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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

チック症ほくろ白婆

作者: 無音

60を過ぎたぐらいの極度の痩せ型と言っても女性的な魅力ではなく所謂鶏殼、首筋の皺とつむじ辺りに散在する白髪がより不潔感を感じさせるおかっぱ、決して不衛生ではないのに絶対に触れたくない婆。

老化のせいかと言うと実はそうではなくて若い頃から絶対に魅力的ではない、所謂ブス、醜女、ともかく同じクラスにいたら身体が触れた奴は菌扱いされるタイプの性別上女性。

縦に間延びした大きめの鼻の穴、右だけ二重の細目、色白が逆効果の水気も油気もない死体のような肌、白さの中に際立って生理的吐き気を催す滲みと多数のほくろ。

骸骨のような細く長い指が「あっ手綺麗ですね」などどお世辞を言えと言われりゃそれぐらいしか嘘でも言えないつまり部位。本体を直視するのが申し訳ないんだけど辛い、「黒子マン」。

女と呼びたくない、婆でも本質的に問題はそこじゃない、別に不衛生な訳でもないし一応笑顔で語りかけてくるから気を悪くするとしたら本人のせいでもない、いっそこちらの狭量を痛感し居た堪れなくなるから「黒子マン」


それがさっきから少し前に突き出した顔と言うか首全体を右15°くらい傾けて、正確に4秒間隔で右頬を釣り針で斜め上に引っ張られるように「ック」って痙攣する。チック。


俺は一生懸命作っているであろう笑顔で熱心に語ってくるその”全員が全員のために貢献しながら社会的成功をはじめ自己実現もできる嘘のようなアメーバ型グループ”の素晴らしさも全く頭に入らず、いつしか黒子マンのチック症のタイミングを頭の中でリズム刻みながらこの黒子マンはきっと明るくない学生時代を過ごしたであろうと考えていた。


菌扱いされた小学生、存在自体が空気化し唯一の知人(絶対に友達だとはお互いが認めなかった)とだけクラスの隅で過ごした中学生、その知人とも些細なことで喧嘩別れになり迎えた高校進学。地方出身の黒子マンはあえて皆の行かない遠くの高校を受験し、見事合格を勝ち取った。

この高校で私は変わる、そう決意も新たに迎えた入学式当日。普段し慣れない格好をし娘の目にも美しくない母と少し早めに向かい式を終えてクラスのオリエンテーションが終わり初日を終えた時、黒子マン以外の生徒たちは各々すでにグループを作り終えていたあとだった・・・


黒子マンが大学進学するか否かあたりで俺の空想の時間は終わり、俺の無反応にさすがの鉄のハートも砕けたのか自分で説明を終えて納得した風の黒子マンが荷物を持って会釈しつつ席を立った。

次は是非「支部長」とあって欲しい。ものすごいパワーで絶対に感動するから、、、


俺の空想はあくまで空想でしかないが、近からずとも遠からずと言ったところだろう。

しかしそんな黒子マンにも祝福されて生まれてきた赤ん坊の時代があり、よちよち歩いては両親親類縁者に喜ばれた時代があったであろう。

チックはいつからだろう。大人になってからだろうか。

症状があろうとなかろうと黒子マンの人生が大きく好転することはなかったろう。


ブスならいくらでも下には下がいる。

黒子マンより酷い醜女だっていくらでもいる。黒子マンは一応デブではない。

でも黒子マンに生まれ変わっても良いと神様に提案されても自分の生を捨てて転生する人はいるだろうか。

不治の病に犯されている者なら転生するだろうか。

それとも生まれつき手足がなく、後悔はしていないが一度でいいから思い切り駆け回ってみたいと願う健全な心を持つ障害者だろうか。


”全員が全員のために貢献しながら社会的成功をはじめ自己実現もできる嘘のようなアメーバ型グループ”と言うサイドビジネスグループは黒子マンの人生においてわずかでもプラスだったのだろうか。

いや俺は黒子マンが人生のどこかのタイミングで自主的にこのグループに参加したと思い込んでいるがもしかすると生まれながらにそういう家庭だったのかもしれない。そういえば起源はアメリカで去年だか一昨年だかに創立150年の大パーティーがあったからそれに呼べなかったのが本当に惜しいとかなんとか言っていた。

南北戦争の時代に果たして信州の霊水を譲り売りする習慣なんてあったのだろうか。


俺は煙草の吸える喫茶店を後にし近くのコンビニエンスストアに入りトリスのポケット瓶を買った。

2時間のお茶代がまさか割り勘だとは思わなかった。

東中野のマンションに着くまでの帰路、一駅ぶん余分に歩いた。途中でトリスを何口か吸った。

自宅の入り口でポケットの鍵を取り出すときに袖が引っかかりトリスが落ちて割れた。

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