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沈黙?の巫女

作者: くまこ

親しらずを抜いて痛かったので書こうと思っただけです。

こちらの世界に来て早3年私は「沈黙の巫女」として崇められている…


こんにちは私の名前は山寺凛。一ヶ月前に20歳になりました。3年前17歳誕生日目前いきなり召喚されました。私はラノベが好きだから召喚ものには憧れてましたよ。まぁ自分が実際なるとは夢にも思いませんでしたが。召喚ものの王道ストーリーといったら召喚された世界で巫女となったり、勇者になって魔王を倒したり、花嫁になったりとにかく何か特別な存在になりますよね…かくいう私も一応巫女となった訳何ですが召喚された時のこちらの事情により王道ストーリーとはずれた対応を受けてます。あんな状態で召喚されてなければ…自分の望み通りの展開になっていたんだけどなぁ…脱力…

☆☆☆

召喚されるまえは地球という惑星の日本という国の女子高生でした。当時歯の矯正をしておりそのためか親知らずを早く抜くようにいわれ高2の夏休みに抜きました。幸い1つだけだったのですが麻酔が歯茎に直接注射!!ちょー痛いんです。抜くときハンマーでごんごん親知らずを叩かれうすら寒い経験をいたしました。軽く夏のホラーですね。抜かれた後は麻酔が効いて口がしびれまくりなにも感じなかったのですが1時間たてば麻酔効果が切れるといわれダッシュで薬をもらいに近く薬局に行ったのですが不幸にもその日は休日で最初薬局は休み二つ目は午後から休みだったので午後から歯医者に行った私は当然間に合いませんでした。がっくり…処方箋の紙をみたら薬が5日分だされてました。ということはしばらく痛みと戦うことになるのでしょう。そんな気落ち気分で家路につき自分の部屋ドアを開けると光が渦巻いており私を包み込んでしまい「いざ異世界へレッツゴー」というわけで召喚されました。もちろん意識失いましたよ…

☆☆☆

ドンっと音がして突然背中に激しい痛みが走り、目を開けました。飛び込んできたものは大きな玉座に座る中年の方1名(多分ここの王様?)その人の腕に縋りつくようにして瞠目している若い女性1名(愛人?)

その隣に立つ荘厳な雰囲気を感じるご婦人1名(多分王妃?)その隣にいる白髪の眼鏡をかけたおじさん、というかおじいさん?っぽい年齢が王様より若干上っぽい人1名(ポジション不明)。そして私に手を差し伸べてくれている金髪碧眼の容姿端麗なこの青年が王子なのだろう。あと私に杖を向けている少年もいる。魔法使いなのか?少年が呪文のようななにかを唱えると向けられた杖から青い光がうまれ私を包み込むすると背中や全身の痛みがすぅーっとひいていった。回復魔法だろう。すると今度は口が正確には親知らずを抜いたところがズキズキと痛み出す。思わず両手で頬を抑えたがその行為が不安がっていると思われたのだろう。

「大丈夫かい?きみ」

王子に話しかけられいきなりの召喚、見知らぬ人に囲まれ、歯茎が痛み出した少しも大丈夫ではない私は否定しようと口を開きかけたが麻酔がきれたのか口を開けようとすると痛みがひどくなったので話すことをあきらめ頭を振った。

「きみ、もしかして話せないのかい?」

と聞かれたのでしばらく話さないでおこうとおもったわたしはYESと頷いた。

するとまわりがざわざわ騒ぎ出す。なんだ???

「これは素晴らしい。」「希少な巫女が召喚されたぞ」「このような場にたちあわせてもらい感激だ」

という賛美の声があちらこちらから聞こえる。ん?巫女?その時私の頭に衝撃が走った。自分大丈夫なんじゃないか!!?夢にまでみた異世界(ここが異世界かどうかはわからないが)トリップが現実に起きているではないか!巫女というからには多分勇者になって悪者、例えば魔王などを倒す危険なことはしなくてすむ。まぁ、神にひたすら祈り続けるか、誰かの花嫁になるのが召喚ものの決まり、定め、義務、決定事項だよね。と安心していたら

「君は『沈黙の巫女』として召喚されたんだね。よく来てくれたこのグレイオン王国に。今日は晩餐だ。おい、サムスタン、この方を巫女の間へお通ししろ。それから詳しい説明を頼む。あっ、きみには僕の言葉が通じるのかな?文献通りなら通じるはずなんだが…」

