机にある文字
「あなたの死を望みます」
決まって机に書かれるその文字は、あまり気分のいいものじゃない。
ごしごしと、消しゴムで消しながら思う。
シャーペンで書かれていたらしいその文字はあっさりと消えた。
一体、誰がこの文字を書いているのだろうか。
ひとつ言っておこう。
これは、いじめではない。
そんな根性の入ったネチっこくて、地味な嫌がらせは「いじめ」じゃない。
というよりも。この中学校ではいじめ自体が存在しない。
それは何も生徒が聖人君主のように良い子ばかりだから。
ーーーというわけではなく、先生方がヤバイのだ。
イジメのイの字を発見しようものなら、すぐに被害者加害者を特定し、叩き潰す。
つい三日前の事。
男子生徒同士でふざけ合い、ひとりをドアの外に出し、中に入れろと必死な姿を見て、何が楽しいのかゲラゲラ笑っていた。
周りにはたくさん生徒が居たが、その様子は黙認されていた。
その中に帰り支度をしていた私も含まれる。
だって、ねぇ?
そこにやってきたのは担任教師。
その現場を目撃すると、その場にいた全員を回収していった。
あーあ。捕まっちゃった。
そのあとはお決まりのクラスでのお話会である。
ノーイジメ、ナットイジメ。
耳にタコができる程、聞き飽きたフレーズ。
はぁ。
クラスメイト全員のため息が聞こえてきそうだ。
イジメについて語る先生を見ながら、私は今にも口から出そうなこの言葉を飲み込んでいた。
いやーーーーー先生。
ふたりは男子生徒同士は親友で、対等な友人関係。その事は皆が知っているし、ふたりは間違っても上下関係がある関係じゃない。
むしろ野球部のバッテリーを組んでいる間柄だ。二人にしか分からない秘密だって共有している事だろう。エロ本を貸借している姿も見た事ある。もう親友だよね?
それにもかかわらず、たった一回、それらしく見える行為だけでこんな風に騒ぎ立てる先生。
その姿は、ある種の脅迫概念に迫られているかのようだ。
ーーーーー最近のマスコミはイジメに対してキビシイからね。
そういう事なんだろう。
そんな学校で、机に「あなたの死を望みます」なんて書かれていると言った日にはどうなる事か。
すぐさま大規模な捜索が行われ、犯人特定。
犯人はすぐさま晒し者にされるだろう。ただ私の机に落書きをしただけなのに。
友達にも相談しようと思ったが、友達は過激だ。
その事を知れば「あなたの死を望みます?はぁ?じゃあ、お前の死を望んでやるよ」と殴る蹴るの暴行を加えるであろう。女子怖い。
被害は落書きだけなのに、あまりにも罰が重すぎる・・・・・。
という訳で。
周りには相談するわけにもいかずーーーーーというより。
出来ない。
ーーーーどうしよう?