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IF〜もしも男子校にTS娘が入学したら〜  作者: 中内達人
1章:〜もしも男子校に女1人で転入したら〜
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IF17〜もしも友達が絡まれたら〜

「てことは何?日比野が女体化したってこと?」

「や、まぁ、端的に言えば?」


 俺は勢いあまって坂本に2人だけの秘密を言ってしまったことによって、正体がバレてしまった。


 しらを切り通せば良いと思うかもしれないが、目の前で俺の評価が下がるのが耐えきれなかった。それならまだ、坂本にバレてる方がいい気がする。


「いやでも、みんなに言ったりするなよ絶対!!元男だからとか言って犯されるのとかめっちゃ怖いんだって!」


 トイレの前で、声が響くのも考慮せずに大声で叫ぶ。さっきからチラチラと人が通っていくが、その人達も、俺の方を見てギョッとしていた。


「だ、大丈夫だよ。言わないって。てか、言っても誰も信じてくれないと思うけど?なんかうちのクラスでは日比野が神格化してたから」

「し、神格化…………?」


 ということはつまり、俺は神として崇められているということか?冗談で「俺、神!」とか言うのじゃなく、本当に神として崇められていくのか俺は?


 ちょっと待てよ、そんなに面倒なことが起こっているのか?俺ここまで目立たずに中学人生を送っていけると思っていたのだが………もう無理なのか?


「あ、あとさ!大宮とかには言わないでね!?あいつ、女体化とか気持ち悪いって言ってたから!!」

 なぜかこんな時に大宮のことを考えてしまうことになんとなく疑問を抱きながらも、坂本の肩を揺らす。


「い、言わないよ!てか俺だって、そんな信じてないし?」

「いやお前だけは信じてくれよ〜!!!!」


 やはり、口にして言ってみると、心が楽になるというもので、おそらくこれから坂本は俺の愚痴の受け口になることだろう。そう思うと、坂本だけには信用して欲しかった。


 ストレスは、発散口が必要であり、今回の場合それが坂本であるのだから、坂本だけには俺の現状を知っておいて欲しい。俺の現状を聞いてしまった責任だ、坂本。


「てかさ?そんな神として崇められるほどの人物と、2人きりでいて良かったのか?」


 なんとなく、俺は意地悪く言う。実際のところ、よくよく思い出してみると、先程は坂本の公開処刑の段取りが着々と進んでいた気がする。


 半分意地悪、半分心配くらいの感覚で坂本に聞いてみると、思わぬことに、坂本の顔の色が真っ青というか真っ白になっていった。サーッという血の気が引く音が聞こえたと錯覚するほどである。


「やばい、かも?」

 真っ白にした顔で、これ以上ないほどに息を詰まらせていう。もうあと少しで泣くのではないかと思うほどであった。


 坂本は、身長が高いがガリガリで猫背だ。背は高いのに、迫力に欠ける。つまり何が言いたいかと言うと、喧嘩が強そうな見た目ではないと言うことだ。というかおそらくとてつもなく弱いだろう。


「どう?喧嘩は勝てそう?」

 一応聞いてみる。


「本当に日比野ならさ…………分かるだろ?」

 まぁ、分かるよ。という口に出さない返事を含んだ頷きを坂本に対して返す。


 この坂本というのはどうしようもなく何もかもできない奴で、バスケ部の中でバスケが1番下手だし、成績も下の中くらいである。その上、友達だって少ない。


 そのせいで、坂本のクラスを覗いた時には、坂本はいつも1人でラノベを読んでいるのだ。まぁ、俺は坂本の事、好きなんだけどなぁ……………


「お前、口喧嘩でも勝てなさそうだもんなぁ…………前回の現代文のテスト何点だった?」

 何となく、現代文のテストの点数を聞いてみてしまう。すると坂本は、照れた笑いを浮かべて、返事を返してくる。


「えと、50点くらい?」

「おお、まあまあ良いほうじゃん!」


 とは言ったもののである。前回のテストは平均65点で、俺は平均点ぐらいだったのだ。

 なぜこいつに「良いほうだ」なんて言ったと思う?理由なんて簡単、お前にしては良いほうだって意味だ。


「まぁ、お前にゃ口論なんて無理か!」

「………お前やっぱり日比野だな?」

 さっきからそう言ってんじゃん!心の中で盛大に突っ込む。


 その時、授業開始五分前のチャイムが鳴った。確かこのチャイムの意味合いは、「遊んでいる奴らは帰って次の時間の準備をしろ」だったかな?