と王子最後にきかれたのでうなずく。

「それはよかった。君にはこれから3年間ここで暮らしそのあとは魔界へ行ってもらうことになる。あ、そうそう僕の名前はクリスアルファこの国の第一王子だ。これからよろしく。」

といわれ手を差し出されたのでこちらも手を差し出し握手を交わした。

ってちょっと待って。『まかい』っていわれたけどあのマカイじゃないわよね…

☆☆☆

「さぁさ巫女姫さまどうぞこちらへ。」

とサムスタン(あの白髪のひと)に巫女の部屋に案内された。通された部屋は白で統一された壁にところどころ黒のラインがはいった。[THE巫女部屋」ではなさそうなところだった。

その部屋の白いソファーへ促されサムスタンと対峙してすわる。

「えー本日は我がグレイオン王国に巫女としてお越しいただき誠にありがとうございます。私はサムスタンと申すものでこの国の宰相をしております。えー我が国では100年に一度異世界から人間の若い女性を召喚いたしまして国王、または王子の花嫁として迎えさせていただきます。」

やっぱりここは異世界で私は王子(国王は既婚者)と結婚することになるんだ!!いぇーい!あんなイケメンと結婚できるなんてラッキー!あ、人生の運全部使い果たしちゃったかも…   

「えー、しかし今回の巫女姫さまは『沈黙の巫女』でございます。よってあなたは王子の花嫁ではございません。ですか…」バンッ!!

えっ?花嫁ではない!?ではいったい誰の!?いやそもそも『沈黙の巫女』ってなんなんですか?

サムスタンの発言に大いに落ち込み不安になりわたしは諸々の疑問をぶつけるため勢いよくソファの前にある、これまた白いテーブルを勢いよく叩き付けた。私の必死の形相を見たサムスタンの頭には?マークが浮かぶ。私は必死に伝えたいことがあるとジェスチャーし、それを理解したサムスタンは紙とペンを持ってきて私に手渡した。しかし私は話せても文字をかけない。そのことに気付いたサムスタンはベルを鳴らし私に回復魔法をかけた少年を呼び出した。そしてその少年になにやら魔法をかけられると、不思議、不思議、こちらの言語をするりとかけるようになった。魔法ってやはり便利ね…

そして紙に抱いていたさっきの疑問を書いた。

「まぁ、そう焦らずに。これから詳しく説明しますから。」といわれおとなしく説明を聞くことにした。

サムスタンがいうにはこの世界は魔法が源となってできており。その魔法は強力で世界の均衡を保つには異世界からやってきた巫女の力が必要なんだとか。そして100年に一度その巫女が人間の国で一番強い国で召喚されることがしきたりだそうだ。この世界は人間国、獣人国、精霊国、魚人国、魔国という5つの国で成り立っており、それぞれ領土が決められており他の国への侵略は世界を敵にまわしたとみなされその国の生き物は滅亡するという、約束が決められている。ちなみに国の中での領土争いは問題ないらしい。

そして召喚された巫女が召喚された国の王もしくは王子と婚姻を結ぶことで世界の魔力の均衡は保たれるらしい。なぜそうなるのかは誰にもわからないとか。んで、今回召喚された私なんだけど話せないで黙っていたら『沈黙の巫女』として認知されてしまった。沈黙の巫女とは文字通り話すことができない巫女のことで普通の巫女に比べ力が強いらしい。そしてめったに召喚されないとか。以前に沈黙の巫女が現れたという記録はなく仮定でもし現れたら、という文献があるらしい。それによると沈黙の巫女となったものは3年間王宮で暮らし。日々神へ祈りを捧げ続け、3年経つと魔界つまり魔国に連れていかれることになるらしい。その後は知らん、そうだ。

困ったひじょーに困った、だって魔界に行ってもハッピーエンドになるかわからないし。それなら人間の国いたいけど3年たてば必ず魔界にいかなければ恐ろしい災いが世界にふりかかるらしい。じゃ、魔界に行くしかないじゃん。あーもしこの時期に親知らずを抜いてなければ、ていうか薬局が開いてることを確認していればこんな、こんな沈黙の巫女にならずに普通に王子と結婚できてたかもしれないのに。つくづく運がない私であった。

☆☆☆

まぁ早いもので3年あっという間に過ぎました。いまだに沈黙守り続けております。(一部の人をのぞいて)

