4th
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「急いで起きて、稔くん!」
茜の声がする。
重たいまぶたを開けると、すぐ目の前に茜の顔があった。
「!?!?!?!?」
「早く起きて。昨日消滅したものがもらえなくなっちゃう!」
は?
昨日茜が敷いてくれた布団から無理やり出され、扉の外へ出る。
外は何故かまだ夜で、ネオン色の街の色は変わっていなかった。
曲がりくねった道を走る茜を見逃すまいと、必死で走る稔の上を、何か大きな黒い影が覆う。
後ろを向かないように注意しながら上を向くと、そこにはSFの世界にでてきそうなとてつもなく大きなドラゴンがいた。
しかも、1匹とかそういう話ではない。
空を覆い隠すほどの無数のドラゴンや空を飛ぶ幻獣、鳥などのありとあらゆる動物がいた。
「あ、茜さん……?」
冗談だとは思っていなかったが、本物のドラゴンを見てしまったショックは大きい。
「遅いよ稔くん!早く早く!」
白のワンピースはこの街によく栄える。
次の角のあたりで茜は稔を待っていた。
「なんでこんなに生き物が!?昨日は全然いなかったのに」
「だから、昨日消滅したものをもらうためだよ!」
ヨクイミガワカリマセン。
とりあえず茜とはぐれないようにし、着いたのは大きな広場。
中心には空へ届きそうなほど大きな木と、その木の枝についている家々、枝に止まる翼を持つ生き物たち。
広場内にはありとあらゆる種類の生き物がいて、何かを待っていた。
「えー、ごほん」
広場の木の根元で、人間のような姿をした少年が咳き込むと、辺りがシーンとなった。
「あれ誰なの?」
「消滅都市の守護神、消滅神ディース様だよ」
周りに合わせて小さな声で会話する。
その間にディースは演説を始めていた。
「さてみんな。この演説に間に合っていると言うことは、消滅したものを与えられる権利を得たことになる。もちろんみんなの知っての通り、遅れたものは」
ディースが指をパチンとならすと、広場の辺りに透明の壁のようなものができた。
よく見ると透明の壁の外にも生き物がいるらしい。
「消滅したものをもらうにはこの演説に間に合わなきゃいけないんだよ」
「間に合わないとどうなるの?」
「絶対後ろを向かなきゃでしょ?」
あ。
さらに良く見ると、広間に通じる道は5つしかなく、それぞれが離れているためどこかの道に入ってまっすぐ行くということができない。
「後ろ向きで歩けばいいんじゃないかな」
「残念、それができたら誰もこんな演説こないよ」
茜と稔の会話中にも演説は進んでいく。
「嗚呼、哀れな消滅生物たちよ。己の愚かさを感じながら」
ディースはそこで思いきり暗い声になり、もう1度指を鳴らす。
「消えろ」
すると透明の壁の外にいた生き物たちは一斉に後ろを向き、悲鳴とともに消えていった。
最後に残ったのは静寂。
「さて、この結界ももう必要ないね」
ディースが指を鳴らすと、透明の壁は粉々に砕け散り、消えた。
「さてさて、みなさんお待ちかねの昨日消滅したものtimeだよ♪好きなものを好きなだけ持ってってねー!」
消滅神・ディースはそう言って消えていった。
しばらくして空から何かが降ってきた。
「稔、いい?」
「何が!?」
茜が靴に触れると靴が光だした。
そして茜は……
「先行ってるよー!!」
「はあ!?」
空高く飛んでいった。
いや、マジで。
「俺、この都市でやってけるのかな……」
一抹の不安を感じながら、飛ぶ茜を下から見上げていた。