんなんでこの街の治安大丈夫かよ。


 しかし、俺の上目遣いが功を奏したのか、警察官が俺のお願いを聞いてくれてよかった。ハニートラップの効く相手でよかったよ。


 というか、俺の体を要求してくるみたいなエロ漫画てきな展開にならなくてよかった………まぁ、警察官も現実にはそんな奴いないか。




 と、一先ず警察官が帰っていったのを確認した後、未だ興奮の冷めやらぬファミレスの店内を歩いて、元いた席に戻る。


 先ほどの騒ぎで理解してくれたのか、警察を呼ぶ人はもういなくなっていた。

 ……………坂本へ対する殺気は未だとして向けられているが。


 だからとりあえず、坂本にはとにかく平謝りする作戦を実行した。もう土下座するくらいの勢いで腰を折り曲げていた。


 そして、「ごめん!本当にごめん!」と腰を折り続けたのが功を奏したのか、「あの美少女に何謝らせてんだ」という視線が坂本に響いたのか、坂本は許してくれたというわけだ。




 とまあ、そんな話は置いといて。


「で、日比野?今日俺を呼び出した理由は?」

「えぇっと、それはだなぁ」


 休日にわざわざ一緒に遊びに行く中じゃないコイツを呼び出してまで会った理由というのは、1つだけあるのだ。


 しかも、コイツを呼び出すのを厭わないほどの大きな理由が。


 坂本もそれを俺の表情から察したのか、いつになく真剣な顔になっていた。

 ………….うわぁ、真剣な顔似合わねぇ………


 俺は鞄の中を漁ってスマホを取り出す。


 そして、メールアプリを開き、とあるメールを坂本に見せた。


「今度の日曜日、会えない?…………ってこれ、まさか日比野の…………!」

 メールの内容を恥ずかしげもなく音読した坂本が、驚いたように息を飲む。


 あまりにも驚きすぎて、俺のスマホを落としそうになっていた。まぁ俺がキャッチしたのだが。


「そうだ。日曜日会うと言ったらもうお前の知っている通り1人しかいない」

 まるで俺は、世界の真理に近づくような真剣な声や表情で坂本に言う。


 絶対的インドア派の俺が、わざわざ日曜日にまで遊ぶというのだから、相当だ。


 そして俺は、意を決して言う。


「俺の彼女だ」

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