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ブレンド
俺は「ふりー」でバリスタをしている來野洵だ。ここに来る前はイタリアで単身修行に励んでいたが、姉に騙され帰国、そのままここで働くことになった。とはいえ、客にコーヒーを淹れることは変わりない。
「あれ~? この店、ブレンド無いんですか?」
「いえ、そういうわけではないんです」
この手の質問はよくあるのだが、俺がここで働くにあたり、店頭に出すのはストレートのみで、できればそのなかから購入することを勧めているのだが、ある程度好みの銘柄やイメージなど条件を貰えれば、それに近い味わいのブレンドを作ることも出来るので、実際裏メニュー扱いになっている。ただ、味わいのバランスなども考え、注文を受けてから逐一作るので、ブレンドの当日受渡締切は閉店2時間前、それを過ぎれば、翌日以降のお渡しになる旨を伝えた。
「そうなんですかー。じゃあ、とっても苦いブルーマウンテンのブレンドで」
......、言葉を失うほか、対応する術がないものだろうか?