トンデモパティシェ
日曜は「ふりー」は定休日。本来なら部屋でごろごろしたいところだが、先日の衣奈の件で部屋でごろごろしてたら、またデートに誘われてしまう。片っ端から友人に連絡をかけ、元「ふりー」パティシェと別の喫茶店で会うことになった。
「よう、洵。いつ以来だ?」
「おう、本当にいつ以来だ? 何も言わずに辞めあがって」
こいつは新楽月、「ふりー」勤務時から自由気まますぎる。レシピを勝手に変更して、イヴさんに相談なしで客に提供するし、看板も勝手に変えてしまう。しかし、どういうわけか、客からの評判は上がるわ、売り上げは伸びるわ、イヴさんからまともなお咎めを喰らった試しがない。
「まあ、それは修行していたということで。パティシェと和菓子職人の」
「知らない肩書があるが?」
「実家は和菓子屋だ」
澄ました顔して明後日の方向見ているのが無性にイラッとする。
「で、結局のところ、何やっていた」
「無人島でのサバイバル兼菓子修行」
手に取ったはずのコップを落としてしまった。菓子修行しながらサバイバルって・・・、何考えているのだろう。
「収穫はあったのか?」
「ああ、その島で発見した新種の果実使ったケーキを店で出そうと思っている」
・・・、ごめん。それ店に出すんじゃなくて、大学とかに知らせたほうがいいと思う。
「ほかにも、いろいろあったんだぜ。ツチノコみたいな蛇に、人ぐらいのトカゲ、終いにはネッシーみたいな首長い奴が海にうようよと」
それ、どこの島だよ!? 絶対秘境だよ、そこ! てか、よく生きていたな!
「それで、そのケーキはどこに出す」
「ああ、「ふりー」で」
「ああ、そ......」
今何て言った?「ふりー」で!?
「聞いてないぞ、そんなこと!」
「そうか? イヴさんには今朝連絡したけど?」
すまん、今日イヴさんに会ってないんだ......。
「洵と衣奈ちゃんの進展具合、楽しみだな~」
がっかりするなよ?