その間私の意思疎通は筆談です。ほんとにこの国に筆記能力の魔法があってよかった。

召喚されて1週間私は苦しみつづけた。歯茎の痛みと。初日の晩餐では食べ物を口にいれた途端痛くて顔をしかめてしまい、

「お口に合いませんでしたか」

とこの国一番のコックにいわれ、たいそう失礼なことしてしまった。お風呂では侍女の方々にお風呂にいれられ気付いたときにはすでに遅し、血圧が上がりまくり口から血が垂れるというおぞましいことになった。侍女の一人は私をみて気を失い倒れました。 本当にごめんなさい…

夜のベッドでは歯の痛みと戦い続け「ゔー、ゔー」とうなり続けました。幸い一人だったので誰にもそんな怖い声を聞かせずにすみました。ッホ。

1週間たったら歯茎の痛みは嘘のように消えそれまで痛くて食べれなかった分料理をがっつくようにして食べたら

「いやーさすが巫女姫様従来のお方たちとは違いよくたべなさる。沈黙の巫女には多くのエネルギーが必要ですからね。」

といわれもともと少食でない私はその解釈をいいことに料理を存分に味わった。

それから2週間たつともともと話せる私は我慢できなくなりぶつぶつ一人巫女の間でこれからについての不安を言っていたら運悪く侍女の一人に見つかり、サムスタンに話せることがバレル。これを機会に本当は話せることをあかし、皆にも知ってもらおうとするとサムスタンはすごく切羽詰まった形相で

「なりません。巫女姫が実は話せることがわかると非常に危険です」

「へっ?なにが?」

「この2週間沈黙の巫女ためにわれわれ多くの準備をしてきました。魔国の方にもすで伝えてしまいました。今更沈黙の巫女でないとわかると魔国に我々人間国が嘘をついたことになり、我々が魔国に喧嘩を売っていると思われ大きな戦争になってしまいます。」

「そ、それは大変そうですね。ではどうしたらよいのでしょうか。」

「なぁに簡単なことです。あなたはこのまま沈黙の巫女として3年間演じつづけなさいませ。3年たったらあなたは魔国へ行きます。そこで魔王に自分は沈黙の巫女ではなくなった、言えばよいのです。そうすればあちらがどうにかしてくれるでしょう。」

してくれるでしょう、っておい、そのあと私はどうなるのでしょうか。嘘つきとして処罰される…!?

まさかの余命宣告受けてしまった。きゃーあと3年が私の余命!?ぜーったいヤダ!!なんとか、なんとかしないと…

わたしは非常に不安になり恐怖に陥った。お先真っ暗ですね。

「ど、どうにかって具体的どうなるんどしょうか。」

「さぁ、それは私にもわかりません。そんなひどい対応は受けないと思いますが。」

「でっでも沈黙の巫女は嘘でした。って謝るんですよね。だましてたんですよ。大激怒ではありませんか!?」

「勘違いされているようですね。」

「勘違い?」

「はい、私は沈黙の巫女では『なくなった』といっただけで沈黙の巫女では『ない』といったのではございません。」

「いやーでも、そんな屁理屈通るんでしょうか。それに巫女の力を失った人はこれまでにいるんですか?」

「大丈夫です魔国の方々は話の分かる方々ですから。」

そーいう問題ではないと思うんですが…

「巫女の力を失ったと人は存じませんね。」

「やっぱり、でも巫女の力がなくなったことを示す方法はあるんですか?」

「一番わかりやすいのは巫女がいるにも関わらず世界の魔力の均衡が崩れることですね。沈黙の巫女の力がどういう力なのかは誰にもわかっておりませんから問題ございません。それにあなたは沈黙の巫女ではございませんでしたが、異世界から召喚された以上巫女であることは間違いありません。魔力の均衡は保たれます。」

「あの、もしもなんですが、私が元の世界に戻ることは可能なんでしょうか?」

「もしかしなくても不可能です。こちらには召喚方法しかわかりません還元方法は世界のあらゆる文献をさがしても見つからないでしょう。」

「あ、そうなんですか。」

うそー覚悟はしてたけどこれからこっちの世界で生きていくしかないのね…。

「たとえあなたが、まぁありえませんが、100%無理だと思いますが、」

「なんですか!!?」

無理無理いわれるとイラッとします。

「いえ、もしあなたが元の世界に戻れたとしてもこちらの世界時点で元の世界でのあなたの存在は末梢されています。つまりあなたはもとからいない人になっているのです。あなたはないものとしてあつかわれるのでむこうの人にはあなたが見えません。所謂透明人間状態ですね。そんな世界で生きていくのはさぞ大変だとおもいますね。」