 だとしたら、俺らもその一員だ。


「よし、じゃあ帰ろーぜ?」

「おう、いいよ」

 そう言って、2人でまだギクシャクしながらも、いつものようにたわいもない話をするのだった。


 また、そんな時間なんて、女の子になってから一度もなかったから、今までの疲れていた心が少し安らいだのは、言うまでもない。



 +++++++++++++++++++++++++++++++++++



 階段で3階に上がるとすぐ、俺と坂本の2人を、大勢のの群衆が取り囲んだ。みんな目をギラつかせてはいるものの、誰1人として俺と目を合わせたりしない。なんとなく、がっかりである。


「おぉい2年9組坂本博英。ちょぉっと俺たちと楽しいお茶会でもしないかぁい?」

「みんなで騒ごうぜ!!」


 お茶会で騒ぐってなんだよ!?とても怪しさ満点である。ここまであからさまだと坂本も気づくと言うもので、大勢の野獣に囲まれた坂本は、顔を真っ白にしてタジタジしていた。


 だが、野獣達は、それでもなお俺が目を合わしに行くと目をそらしてしまう。なんとも人見知りな野獣だ。


「ねぇ、ちょっと来いよぉ…………楽しいぜ?」

 坂本の肩に手を回してきた。靴の色を見る限り、どうやら先輩のようである。


 それに気づいて辺りを見渡すと、群衆の中には中1や中3も混じっていた。だから異様なまでに人数が多かったのか!!


「どんなことをするつもりなんですか?」

 とりあえず肩に手を回している先輩に聞いてみる。特に興味はなかったが、なんだかどんな反応をするのか知りたかった。


 第一、なんか相手より上に立ったような気持ちになると、途端に相手と話しやすくなったりしないか?

 それが俺にも起きていて、俺の頭の中では、「話しかけてあげてる」くらいの気持ちであった。


「な、なぁ坂本くぅん…………早く行こうぜ」

 だが期待した割に反応は、無視。この時の俺は、だいぶ天狗になっていたから、無視されたことにだいぶ腹を立てていた。


 まさに心の中では、「話してやってんのに無視するってなんだよ!!!」と絶賛叫び中であったのだ。


 かく言う俺も、結局こっち側であるため、人見知りを発症してしまう。一度無視されると、2度目話しかけるのが異常に怖いのである。


 俺に話しかけられて無視したのがよっぽど心に傷を作ったのか(自分で無視したのに)、この先輩が静かになってしまった上、俺も何も言わないから、変な空気が流れていた。

 

「と、とにかく!お前はついてこい!!」

 と、焦った様子で先輩が坂本を急いで連れ去っていった。なんだか小物感満載の先輩であったなぁ。


 坂本についていくように群衆が去っていったので、結局俺は1人になってしまった。まぁ厳密に言えば1人ではなく大勢が俺を見ているのであるが、まぁ、遠巻きに見ているだけであるので結局1人なのだ。


 仕方なく教室に帰る。特にやることないし、友達もいないし。ぼっちの気持ちをまざまざと突きつけられながら、歩く。


 ぼっちの時の他の人の視線というのは大変恐ろしいもので、「あそこで見ているあいつはきっと俺をバカにしているに違いない」とか、「あいつはきっと俺の悪口を言ってるだろう」とか、まぁほとんどが自意識過剰な勘違いであるのだが、1人だとそれに気づけないのだ。


 そしてやっとの事で教室にたどり着き、沢山の人の視線を浴びながら教室に入ると、驚くべきことが起こった。


 なんと、俺が急に話しかけられたのである!!!


 だが、無視されることに慣れた俺というのは悲しいことに、最初、俺に話しかけているとはつゆ知らず、ツーンと無視してしまったのだ。


 それが傷ついたのか、高嶺の花気取りかと思われたのか、話しかけてきた奴は悲しそうな悔しそうな怒ったような顔をして、自分の席へ帰っていった。


 …………え?俺だったの?


 と、そこでやっと気づく。俺が無視してしまったこと、俺の印象が悪くなったこと。大変なことをしてしまったのだと、実感するまで、時間は要さなかった。


 …………なんで1回しか話しかけないのぉ?


 無視したことに気がついた俺ではあるのだが、さっきも言ったが人見知りであるので、悔しそうに帰っていった彼に話しかけに行く気にはなれない。


 それどころか、「そ、そんな1回無視されただけで諦める方が悪いし?」という気すら湧いてくる。


 こういう時はどうすれば良い?話しかけるべきか、話しかけないべきか。くそ、話しかけないと印象が悪くなるのはわかっているのに、動け、俺の体!!


「何してるんですか?授業始めますよ?」

「あふぇい!!?」


 びっくりして勢いよく振り返ると、後ろには国語の先生の姿があった。


 この先生の名前は、高田たかだ先生といって、生徒のほぼ全員から胸のことをいじられている先生なのだ。まぁ先生に直接言うのは一部の生徒だけで、ほとんどの生徒は先生には言わないのだが、みんな陰で「貧乳」と呼んでいる先生だ。


 まぁ、少し前には貧乳と言われすぎて泣いたという話も耳にしたことはあるのだが、それはまた、別の話。


「あ、す、すいません……………」

 そう言って先に帰ろうとすると、さっき話しかけてきた彼が、視界に入ってくるのだ。


 というか、さっき話しかけてきた彼は、俺の席がある列の1番前に座っている奴だったのだ!


 通り過ぎる瞬間、目が合う。彼の目は、悲しそうにも、怒っているようにも見えた。


 その瞬間、「次の放課は、絶対話そう!」という、強い信念が、俺の心の中に芽生えるのであった。



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