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勇者系魔王の世界征服  作者: 二都遊々
二章中編 鉱山の町
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3章-2

「本当にこんなところに坑道なんてあるのか?」


 昼飯を食べ終えてシリンの案内で鉱山の入り口へと向かっているのだが、

 どう見ても人の多い街の中心へと向かっている。


「あたいの情報に間違いがなければこっちであってるよ。ほらついた」


 曲がり角を曲がると正面には白く大きな建造物に着いた。

 頂上には鐘とてっぺんに十字のマークがあり、

 敷地を囲う鉄製の塀はあれど門は誰を拒むわけではなく扉はついておらず、

 建物の入口にある大きな扉が両開きで開いていた。

 外から中の様子を伺うとまさしくこれぞ聖職者といった服装の男性が一人と女性が二人、

 賛同者と思われる老人が数名と孫と思われる子供が一人が今にも天に召されるかのように祈っていたり、

 その傍らでシスターに遊んでもらっている姿が見受けられる。


「教会か」

「ご名答。この建物の裏に坑道の入り口があるって話さ」


 早速敷地内に入ろうとすると拒絶され透明な壁がある、なんてことはなくすんなりと入ることが出来た。

 魔王すらも歓迎する教会なんてあっていいのだろうか、

 という気持ちを抱きつつも周りの人にバレないように教会の裏手の回る。

 裏手に着くと敷地内を示す囲いが山の傾斜にぶち当たるとなくなっており、

 その傾斜の建物から丁度真後ろ部分に鉱山内部へと続く坑道がポッカリと口を開けている。


「シリンの情報は凄いな、この中にいるのか?」

「あたいの情報に間違いがなければね」


 坑道を覗くと中は油で明かりを灯すカンテラが5メートル置きぐらいに吊るされている。


「本当にあってるっぽいな、スライムとゴーレムに連絡を取って一応向かってきてもらおう」


 シリンにそう伝え坑道の入り口でスライムに伝達の魔法で連絡を取る。

 戦闘になるかもしれないから一旦引き上げて教会に来るように伝えると、

 ゴーレムがきのこ4房手に入れたから褒めてくれとはしゃいでいた。

 仕方なく褒めてやったが当の本人が歓迎会のときに飲み食いした分を稼いだだけである。

 連絡を終え早速侵入しようと近づくと入り口には歩哨が居らずすんなりと入れ、

 床には掘った土砂がこぼれた跡がなく綺麗な岩肌が顔も見せている。

 1分ほど歩いたところで広い空間に出ると左手に大量の人が寝泊まりしている跡を発見する。


「凄い数の毛布だな」


 寝床と思われる区画は毛布六枚が一山として置かれ、その山が転々と100はある。

 その区画の反対側、つまり開けた空間に出て右側には小屋が建っていた。

 中からは明かりが漏れ人がいる気配がする。


「こっそり中を確認できるかシリン」

「あたいの十八番よ、任せて」


 シリンは足音を殺し小屋へと近づいていった。

 その歩く姿は様になっており抜き足差し足忍び足という言葉があるが、

 実際に目の当たりにするとなんともマヌケな歩法である。

 背伸びしたような格好で膝を曲げロデオに乗ってるかのような格好でスルスルと進んでいく。

 面白いのは格好だけで音は一切なく、

 普通に歩くかそれ以上の速度で小屋の入り口へと進んでいく。

 無事小屋の入り口までたどり着いたシリンは中をこっそりと伺ってゆっくりと戻ってきた。


「中はどうだった」

「シスターが一人事務仕事をしてたよ、それでどうするんだい」

「中に入り込む。なぁに、町を探索していて洞窟を見つけたから探索してたとか言えばいいさ」


 堂々と小屋に向けて歩く。

 足音など全く気にせず2段ほどある木製の階段を上り小屋の扉をノックして入った。


「すみませーん。ちょっと旅行ついでに探検してまして、ここはどういったところですか?」

「あぁ! 一般の方に入られては困ります」

「いや、そうは言ってももう仲間が先行して先に行ってしまいまして」

「では此方に連れ戻してきますので少々お待ちください」


 そう言ってお茶の一つも出さず奥に行かれると何か困ったことでもあるかのように、

 自分たちの事は放っておいて扉から出ていこうとするシスターだったが、


「シリン、捕まえてくれ」

「あいよ」


 シリンは素早く片手を掴み背に向けひねりあげた。


「ッうぅ~。痛いじゃないですか」

「すまないがこの先にいる半魔獣の人たちに用があってね、少し聞きたいことがある」


 シスターには悪いが拘束させてもらった。

 初め知らぬ存ぜぬの態度だったか周りの資料を読み漁り問い詰めると、

 坑道の奥で半魔獣を奴隷のように扱って魔石を掘っていることが分かった。

 残念なことに既に何人かは死んでしまっていたがまだ殆どの人が生き残っているらしい。

 シスターにどうしてこんな残忍なことが出来るのか問い詰めると我々人間より下等な生物を、

 聖職者である私達が半魔獣を正しく使ってやってるのだから当然であるという答えが返ってきた。

 自分も未だに女の子を沢山奴隷にして囲うという妄想は確かに何度もするが、

 現実の奴隷制度なんて実際に目の当たりすると虫唾が走る。


「この悪魔!」


 シリンがシスターの頬にビンタをした。

 乾いた空気が弾け小屋だけでなく窓から坑道内まで響く。

 一旦頬を叩いた右手はそのまま手の甲で再びシスターの頬に飛び込もうとしていた。


「やめるんだシリン」


 再び頬に近づくシリンの手を止める。


「確かに彼女の考え方は間違えていると思う。

 だけど、彼女を咎めれば全て解決するというわけじゃない。

 元はといえばこの制度を作り教育した国や教会が悪いのであって彼女も被害者なんだ。

 悔しいだろうがシスターをこれ以上責めるのは止めないか」


 掴んでいたシリンの手からは力が消えするりと自分の手から抜け落ちた。


「そういうわけでシスター、あんたを縛ってここに放置させてもらうが悪く思わないでくれ」


 そういってシスターを縛って人が来なければわからないように奥に移動させた。

 しかし、縛り方が甘かったようですぐにシリンに駄目出しを喰らい縛り直してもらう。

 縛り直している最中他になにか有力な資料を探していたが、

 静まり返っていた小屋だったせいかシリンがシスターに叩いてしまったことを自分にバレないように、

 こっそりと小さな声で謝っているのが聞こえた。

 聞こえてしまったことはシリンに言わず心のなかに留めておくとして、

 このような可愛いげのある女は元の世界であれば食事にでも誘って彼女にしたい女性筆頭である。

 勿論今回の事件が落ち着いたら声を掛けてあわよくば彼女にしようと思う。


 そんな雑念を抱いて資料漁りをしているとシリンから縛り終わったから先に進もうと催促され、

 小屋から出て坑道の奥へと向かっていった。

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