非情の便、着く
長らく期間が開きました。
皆様、この作品、既にエタっていると思われているでしょうが、まだ続けるつもりです。
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2日後、浮城とも水城とも言われる忍城の北の城門に早馬が到来した。
忍城は、忍の地にある湿地帯に建てられた城郭である。湿地の中にある丘程度の浮島の幾つかを橋で繋ぎ、その中央を本丸としその周辺の小島を二の丸、三の丸、あるいは小さい砦とした天然の要害である。
その北門に、由良家からの書状をたずさえた早馬が訪れたのは、成田氏長が、義兄である由良国繁へ北条氏との関係をどうするつもりか問いただす書状を送ってからほんの2日後であった。
「お館様、北門に由良家よりの使者がまかりこしてございます。如何いたしましょうか?」
「あいわかった。本丸の広間まで通せ。書状を確認後、皆と合議いたす。叔父上以下の諸将にも使いを出しておけ。」
「は!」近習、使番の若者たちが、近習頭の指示のもと方々に散っていく。
「ふぅむ、思いの外、返事が早い。これは、由良の家中は、既に腹が決まっているとのことかぁ‥。義兄上は、北条との縁を切ることに迷いはないらしい‥」
氏長は、返事が来るまでの時間が短いことから既に厳しい返事を予想し、沈鬱な表情をする。
つまりは、信乃姫との離縁は確定的になったのだ。
氏長は、庭を一瞥し、深くため息をつく。
「これも戦国の世、離合集散、表裏比興は致し方ないとはいえ、辛いな。信乃は覚悟はしているとは思うが、甲斐には、な。」
氏長は、眼を閉じ、深くため息をついたのち、本丸の謁見に使う広間に歩いていった。歩いていくまでのあいだに、夫として、父としてのやりきれなきような沈鬱な様子は、姿を消し、成田家を率いる当主としての威厳に満ちた顔つきに変わっていく。
彼もまた、戦国に生きる武人であった。
もう少し書こうかと思いましたが、きりがよいので、謁見前で一度切ることにしました。
甲斐姫は、まだ名前しか出てきません(笑)
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