「どうしてそんなことがわかるんですか。誰も元の世界に戻ったことがないんでしょう?」

「召喚にまつわる本に補足として記されていたんです。」

補足かい!結構重要なことだよ!見落としてしまったらどうするんでしょう。

「でも絶対にそうなるとは限りませんよね。」

最後の悪あがきをしてみる。

「まぁそうでしょうね。しかしながら仮に元の世界に戻れて今いったような場合あなたはどうするんですか。元の世界とこっちの世界どちらが住みやすいと思いなさいます?」

「そりゃあこっちの世界でしょ。誰でもそう思うよ。」

「でしょうね。しかし元の世界に戻ったあとあなたは再びこちらの世界にくることが可能でしょうか?」

「えっ無理なの?巫女パワーは使えないの?」

「あくまでも巫女の力が発揮されるのはこちらの世界においてのみです。こちらの世界を出た瞬間あなたはただの人となり。巫女の力は失われます。」

「…」

「わかっていただけましたか。あなたはこれから3年間この国で巫女として神に祈りを捧ぎ続けその後魔国へ行き沈黙の巫女ではなくなった魔王にいってどうにかして暮らしてください。」

「どうにかって結構投げやりですね。」

「あなたは沈黙の巫女ではなくとも巫女ですからその存在は重宝され、生きていけるよう取り計らってもらえると思います。この件は私とあなたの侍女たちと私だけの秘密になさいませ。無駄な混乱は私も避けたいのです。これからがんばってください。」

「はぁ、わかりました。」

…っとまぁいろいろありましたが無事他の人にはばれずに3年間過ごしました。

私は沈黙の巫女という特別巫女だったので(演技ですが)、豪華なおもてなしを受け不自由ない暮らしを満喫いたしました。まぁ毎日一時間神殿にいって神に祈り続ける行為は辛かったです。この祈りは普通の巫女の方々も3年間行い、神に認めてもらい、無事花嫁になるそうです。で私は魔界に追放…比べてしまってさらに虚しい今日この頃です。

っで!!!

明日はとうとう私の運命が決まる日、人間国のグレイオン王国とさよならして魔国へむかいます。私の正念場ですね。なんとかやり過ごしたいです。はぁー不安しかない。

今更なんだけど筆記能力の魔法をかけてもらった時についでに歯茎痛みを解消する魔法を魔法使いの少年ウェスター(いまでは友達です)にかけてもらえば王子と結婚できたのでは!?と思います。あの時はそんなこと考える余裕が、…あったなぁー、つくづく運のない私です。

☆☆☆

魔界(魔国)へは迎えの竜がやってきてその竜に乗ったら人間国とはさよなら~です。

前日にはお別れパーティーを開いてもらいました。うれしかった。

私はお見送りの方々に手を振って別れた。王子は笑顔で、王と愛人は真顔で、(結構こわいな)、ウェスターは泣きながら、そしてサムスタンは、笑顔だけどなぜかつきものが吹っ切れたような笑顔、重荷をおろせたような吹っ切れた感がただよう笑顔。涙は一応流しているみたいだがその真意は…あまり深く考えないでおこう。うん、自分のために。

そしてゆらゆら竜に揺られること3時間あたりが暗くなるのかとおもいきや人間界と同じ太陽サンサンな場所のとある大きな城の前に竜は到着した。普通に人間国じゃないの!?と思っていたら荘厳な感じの大きくて重そうな扉があいた。中から現れたのは1人の小柄な少女。嘘でしょ!?あなた一人でこの扉を?とおもたっがその少女をよく見るとみかけは人間そっくりだが頭にちいさな羊のような渦巻き状の角があったので魔族なら力も強そうなので納得した。サムスタンに聞いたが魔族はさまざまな点においてどの種族よりも優れているらしい。そんな国の王様にこれから会うのだから私が緊張でガクガクブルブル状態だ。

「サキューム王国へようこそおいでくださいました。沈黙の巫女姫様。私の名はアムリ、これから沈黙の巫女姫様の侍女を仰せつかった者でございます。これから魔王様の所へご案内いたします。」

私の侍女ということはこれからこの城ですむのでしょうか?

