備忘録
備忘録
俺は魔王。
元の年齢は21歳ぐらい、肉体はほんの5分前に生まれたばかり。
今はスライムが入れてくれたコーヒーを飲んでいる。
ちなみにこれは3回目の復活。
なぜこんな事になってしまったか、
元魔王に召喚されるまで遡って紙に残しておこう。
とはいったもののこれといって書くことはなく寝て起きたら知らない天井に壁、
ベッド以外に唯一あったマトモな家具は机ぐらい。
それと机の上には手紙が一通あったぐらいだ。
内容は3行どころか1行で終わる簡素なもの。
『ニートしたいから代わって』
読み終わり頭に血が上った俺はどこかにこの怒りをぶつけてやろうかと思った。
他に何か無いか部屋を物色していたら、
「泥棒!」
と、カン高い女性らしい声が聞こえ体が急に痒くなり数秒後にはベッドに横たわっていた。
これが最初死んだ時のバージンボディ。
復活するとスライムが魔王はどこに行ったと脈絡のない事を聞くから、
置き手紙に書いていたことから察するに俺がいた世界に行ったのではないかと答える。
失望したのか呆れたのか、グミ状の前のほうがヘコんでいた。
どうやらスライムの感情表現は体の状態にも変化があるらしく興味が湧く。
スライムと話し合うと幾つか分かったことがある。
容姿は変わっているようだが復活をするという魔王不変の肉体特性は変わらず、
死ぬと3分で復活したらしい。
あと、やはり死ぬ時は一般人と変わらず痛みを受けるらしい。
1回目の死亡時、一瞬にして溶けたため痛みを感じずただ痒かった覚えがある。
というか一瞬にして溶ける消化液って金すら溶かす王水と比較にならないほど凄い。
暫く二人で話し合った。
二人じゃなく一人とスライム一匹か。
いや、そんなことはどうでもいい。
スライムと話し合うと俺は何をしたらいいのか大凡分かった。
それはこの世界を手段を問わず全て自分のものにすることらしい。
魔王としてありきたりな目標に既視感を覚える。
それはそうとスライムに対してどんな特徴があるのか気になった。
スライムといえば異世界においての超が付くほどの定番モンスター。
俺はスライムに対し触ってみていいか尋ねてみた。
すると一応現魔王ということで以前の魔王配下であるスライムは、
引き続き俺に忠誠を誓ってくれることになった。
なので遠慮無く体を触らせてもらう。
まずはやんわり触れてみた。
粘力というか粘っこさは意外と少なく、ほんのり温かい。
自分の体温より少し高め。
次は横から少し押してみた。
人の筋肉より柔らかくコーヒーゼリーよりは少し堅い。
強く押し込むと指が包まれるようにめり込んでいく。
手首まで入った手は水中に包まれるような安心感を感じ、
全身を包まれると更に気持ちよさそうな気がした。
方向を変え上から押さえつけるように指を押し込む。
湿っぽい粘液を感じて抵抗なくズブズブと吸い込まれていく。
気が付くとベッドに寝ていた。
どうやら2回目の冒険はそこまでだったらしい。
スライムにどうなったか聞いても答えてくれない。
終わり