2nd
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「……くん、…のるくん、稔くん、起きて!」
稔はなんだか懐かしい声で目を覚ます。
自分を起こしたのは目の前にいる彼女らしい。
寝ぼけ眼ながらも彼女を見る。
白いワンピースを着た黒髪の美少女。
歳は……高校生くらいだろうか。
「君、どうしてこんなところに?」
「何寝ぼけてるの、稔くん!それはこっちのセリフだよ!?」
彼女とは初対面のはずで、名前を教えた覚えはない。
なのになぜ彼女は自分の名前を知っている?
稔は少しずつ覚めていく頭で考える。
まあ、もともと考えるのは少し苦手なのだが。
「はぁ、とりあえず送ってくよ。君、家はどこ?」
「寝ぼけるのもいい加減にして!」
彼女の瞳は真剣そのもので、嘘をついているようには見えない。
寝ぼけてる?自分が?
「確かに今起きたのは事実だけども……」
発言途中で、彼女は稔の頭を横に向かせる。
そこで稔は一気に目が覚める。
「なっ……なっ!?」
目の前に広がっているはずのすすき畑はどこにもなく、夜に輝くネオン街が目線いっぱいに広がっていた。
さびて使えるはずのない観覧車は何故か動いていて、見える景色をゆっくりと変えていく。
「ここは稔くんが来ていいところじゃない」
驚きが隠せない中、彼女に視線をやる。
「ここは……?そして君は……?」
彼女は目を驚いたように見開いたが、それは一瞬。
次の瞬間には呆れた顔に変わっていた。
「はああああああああああああ」
そして長い長いため息をついた。