私はサムスタンに魔王に会うまで演技を続けろと言われていたので、アムリの言葉にうなずき後ろへつづいた。

魔王の城は高さが半端ではない。魔王は最上級にいるらしい。登りおりが大変ではないないのかとおもっていたら、アムリが城の案内をしている中で

「城の中には階段がありますが高いところに行くものは階段ではなく魔法を使います。なお高所へ行くための魔法は高いところ低いところ関わらず膨大な魔力を使うため少し上がるときには皆階段を使用します。」

な、なるほど~魔法ってやっぱり便利なのね。

以前サムスタンに私は魔法が使えるのかどうか聞いてみた、

「残念ながら、使えません。魔力は魔国のものが使用するためのものと言っても過言ではないくらい魔国以外の者には縁がありません。まぁ全くいないというわけではないんですが。ウェスターのように魔法を使えるものは人間国にもその他の国にも手で数えられる限りしかおりません。現にウェスターは少年でありながら魔法を使えるため王宮魔法使いとして大切に保護され、魔法が悪用されないように守られております。

巫女の力は世界の魔力の均衡を保つ力のみだと言われております。ですが沈黙の巫女は違う力を秘めていると聞いたことがありますが。どのような力かは存じません。」

だそうなのでもしかしたら私も魔法が使えたりするのかもしれない。

そうこうするうちに大きな円柱の場所に通された。上を見ると、空はみえなかった。屋根があるのだろう。円柱の中は筒抜けでその空間を囲むように扉がところどころにある。

「ここは高所魔法を使う場です。各階のすぐそばに扉があるのです。沈黙の巫女姫様にはこれから魔王様にあってもらうため最上界階までいってもらいます。わたしの腕につかまって下さい。決して離さないように。」

アムリに言われたとおり腕につかまる。すると体がふわっと軽くなりみるみるうちに上昇してあっという間に最上階についた。目の前の扉は黒一色。ドアノブが金という。いかにも魔王の部屋へと続く扉っぽい。

アムリが扉を開けた。

中には眉目秀麗秀麗なこの世ものとは思えない(実際この世ではないよね)ほどの美貌を誇る銀の長髪の男性がいた。彼にもしっかり角はあるがとても大きい。多分この人物が魔王なんだろう。

その人物が口を開いた。

「我が城へよくぞ参られた沈黙の巫女よ。歓迎するぞ。」

よかった。一応歓迎はされているらしい。もう話してもいいのかな。

わたしが口を開きかけた時魔王がいった。

「吾がこれからそなたの呪いを解こう。アムリ沈黙の巫女を『闇の間』へ連れてきてくれ。」

「御意」

私はアムリに連れられ奥の部屋に通された。

っていうか呪いって!?私呪いかけられているんですか!?初耳です!

今話しかけたら混乱するだろうと思い結局黙って「闇の間」へついていった。

「真ん中に立ってくれ。アムリ、君は外で待っていてくれ。」

言われたとおり真ん中にたつ。

「これから君にかかっている呪いを解く。力をぬいて穏やかな状態でいてくれよ。」

穏やになんていられるわけがないが呪いを解いてもらうにはしょうがない。頭のなかで実家でかっている愛犬と遊んでるシーンを想像した。

魔王が私に手を向け何か呪文を唱える。あれ?そういえば高所魔法の時アムリは何も呪文なんて唱えてなかったような。使用する魔法によって違うのだろうか。

そうこうするうちに私の足元に魔法陣が現れ溢れた光が私を包み込む。

なにこれ不思議。体中をミントがすーっと通り抜るような不思議な感覚にとらわれた。これが浄化なのかしら。

しばらくすると光が消える。

「よし。無事呪いを解くことができたな。さぁ沈黙の巫女しゃべってみろ。もう沈黙とは言わせないぞ。」

?もとから沈黙ではないのだから当然話せる。

「ま、魔王様この度は呪いを解いていただきありがとうございます。」

「よいよい。そなたを我が妃に迎えることに比べたら安い対価だである。」

はっ?妃?聞いてないよ?

「あのぅ、それはどういったことですか?」

「うむ。そなたは話すことが出来ない呪いにかけられておったのだ。」

いや、だから、最初からはなせますって。

「魔国に古くから伝わる文献にな、今年召喚される巫女は話すことが出来ない呪いがかけられている『沈黙の巫女』であるという記述があってな。代々一族から伝わる伝言だったのだ。そして、その代の魔王であるものはその呪いを解いてその巫女を嫁にできる。と書いてあった。だから、そなたには吾の妻になってもらう。」

「え”~~!!嘘でしょ!?」

「嘘ではない」

「で、でも嫁にできるでしょ、しなければならない、ってわけではないですよね。」

「まぁ、そうだが、吾はそなたを嫁にすると決めた。これは決定事項だ。」

「ぎょえ~!!」

「もしそなたが吾の妻にならないというなら。」

「言うなら?」

「人間国が魔界に喧嘩を売ったとして人間国を攻める。」

「ま、マジですか!?でもそんなことをしたら世界を敵にまわすのでは?」

「あーその約束ごとか。それは魔国以外の国のみ適用される。我が国は魔法を操る国だ。この世界において魔法に勝るものはない。実質我が国が一番強い。我が国が世界を敵にまわしたとしても他の国はすぐさま降参するだろう。誰も勝てる望みのない戦いをしたくはないからな。」

「そ、そんな…。でもどうして沈黙の巫女は魔国に連れていかれなければならなかったのですか?」

「それは、呪いを解くという高度な魔法は魔国の魔王にしかできないからだ。」

「はぁ、そうですか。ところで先ほどアムリが高所魔法を使っていたときは呪文を唱えてなかったと思うんですが、それには違いが?」

「魔国にいるものはたいていの魔法は呪文なしで起動させることができる。そのため短時間で魔法を起動されることが可能なのだ。まぁ他の国のものは呪文をとなえなければ無理だ。だから他の国に魔法使いがいても呪文を唱えている場合にやられてしまう。その点も魔国が強い理由の一つだ。しかし呪いを解く魔法は非常に高度なため呪文をようした。」

「ふ~ん。そうだったんだ。納得です。あ、あの私って魔法使えるようになりますか?沈黙の巫女は大きな力を秘めてるって言われたんですけど。」

「無理だな。その秘めたる力とは呪いのことだ。」

「ふぇっ!?の呪いですか?」

「そうだ。だから呪いが解けた今そなたはただの巫女であるのだよ。だから大人しく我が妃になりなさい。」

「は、はい!」

圧倒的な威圧感に気圧され承諾してしまった。

「あ、でも私魔法使えないからこの城でどう生活したらいいか…」

「心配無用だ。そなたの部屋は我が部屋のとなりだ。食堂や風呂ど生活に必要なところはこのした2,3階に全て揃っておる。もし、それでもおりたいときは吾の腕につかまれば一発でおりられるぞ」

「そ、そうですね。私の名前は山寺凛と申します。あ、あのこれからよろしくお願いいたします。魔王様。」

ぺこりと頭を下げる。

「うむ。吾の名はピューレ・ルインバ・サキュームだ。よろしくな、リン。」

☆☆☆

こうして無事ハッピーエンドな展開を迎えたわけだがツッコミどころはたくさんある。が、まぁ幸せならいいか。ちなみに私は非常に気になっている点を魔王に聞いた。

「あのう、ピューレ、私の呪いを解いてくれたわけだけどもし呪いがかかってない人にあの魔法が使われたらどうなるの?」

「別に問題はないぞ、呪いを解く魔法は回復魔法と浄化魔法をもとにしているから、体が楽になるだけだ。」

「そうなんだ。」ッホ。

「それに吾はそなたが沈黙の魔法にかかっていないことも知っておったぞ。」

「!?な、なんで」

「沈黙の巫女の呪いを解けというのが先祖代々続く遺言みたいなものなんだが、吾のとしだから気になって文献を読み直したところ。沈黙の巫女は話すことを周りに許されていない巫女である。と書かれていた。話したいのに離せない状況がストレスとなって巫女に呪いをかけているそうだ。ちなみに人間が必要以上におびえていたのは我々一族が沈黙の巫女を人間にとられぬよう脅しておいたからだ。」

脅して、ってなんて物騒なんだよ。

「じゃあ、あの、呪いを解く魔法って。」

「うむ、ストレス解消魔法だぞ。」

「え、じゃあ自分のストレスで呪いが…ストレス解消魔法って呪文がいるほど高度な魔法のなの?」

「そんなわけなかろうあれは初級の初級、基礎の基礎だ。しかしあの魔法が使えないとストレスになるからこの国のものはストレス解消魔法を早い段階で習得するな。だから人間のように運動したり趣味を楽しむといったストレス解消は不必要だ。魔法で一発だからな。」

「でも呪文唱えていたでしょ?」

「あれは雰囲気づくりだ。」

「あ、そうなんですね。」

雰囲気って、まぁ過ぎたことはいっか一回一回ツッコミいれてたら疲れます。

まぁ確かに魔王は話の分かる人で良かった。でないと今頃どうなっていることやら。

なんか言いくるめられた感がハンパないけど、幸せが一番さ☆    END

読んでくださりありがとうございます。

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